[ゆけむり通信Vol.24]

1/ 7&11/1997
『ワンス・アポン・ア・マットレス ONCE UPON A MATTRESS』


お姫様、寝てる場合ではございません

 『ワンス・アポン・ア・マットレス』が昨年12月19日にオープンした時のニューヨーク・タイムズの評は散々だったという。なぜ?
 なぜ、これがそんなに叩かれなくちゃならない? サラ・ジェシカ・パーカー Sarah Jessica Parker、チャーミングに大熱演。楽曲もいいし……なぜ?
 なぜ、が高じて応援心が湧いて、2度も観てしまったのであります。

 昔々、ある国に、呪いで口の利けない王様と、それをいいことに我が物顔で権勢を振るう女王様と、マザコン気味の王子様がおりました……。
 王子が他国の王女と結婚するまでは誰も結婚してはならぬ。女王の出したこのお触れでいちばん困ったのが侍女のラーキン。恋仲の騎士ハリーの子を身ごもってしまったのだ。
 あわてて王女探しの旅に出たハリーが連れ帰ったのが、ウィニフレッド姫。堀を泳ぎ渡って登場した彼女は、さばさばしていて王女らしくないが、王子がひと目ぼれしてしまい、とにかく女王のテストを受けることに。
 手を変え品を変えて何人もの王女を落としてきたテスト。今回は、20枚のマットレスの下に小さな豆を1粒入れ、それが気になって眠れなかったら合格、という知らなきゃ落ちるに決まってる一際意地悪なもの。しかも当日、女王はウィニフレッドを疲れさせ、酒まで飲ませてヘロヘロにする。
 さて、翌朝。勝利の確信に満ちた女王の前に現れたのは、一睡も出来ずに憔悴しきったウィニフレッド。実は、女王のたくらみを盗み聞きした王たちが、マットレスの下に鎧や兜をたくさん入れておいたのだった。

 何と言ってもサラ・ジェシカ・パーカー。
 『努力しないで出世する方法 HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』のローズマリー役でも非凡なところを見せたが、今回は文字通りの体当たり演技。
 瞳の中で星が輝いているような屈託のない笑顔で客席に幸福な気分を振り撒きながら、八面六臂の大活躍だ。

 ずぶ濡れでヨイショっと登場、ユーモラスに踊る完全装備の騎士団をバックに、私ってシャイなの、とぬけぬけと歌う「Shy」ではまだ手探りの感じだが、酒→バーベル→歌→踊り……という一連の腕試しをフラフラになりながらも目まぐるしく繰り返す「Spanish Panic」まで来ると、エンジン全開。
 続く第1幕最後の「Song of Love」では、王子、騎士、侍女たちを従えて舞台狭しとエネルギッシュに踊り回って、もう暴走状態。
 第2幕では一転して、ブルース調の「Happily Ever After」を歌い上げてみせたりもする。

 私の魅力でこの舞台、成功させます、っていう気迫がビシビシ伝わってきて、しかもそれが嫌みじゃなくて気持ちいい。

 聞いたところによると、初演(59年)のキャロル・バーネット Carol Burnettと比較して、劣る、という評価をされたらしいが、40年前を懐かしがっている爺さん連中など打っちゃっておけばいい。
 サラはサラ。96-97年の王女の魅力を新鮮な気持ちで楽しめないのは不幸だ。

 他にも見どころは多く、それぞれにアイディアがある。
 例えば、ラーキンがハリーに妊娠を告げる場面では、ダンサーが妊娠の原因(!)から出産までを踊りで表現してみせるし、道化役のダンサー(デイヴィッド・ヒッバード David Hibbard)のソロ・ダンス場面では、バックで別の1人を影のように踊らせる、といった具合。
 各場面がよく練られている。
 侍女役でチェロ奏者が舞台に出てくるが、歌の伴奏を終えて立ち上がると楽器に隠れていた下腹が見えて、妊婦であることがわかる、というような細かいギャグもそこここにある。

 出演者も粒ぞろい。
 コミカルであることはもちろん、ミュージカル的ですらある演技を、しゃべることなく見せる王(ヒース・ランバーツ Heath Lanberts)も達者だが、舞台の要になっている早口でしゃべりつづける女王(メアリー・ルー・ロサトー Mary Lou Rosato)の、軽妙な意地悪演技は見事。
 一昨年『星にスウィングSWINGING ON A STAR』でブロードウェイ・デビューしたルイス・クリール Lewis Clealeが、ハリー役で、前作に引き続いてトボケた演技を見せて印象に残る。
 その相手役ラーキンを演じたジェイン・クラコウスキー Jane Krakowskiは、『グランド・ホテル GRAND HOTEL The Musical』『カンパニー COMPANY』と観てきたが、こういうテイストの作品でも不思議にエロティックだ。

 作曲のメアリー・ロジャース Mary Rodgersはリチャード・ロジャース Richard Rodgersの娘。作詞マーシャル・ベアラー Marshall Barer。脚本はそのベアラーとジェイ・トンプソン Jay Thompson、ディーン・フラー Dean Fullerの3人。
 演出ジェラルド・ガティーレズ(と読むのでしょうか)Gerald Gutierrez。

 応援のつもりで見に行った2度目、土曜のマチネーは、家族連れで満員。多くは半額チケットかもしれないが、大いに受けてるのを見て、してやったりの気分でした。

(4/16/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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