THE GREAT COMET's ad on the wall at 45th street.11/27/2016

[ゆけむり通信Vol.126]

11/14-11/20/2016


  • 11月14日21:30
    『一体全体ボクはどうやってここまでやって来たのか? HOW THE HECK DID I GET HERE?:James Monroe Iglehart@54 Below』
    54 BELOW 254 West 54th Street
  • 11月15日14:00
    『ラジオ・シティ・クリスマス・スペクタキュラー THE RADIO CITY CHRISTMAS SPECTACULAR』
    RADIO CITY MUSIC HALL 1260 Avenue of the Americas
  • 11月15日19:00
    『ファルセトーズ FALSETTOS』
    WALTER KARR THEATER 219 West 48th Street
  • 11月16日14:00
    『スウィート・チャリティ SWEET CHARITY』
    ROMULUS LINNEY COURTYARD THEATRE 480 West 42nd Street
  • 11月16日20:00
    『ブロンクス物語 A BRONX TALE』
    LONGACRE THEATRE 220 West 48th Street
  • 11月17日19:00
    『ナターシャ、ピエールと1812年の巨大彗星 NATASHA, PIERRE AND THE GREAT COMET OF 1812』
    IMPERIAL THEATRE 249 West 45th Street
  • 11月18日19:00
    『ディア・エヴァン・ハンセン DEAR EVAN HANSEN』
    MUSIC BOX THEATRE 239 West 45th Street
  • 11月19日14:00
    『イン・トランジット IN TRANSIT』
    CIRCLE IN THE SQUARE 235 West 50th Street
  • 11月19日20:00
    『ライド・ザ・サイクロン RIDE THE CYCLONE』
    LUCILLE LORTEL THEATRE 121 Christopher Street
  • 11月20日14:00
    『迷子の警察音楽隊 THE BAND'S VISIT』
    LINDA GROSS THEATER 336 West 20th Street
  • 11月20日20:00
    『パーティ・ピープル PARTY PEOPLE』
    ANSPACHER THEATER at PUBLIC THEATER 425 Lafayette Street
* * * * * * * * * *

 ブロードウェイ秋の新登場作5本が出揃った11月。オフからの移行作が多く、3本はオフでも観たもの、残り2本の内1本はリヴァイヴァルで、その初演を観ている。そんなわけで驚きはなかったものの、充実作が揃って、いいシーズンになった。
 では、感想を観た順に。

 『一体全体ボクはどうやってここまでやって来たのか?』は、『メンフィス MEMPHIS』で注目され、『アラジン ALADDIN』ジニー役でトニー賞を獲ったジェイムズ・モンロー・アイグルハート James Monroe Iglehartの小さなクラブでのショウ。タイトル通り、ブロードウェイで成功するまでの足跡を音楽的に辿る。
 かなり器用な人だという印象。まだまだ伸びしろがありそうで楽しみ。

 『ラジオ・シティ・クリスマス・スペクタキュラー』は、いつもの通りロケッツが素敵。この時期に行ったら見逃したくない。

 『ファルセトーズ』は、92年の5月30日、『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』を初めて観た翌日に、ゴールデン劇場で初演を観ている。その時の(つまり25年前の)感想は次の通り。
 [場面転換はスピーディ。舞台装置はシンプルで、背景には何もなく、可動式のソファやドアや草野球場のスタンド等が役者によって入れ換えられる。タイミングも絶妙なこの入れ換えにも振付があり、ショウの一部になっている。また、セリフは全て歌になっているが、ソロ→コーラス→ソロ→合の手→ソロ→コーラス、といった風な展開がかなりのテンポで行なわれる場合が多いにも関わらず、一糸乱れないピッタリの呼吸。ま、ブロードウェイなのだから当たり前と言えばそれまでなのだが、そういった部分を越えて、小規模のプロダクションならではの親密なものを感じた。同時に、その親密さが、テーマである "愛" の問題をよりリアルに表現しているように思え、プロダクション全体のショウの本質に対する理解の深さを感じた。]
 『マーチ・オブ・ファルセットズ MARCH OF THE FALSETTOS』(1981年)と『ファルセットランド FALSETTOLAND』(1990年)という2つのオフ作品を合体させた舞台で、オフの役者が、ほぼそのままオンにも登場。その辺りの空気感に反応しているのがわかる。
 で、今回。ホリデイ・シーズンの期間限定ということもあるからだろう、クリスチャン・ボール Christian Borle はじめ、とにかく役者を揃えた印象で、うまい。楽曲作者ウィリアム・フィン William Finn の世界を過不足なく表現している。初演の熱気は望むべくもないが、この作品のリヴァイヴァルとしては上出来と言っていいだろう。演出は初演同様、脚本もフィンと共同で手掛けているジェイムズ・ラパイン James Lapine。

