[ゆけむり通信Vol.24]

1/ 6/1997
『フォービドゥン・ブロードウェイ・ストライクス・バック! FORBIDDEN BROADWAY STRIKES BACK!』


オンが荒れれば逆襲が冴える

 日本でもおなじみのパロディ・レヴュー『フォービドゥン・ブロードウェイ』が、過激な新ネタを抱えて帰ってきた。記憶に間違いがなければ94年1月以来の復活。
 昨年はトニー賞をめぐる大騒ぎがあっただけに、脚本(・演出、ジェラルド・アレッサンドリーニ Gerard Alessandrini)もノリまくっていて、大いに笑わせてもらった。

 特筆すべきネタの1つは、そのトニー賞がらみで、もちろん主役はジュリー・アンドリュース。

 『レント RENT』『ノイズ/ファンク NOISE/FUNK』のみならず、短期で終わった『予告された殺人の記録 CHRONICLE OF A DEATH FORETOLD』や小品『星にスイング SWINGING ON A STAR』にまで遅れをとる形でノミネートから外れ、結局主演女優賞のみで候補になった『ヴィクター/ヴィクトリア VICTOR/VICTORIA』。制作にも関わるアンドリュースは怒って、水曜マチネー公演のカーテンコールで観客を前にノミネート辞退を宣言。
 というのが実際に起こった事件。

 怒りの治まらないジュリーは、「大いなる助走」よろしく、関係者を皆殺しに! というのが今回のネタ。
 このジュリー・アンドリュースがそっくりなんだな、また。

 もう1つ、個人的に思い入れがあっただけに大受けしたのが、パティ・ルポン Patti LuPoneの『マスター・クラス MASTER CLASS』ネタ。

 トニー賞を獲得したゾー・コールドウェル Zoe Caldwellの後を受けて、まさにこの時ルポンが演じていた生なネタだが、話の根は深い。
 ごぞんじの通り『マスター・クラス』は、マリア・カラスが3人のオペラ歌手志望者に個人レッスンを行なう話だが、ここでルポンの生徒になるのが、グレン・クロース Glenn Close、アンドリュー・ロイド・ウェッバー Andrew Lloyd Webber、そしてマドンナ Madonnaの3人。
 と来れば、そう、『サンセット大通り SUNSET BOULEVARD』『エヴィータ EVITA』
 ルポンは、前者のロンドン公演ではプロデューサー兼作曲家であるロイド・ウェッバーから無責任にもミスキャストだと言われ、ブロードウェイ初演の主役の座はミュージカル女優としてさほど優れているとも思われないグレン・クロースに奪われ、後者の映画化ではマドンナに主演を持っていかれた。

 歌がダメなクロースに向かってルポン扮するマリア・カラスが怒るシーンが最高。いらいらするくらいに歌えないのに自己陶酔するクロースの感じが、(ホントは違うけど)真に迫っていた。

 ところで、ルポンの『マスター・クラス』、今回の観劇リストにしっかり組み込んでおいたのだが、劇場窓口で、ちょうど僕の滞在した1週間のみ新年休暇だと知らされる。わかっていれば1日早く来たものを。

 以前からのネタも少しあったが、大半がこうした文字通りの新ネタ。以前のヴァージョンを観た人も見逃せません。
 そう言えば、ちょうどこの時期ツアー・カンパニーが来日していたが、内容は全く同じだったのでしょうか。

* * * * * * * * * *

 余談ですが。
 『サンセット大通り』が、ブロードウェイ、ウェストエンドと相次いで閉まった。ウェストエンド3年9か月、ブロードウェイ2年4か月の公演だった。
 ロイド・ウェッバーが財力に飽かせて延命を図った(に違いない)にしては、かなり短い命だった、と言ってもいいだろう。

 ウェストエンドのパティ・ルポン版、ブロードウェイのグレン・クロース版、両方を観て思ったのは、この作品は企画自体が失敗だということ。巨大な屋敷のセット以上の見せ場を持たないミュージカルが、うまくいくわけがない。
 ロイド・ウェッバーの作品は、これまでも演出の力で持ちこたえてきたような部分が多々あった。しかし、『キャッツ CATS』は成功に導いたトレヴァー・ナン Trevor Nunnも、これほどミュージカル的面白さを作り出しにくい企画では腕のふるいようがなかっただろう。ハロルド・プリンス Harold Princeだったらあるいは、と思わなくもないが、成功させてくれなくてよかった。
 もっとも、プリンスを使わなかった背景にはそれなりの(金銭的な?)確執があったのではないかと、業界通でなくても思う。
 だから、『サンセット大通り』の失敗を受けての新作『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド WHISTLE DOWN THE WIND』の演出に、ウェッバーが再びプリンスを起用したのは、背水の陣のように見える。それも不評らしいが。

 ともあれ、『サンセット大通り』で悪かったのは、役者ではなくプロデューサーだ。
 パティ・ルポンの名誉のためにも、再度そう明言しておきたい。

(4/21/1997)

※次回の同演目観劇記はこちら

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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