Around TKTS 10/29/2017

[ゆけむり通信Vol.132]

10/29-10/30/2017


  • 10月29日13:30
    『ハネムーナーズ THE HONEYMOONERS』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 10月29日19:00
    『シカゴ CHICAGO』
    AMBASSADOR THEATRE 215 West 49th Stree
  • 10月30日20:00
    『迷子の警察音楽隊 THE BAND'S VISIT』
    BARRYMORE THEATRE 243 West 47th Street
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 10月末に、3泊5日という強行軍で、ブロードウェイに来る予定になっているニュージャージーの限定公演『ハネムーナーズ』と、幕を開けて間もない『迷子の警察音楽隊』を観てきた。
 ちなにに到着日(28日)の夜は、『ナターシャ、ピエールと1812年の巨大彗星 NATASHA, PIERRE AND THE GREAT COMET OF 1812』の楽曲作者デイヴ・マロイ Dave Malloy 自身の出演するオフの小規模公演のキャンセル待ちに並んだが、撃沈。列の3人目だったけど、1枚も出なかったから致し方ない。観劇数が少ないのは、そんなわけ。『シカゴ』を観たのは、日曜夜でオフにも目ぼしい作品がなかったから。

 『ハネムーナーズ』の元は、シットコムの初期ヒット作(1955年~56年)。今でもケーブルTVで流れているから、世代を超えて知られているのは間違いない。そのTV番組の元は、作者でもあり主演者でもあるジャッキー・グリースン Jackie Gleason のヴァラエティ・ショウの1コーナーだった、とウィキペディアには書いてある。内容はニューヨークのアパートメントに住む2組の夫婦の話で、詳しくは各自お調べください(笑)。
 で、今回の舞台、そのTVの役者のイメージに似て、かつソックリさんというわけでもない魅力も演技力もある役者を揃えて、この時点で半分は成功。具体的には、マイケル・マッグラス Michael McGrath、マイケル・マストロ Michael Mastro、レズリー・クリッツァー Leslie Kritzer、ローラ・ベル・バンディ Laura Bell Bundy。この布陣でブロードウェイを目指しているようだ。
 楽曲は内容に合わせた50年代的なオーソドックスな作風で、ダンサブルなナンバーもあり、ペイパーミルで観ている分には悪くないが、ブロードウェイ進出となると決め手に欠ける印象になるかも。作曲のスティーヴン・A・ワイナー Stephen A. Weiner、作詞のピーター・ミルズ Peter Mills 共に、これが初のブロードウェイ作品となる模様。