 『スウィート・チャリティ』はオフ。42丁目の複合劇場の中にある小規模劇場での上演で、主演がサットン・フォスター Sutton Foster と来れば、慌ててチケットを取らないわけにいかない。
 結論から言うと、フォスターのチャリティは役にぴったり。ちょっと愚かしいが可愛らしく、魅力的。笑える仕草も見事なコメディエンヌぶり。ただし、きっちり踊るが本来的なダンサーではないので、周りがダンサーばかりの舞台にあっては、やや見劣る。っつっても日本のレヴェルで考えないでくださいね。ちなみに、振付(ジョシュア・バーガッシー Joshua Bergasse)は、フォッシー的なイメージを残しながらも別の振りになっている。
 チャリティが結婚寸前まで漕ぎつける相手役を、やや神経症的な人物に設定してあるのが“今”的で興味深かった。
 それにしてもサイ・コールマン Cy Coleman(作曲)×ドロシー・フィールズ Dorothy Fields(作詞)の楽曲が素晴らしい、と改めて認識。

 『ブロンクス物語』は、ロバート・デ・ニーロ Robert De Niro が、ベテラン、ジェリー・ザックス Jerry Zaks と共同で演出を手掛けているのが話題。
 舞台ミュージカル化までの流れとしては、今回の脚本家でもあるチャズ・パルミンテリ Chazz Palminteri の自伝的一人芝居→デ・ニーロの監督で1993年に映画化(パルミンテリも出演)→今回の舞台、となる。楽曲は、アラン・メンケン Alan Menken(作曲)とグレン・スレイター Glenn Slater(作詞)の『シスター・アクト SISTER ACT』コンビ。
 マンハッタン187丁目のベルモント・アヴェニューでドゥワップ、という幕開きはディオン Dion を想起させ、一瞬、第2の『ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS』かと思わせるが、もちろん、そうはならない。イタリア移民の子として育った主人公が、可愛がってくれるコミュニティのボスと、実直な父、そして恋した黒人の娘の間で揺れ動く、という、スケールの小さい『ゴッドファーザー THE GODFATHER』的な話。音楽と物語の結びつきも、あまり有機的でなく、残念ながら、ありがちな人情劇で終わっている。

 “グレイト・コメット”こと『ナターシャ、ピエールと1812年の巨大彗星 Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812』の原作は、トルストイの小説「戦争と平和」。同作の中心人物であるナターシャとピエールを中心にした群像劇で、やはりタイトルにある1812年とはナポレオンによるロシア侵攻の年。この舞台で描かれるのは、その前夜で、原作小説で言えば第2巻の後半にあたるようだ。
 2012年にオフのアルス・ノーヴァ劇場で上演した後、翌2013年、ダウンタウン寄りのミートパッキング地区に建てたテント状の仮設劇場カジノ(という名前)で再演。そのカジノ劇場は間もなくブロードウェイ劇場街にポッカリと空いた更地に移される。この時の公演を観たが(9月28日)、ロシア歌謡的なものやオペラからハウス的なものまでをキャバレー音楽の意匠でくるんだような濃密な楽曲群と、華やかかつ重厚に映る骨董めいた装置で彩られた舞台空間の中に客席が混在するテント劇場ならではの雰囲気が、爛熟期のロシアを思わせる退廃的でエキセントリックな空気を生み出して刺激的だった。バンドはリズム隊の他にアコーディオンや木管も含み、それらミュージシャンとは別に、アンサンブルの役者たちもギターやヴァイオリンやパーカッション等を奏でる辺り、旅芸人の即興劇的印象も強い。そうした要素に呼応して、役者の演技もかなり熱っぽい。この時の公演が高い評価を受け、オフのトニー賞とも言うべきオビー賞他を受賞している。
 間にマサチューセッツ公演を挟んで登場してきた今回のブロードウェイ版は、その空気を生かすべくインペリアル劇場の舞台と客席を改造。階段状に客席を設えた、19世紀にあったかもしれない高級ナイトクラブといった仕様にしてあり、舞台上にもかなりの数の客席がある。席によってはテーブルもあって実際に飲み物がサーヴされてもいる。もちろん、随所にオフの時同様の骨董めいた装置も誂えてある。というわけで、オフの時の雰囲気をほぼ再現、熱い舞台に仕上がった(余談だが、この客席の改造により、少なくとも観に行った時点では、客入れにかなり時間がかかっていた)。
 楽曲作者のデイヴ・マロイ Dave Malloy は、脚本、編曲も手掛け、オフ版では役者としてピエールを演じるというマルチな才能を発揮している。演出レイチェル・チャフキン Rachel Chavkin、装置ミミ・リエン Mimi Lien。

