[ゆけむり通信Vol.26]

6/11/1997
『バミューダ・アヴェニュー・トライアングル BERMUDA AVENUE TRIANGLE』


老いてなお現役

 まさか、この人を生で観ることが出来るとは。
 ナネット・ファブレイ Nanette Fabray。
 MGM映画『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』でブロードウェイ作家夫妻の妻リリー・マートンを演じた人。40年代、ブロードウェイのミュージカルに主役クラスで出ていたことも、文献で知ってはいた。
 その人が、まだ現役だったとは!

 『バミューダ・アヴェニュー・トライアングル』は、老いらくの恋の三角関係とでもいったストーリーの、ほろにがロマンティック(?)・コメディ。
 恋した年寄りの過激さが、スカッとするほど気持ちいい。

 友人である2人の未亡人テス(ナネット・ファブレイ)とファニー(レネ・テイラー Renee Taylor)は、それぞれの娘が共同で買ってくれたラスヴェガスの豪華なコンドミニアムで一緒に暮らすことになる。が、2人とも娘の家庭から体よく追い払われたという気分をぬぐえず、素直に喜べない。
 厳格なカソリックとして育ったやせぎすのテスはいらだって頑なになり、豊満なファニーはだらしなくメソメソと泣いてばかりいた。
 そこに転がり込むのが怪しげなイタリア男ジョニー(ジョー・ボローニャ Joe Bologna)。行き倒れていたのを2人が拾ってくるのだが、着ている物は悪くない。
 危ないから警察に届けようと話し合ったテスとファニーだが、まずファニーが、そしてテスが言葉巧みにジョニーに口説かれ、ベッドインしてしまう。
 その翌日、色鮮やかな衣装、キリッとしたメイク、派手なカツラで若々しく変身したテスとファニーが、それぞれの思惑を秘めて、悩ましげな視線をジョニーに送っていた。

 で、この後ジョニーのジゴロ的振る舞いがあり、予想通りだと思っていると最後にちょっと意外な展開があって、しみじみと幕を閉じる。

 第1幕では娘たちに反発するテスたちの寂しさを押し隠した辛辣さを、対照的に第2幕では大変身した2人の生命力あふれるしたたかさを描いて、構造は明快。
 中で、第1幕終盤、2幕の間をつなぐ形になるジョニーの口説きのシーンが最大の山場だと思うのだが、すっかり希望を見失っていた2人の年老いた女性が抵抗を示しながらも易々と(あるいはぬけぬけと)ベッドルームに入っていくという図を、笑いに包みながら艶っぽくもあっけらかんと描けるというのは、やっぱりある種の文化的成熟ってもんだよな、と感嘆。

 脚本はファニー役とジョニー役のレネ・テイラー&ジョー・ボローニャ夫妻。

 それにしてもナネット・ファブレイ、すでに80近いはずで、さすがに往年の弾けるような輝きは失せてはいるものの、独特のチャーミングさの名残はあって、今なお個性的。
 前半ことさら老けたメイクで登場するのでエッと思うが、第2幕での変身を観て納得。老人3人で軽く踊ってみせるショウ場面もあり、水曜マチネーに集まったオールド・ファンには大受け。僕も思わずニヤニヤしちゃいました。
 いやあ、楽しかった。

(7/2/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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