Billboards at west side of Duffy Square 10/21/2015

[ゆけむり通信Vol.121]

10/20-10/23/2015


  • 10月20日20:00
    『シカゴ CHICAGO』
    AMBASSADOR THEATRE 215 West 49th Street
  • 10月21日14:00
    『オン・ユア・フィート! ON YOUR FEET!』
    MARQUIS THEATRE 1535 Broadway
  • 10月21日19:00
    『デイムズ・アット・シー DAMES AT SEA』
    HELEN HAYES THEATRE 240 West 44th Street
  • 10月22日13:30
    『バンドスタンド THE BANDSTAND』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 10月22日20:00
    『アレージアンス ALLEGIANCE』
    LONGACRE THEATRE 220 West 48th Street
  • 10月23日19:00
    『ファースト・ドーター組曲 FIRST DAUGHTER SUITE』
    ANSPACHER THEATER(at PUBLIC THEATER) 425 Lafayette Street
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 ブロードウェイ秋の新登場ミュージカル3本に加え、オフに登場のマイケル・ジョン・ラキウザ Michael John LaChiusa の新作『ファースト・ドーター組曲』、ペーパーミル・プレイハウスに登場のブロードウェイを目指す新作『バンドスタンド』と、短期間ながら濃密だった10月の渡米。
 ブロードウェイ新登場作品の感想から、観た順に。

 『オン・ユア・フィート!』は、サブタイトルに“エミリオ&グロリア・エステファン Emilio & Gloria Estefan のストーリー”とある通り、その2人が出会って音楽業界で成功し、大事故に遭って再起不能を噂されながらも見事復活するまでの話で、ここにもう1作、『ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS』のフォロワーが現れたわけだ。
 この手の作品は、例えば『モータウン MOTOWN The Musical』のように、結局はただの自慢話に見えたりする可能性もあって心配だったが、予想を超えて、かっちりした内容だった。グロリア一家もエミリオ・エステファンもキューバからの移民であることを軸に、全体をキューバ移民がアメリカで生き抜いていくドラマとして描いた、脚本のアレグザンダー・ディネラリス Alexander Dinelaris の功績が大きいだろう。グロリアの父がヴェトナムの戦場でグロリアからの歌のメッセージを受け取るところから始まるあたりに、このドラマの根っこが見える。ヒスパニックに対する音楽ビジネスの無理解もきちんと描かれている。
 グロリアがプロ歌手になることに反対する骨のある母(『イン・ザ・ハイツ IN THE HEIGHTS』のアンドレア・バーンズ Andréa Burns)、グロリアを応援するユーモラスな祖母、という構図もうまい。ディネラリスの脚本ではオフのミュージカル『ザナ・ドント! ZANNA DON'T!』の面白さが印象に残るが、最近の話題は映画『バードマン BIRDMAN』でアカデミー賞を獲ったことだろう。演出ジェリー・ミッチェル Jerry Mitchell(『ヘアスプレイ HAIRSPRAY』『キンキー・ブーツ KINKY BOOTS』)によるスピーディな展開、振付セルジオ・トゥルージロ Sergio Trujillo(『ジャージー・ボーイズ』『メンフィス MEMPHIS』)による躍動的なダンスも見どころ。
 楽曲は当然のごとく、出世曲「Conga」をはじめとする彼らのレパートリー。彼ら2人が、楽曲作者であると同時に編曲にも携わっているので、演奏は限りなくホンモノに近い(笑)。ちなみに、プロデューサーとしても、彼らの会社が名を連ねている。
 劇場には、グロリア・エステファンやマイアミ・サウンド・マシーンのファンと思われる人が多く集っていたようだが、仮に彼らの音楽を知らなくても面白く観ることができる、というレヴェルの出来だと思う。