 『ディア・エヴァン・ハンセン』もオフからの移行作。2016年春から初夏にかけてのセカンド・ステージでのオフ公演は、やはりオビー賞を含め複数の賞を獲得している(4月3日観劇)。
 主人公のエヴァン・ハンセンはハイスクールの生徒。引きこもりでカウンセリングを受けていて、治療の一環として“ディア・エヴァン・ハンセン”で始まる自分宛のメッセージをノートに書いていた。そのノートを持ち去った同じ学校の男子生徒が自殺し、彼の家族はエヴァン・ハンセンを息子の親友だと思い込む。という偶然と誤解から始まる、人間関係が苦手な人々の物語。これにSNSが絡んで話が大きくなるのが肝で、あれこれあってエヴァン・ハンセンは、ある種のヒーローに祭り上げられることになる。無限に開かれたネットの世界と殻に閉じこもる個の世界の併存という現代の苦い様相を描き出したところに、“旬”な輝きがある。
 楽曲も、そうした内容に呼応して、揺れ動く登場人物たちの感情を、時に性急に時に繊細に描き出す。曲調はフォーク/ロック的だが定型に収まらず、アレンジにはエレクトロニックな感触もある。そんな楽曲が、SNS世界を反映した巧みなプロジェクション装置と相俟って、心に迫ってくる。主演のベン・プラット Ben Platt の歌も沁みる。今年のトニー賞の最有力候補と見る。
 楽曲作者(作曲・作詞)はベンジ・パセック Benj Pasek とジャスティン・ポール Justin Paul のコンビ。2人は演劇世界ですでに実績を残していて、僕が観ただけでも、2012年の夏にオフのセカンド・ステージに登場した『ドッグファイト DOGFIGHT』、同年のホリデイ・シーズン限定でブロードウェイに登場した『クリスマス・ストーリー A CHRISTMAS STORY:The Musical』の2本のミュージカルがある。2本とも同名映画の舞台ミュージカル化で、前者が反戦の意思を孕んだシリアスな青春もの、後者がノスタルジックな家族愛の物語、と趣向は違うが、どちらもいい出来だった。ちなみに、話題のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド LA LA LAND』の楽曲の作詞者でもある。

 『イン・トランジット』は、2008年の役者が脚本を携えてのリーディング、2010年のセットを備えた通常上演と、続けてオフ公演を観てきた小規模な作品で、まさかブロードウェイに来るとは思わなかった。劇場がブロードウェイでは最も小さいサークル・イン・ザ・スクエアなのも宜なるかな、だ。
 内容は、タイトルの通り、ニューヨークの地下鉄を舞台にした群像劇で、いくつかのエピソードを交互にうまく織り込みながら、都会に暮らす人々の哀歓を描き出す。地味だが、うまく作られてはいる。
 特徴は、人力(声+鼻息?)で複雑なビートを生み出すヒューマンビートボックスを軸にした完全なア・カペラ・ミュージカルなこと。こぢんまりした内容に相応しい音楽ではあるし、メリハリも効いていて悪くない。が、この手法、2008年や2010年の時点でなら舞台世界ではまだ新鮮味があったが、2011年に『ヴォカ・ピープル VOCA PEOPLE』という、やはりヒューマンビートボックスが軸のア・カペラ・ミュージカルが登場して話題になったこともあるし、その点での商品価値は下がった。
 そういう意味でも、この作品に限っては、わざわざオンで幕を開けた意味は見出せなかった。まあ、“ブロードウェイ・ミュージカル”という冠でツアーに出られるから、それはそれでいいのかもしれないが。4月16日で閉幕。

 『ライド・ザ・サイクロン』はオフ作品。高校のコーラス部の男女6人が、とある遊園地のジェットコースターで事故死するのだが、不思議な成り行きで1人だけ生き返ることができる……というような話だったと思うのだが、暗い客席で大半を寝て過ごしてしまい、ほとんど覚えていない。
 開演前に劇場入口で、友人たちと盛り上がっていた作者の1人(誰だ?)に求められて握手までしたのに。申し訳ない。

 残り2本だが、とりあえず、これで第1次アップとさせてください。残りも追って。

(5/9/2017)

Copyright ©2017 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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