 『迷子の警察音楽隊』という“邦題”にお聞き覚えはないだろうか。元はエラン・コリリン監督・脚本による2007年のイスラエル映画で、第20回東京国際映画祭に出品され、最優秀作品賞に当たる東京サクラグランプリなる賞を受賞している。
 今回のミュージカル化舞台は、昨年秋にオフのアトランティック・シアター・カンパニーのホーム、リンダ・グロス劇場で上演され、好評を得て複数の賞も獲得。1年の時を経てブロードウェイに登場することになった。
 楽曲作者のデイヴィッド・ヤズベク David Yazbek は、『迷子の警察音楽隊』以前に3本のブロードウェイ・ミュージカルの楽曲を書いている。時系列で並べると、次の通り(日付はプレヴュー開始日~終演日)。
 『フル・モンティ THE FULL MONTY』(2000年9月25日~2002年9月1日)
 『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ DIRTY ROTTON SCOUNDRELS』(2005年1月31日~2006年9月3日)
 『神経衰弱ぎりぎりの女たち WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』(2010年10月8日~2011年1月2日)
 他に、2004年の『ボンベイ・ドリームズ BOMBAY DREAMS』にも追加の作詞で関わっているが、これは別扱いでいいだろう。
 『フル・モンティ』は3作品の中では最も当たった作品で、失業した労働者たちが男性ストリップでひと山当てようとする、笑って泣ける話(詳しくはこちら)。ヤズベクの楽曲は、[基本にファンキーなR&Bテイストがあって、ビート感が強い。それが、ブルーカラーの街のぶっちゃけた気分を出しているし、舞台に今日的な印象を加えてもいる。そうした中に、シンガー・ソングライター的な感触のバラードが時折交じって、しんみりした心情を伝える。さらには、陽気なラテン・ナンバーも1曲用意されていて、華やかでユーモラスな彩りを添える。]……と、これは当時サイトに書いた感想から。ヤズベクのことを、[器用さを持つと同時にアメリカン・ミュージックの魅力の核もつかんでいるように見える]とも書いている。続く2作の楽曲も、基本的には同じ印象。ただ、『フル・モンティ』には、年嵩の一見ショボいオヤジがオーディションにやって来て意外にもファンキーに踊りまくる「Big Black Man」と、最後の“フル・モンティ”(素っ裸)に向けて盛り上がるストリップ・ショウのナンバー「Let It Go」(もちろんディズニーの“あれ”とは別曲)という強力な2曲があり、これが後続作品より興業的にうまくいった要因の1つだと思われる。
 『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』の元は1988年の同名アメリカ映画で、それ自体が1964年の映画『寝室ものがたり BEDTIME STORY』のリメイクらしい。リゾート地を舞台にした2人の詐欺師の丁々発止の駆け引きがあって、そこに若い女性詐欺師が絡むという、いわゆるコン・ゲームがその内容。ここでのヤズベクの仕事ぶりは、設定に沿って『フル・モンティ』よりヨーロッパ寄りに幅を広げた……と言うか、昔風のミュージカル・ナンバーが増えた感じ。歌の内容に合わせてカントリー調の楽曲もある。
 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』の元は1988年スペイン映画でスペイン語タイトルが「Mujeres al borde de un ataque de nervios」。複数の男女の恋愛狂騒曲といった内容で、筋が入り組んていて、そこが面白いはずなのだが、あまりうまくいっていない。この作品のヤズベクの楽曲には、舞台がスペインであることに合わせてフラメンコ色が加わったものや、若干だがダブ感覚が入ったものが含まれる。
 以上3作の全てで、ヤズベクはトニー賞の楽曲賞候補になり、受賞は逃している。
 実のところ、『迷子の警察音楽隊』におけるヤズベクの楽曲は、過去3作とは少し印象が違う。
 物語の舞台は1996年のイスラエル。そこに伝統あるエジプトの警察音楽隊8人が親善のためにやって来る。翌日、ペターティクヴァ(Petah Tikva)という町の文化センターで演奏することになっているのだが、空港に来ているはずの迎えがいない。うまく連絡もとれず、しかたなく自力で目的地へ向かうことにする。ところが、乗り込んだバスの着いた先は、発音のみ似て実態は非なるベターティクヴァ(Bet Hatikva)という砂漠の中の小さな町だった。戻りのバスはすでになく、また宿もなく、その日は、最初に訪ねた食堂の女主人の厚意で、3組に分かれて別々の家に泊めてもらうことになる。そんな経緯で始まる、一筋縄ではいかない関係にあるエジプトとイスラエルという国の、めったに巡り合うことのない“普通の人々”が共に過ごす一夜の物語。
 原作の映画を観ていただくとわかるが、最大の事件は発端で音楽隊が違う場所に着いてしまうことだけで、後は淡々と進んでいく。日常言語が通じ合わないアラビア語とヘブライ語なので、共通言語の英語でたどたどしく話すことも、それに輪をかける。にもかかわらず、観ていて飽きることがない。ユーモラスで、苦味もあり、静かに感動する。
 舞台版も、ほぼ同様の展開で、実に淡々としている。一般的なミュージカルのソング&ダンスというイメージからは遠いと言ってもいいかもしれない。音楽隊だけに、登場人物が楽器演奏をする場面もあるが、控えめだ。場面転換も、舞台が静かに回転するスタイルで、派手さは全くない。
 したがって、ヤズベクの楽曲も、これまでと違って抑え気味。むしろ“沁みる”系のナンバーが多い。そういう意味では、新たな気持ちで臨んだプロダクションだったのではないだろうか。そして、それが成功している。
 ちなみに、演出のデイヴィッド・クローマー David Cromer はもっぱらストレート・プレイを手掛けてきた人。こうした舞台には、むしろ向いているのだろう。

 『シカゴ』は、例によって主要キャストを挙げておく。
 ロキシー/シャーロット・ダンボワーズ Charlotte d'Amboise、ヴェルマ/アムラ=フェイ・ライト Amra-Faye Wright、ビリー・フリン/トム・ヒューイット Tom Hewitt、エイモス/レイモンド・ボカー Raymond Bokhour、ママ・モートン/ナターシャ・イヴェット・ウィリアムズ Natasha Yvette Williams。なかなか。

(2/12/2018)

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