 1月3日までの限定公演だった『デイムズ・アット・シー』。元々は、1966年にオフ・オフで始まり、68年にオフに移ってヒット、今やブロードウェイの女王の1人と言っていいバーナデット・ピータース Bernadette Peters を一躍スターにした作品として知られている。アン・ミラー Ann Miller やアン・マーグレット Ann-Margret が出演するテレビ版も作られて、71年にオンエアされたようだ。
 内容は1930年代に流行ったミュージカル映画のパロディ。舞台に立ちたくて田舎から出てきた純な娘の夢が様々な偶然から叶うという、ご都合主義の極まった話。楽曲は、それ風にノスタルジックなジャズ・ソングの意匠で作られていて味がある。作曲ジム・ワイズ Jim Wise、作詞ジョージ・ハイムゾーン George Haimsohn &ロビン・ミラー Robin Miller。
 出演者が男女3人ずつのわずか6人と少ないが(ただし役は7つ)、お気楽な笑える展開、ミュージカル好きのツボをくすぐる演出、闊達なタップ&アステア&ロジャーズ風のカップル・ダンスの連射で、まず飽きることはない。劇場もおそらく意図的にブロードウェイの中では小ぶりな小屋を選んだようで、規模の小ささも、あまり気にならない。
 ちなみに、1934年製作の『Dames』(邦題:泥酔夢)というヒット・ミュージカル映画があるが、筋も違うし、直接の関係はないようだ(が、パロディの対象となった一連の映画の1つである可能性はある)。

 『アレージアンス』とは“忠誠”という意味。『スタートレック』のヒカル・スールー(日本語版役名カトー)役で知られる日系アメリカ人二世ジョージ・タケイ George Takei の体験を元に作られた、第二次世界大戦時に強制収容された日系アメリカ人家族のドラマだ。当のジョージ・タケイも出演、『ミス・サイゴン MISS SAIGON』のオリジナル・キム役だったレア・サロンガ Lea Salonga と並んで主演扱いになっている。
 日本軍の真珠湾攻撃を機に、日系アメリカ人たちは財産を奪われ、過酷な環境の強制収容所に入れられる。力を合わせて理不尽な扱いに耐えていくが、やがて、日本やアメリカに対する思いの違いから収容所内で対立が生じ、家族間にも亀裂が広がっていく。シリアスな話だが、ユーモラスなシーンも多く(この辺はジョージ・タケイの味が生きる)、適度にダンスのあるショウ場面も交えて、空気が重くなりすぎないように配慮してある。間違いなく悲劇だが、最後にはカタルシスが用意されている。
 楽曲作者のジェイ・クオ Jay Kuo の作風にはロイド・ウェバー Andrew Lloyd Webber 的な“歌い上げ”志向があるようで、実際レア・サロンガには、ここぞという場面でそうした歌を歌わせているが、ストーリーの起伏に合わせて、比較的ヴァラエティに富んだ曲作りをしている。例えば、ダンス場面では時代に合わせてスウィング・ジャズ風な楽曲も登場する。一部、日本的なメロディも使われるが、それは日系人たちの生活の中での日本の歌なので、こうした素材のミュージカルにありがちな無理矢理な日本情緒の付加といった印象は受けない。それとは別に、ジョージ・タケイ演じる“オジイチャン”の教えとして出てくる「Gaman」という、ドラマの肝になる歌があって、なるほど移民一世ならそういう考えを持つかもとは思うが、「ガ~マ~ン」と間延びした感じで歌われると、日本人観客としては妙な感じがするのは否めない。まあ、そもそも観客として想定されているのはアメリカ人なので、これは余計な感想なのだが。
 いずれにしても、アメリカで成功を遂げた日系人が敢えて日本とアメリカという2つの国家に翻弄された自分たちの過去を描くその舞台に、日系の他に多くの中国系をはじめとするアジア系アメリカ人が参加しているのを目の当たりにすると、昨今の日本の国情がいかに島国的かと痛感せざるをえない。加えて、先の『オン・ユア・フィート!』の内容も含め、アメリカというのは本当に移民たちの国なのだということを改めて実感するしだいだ。
 残念ながら、2月14日で幕を下ろした。

 おなじみニュージャージーのペイパーミルプレイハウスで観た『バンドスタンド』は、第二次大戦の帰還兵たちが結成するジャズ・バンドの話。戦場での心の傷が各人に色濃く残る中、厳しい現実と向かい合い、仲間と共に再生していく。
 主人公と亡き戦友の若き未亡人との恋を軸に、反戦の気分を色濃く打ち出しつつ展開していくドラマは、ほろ苦いが、心を打たれた。
 作曲リチャード・オベラッカー Richard Oberacker、作詞・脚本ロバート・テイラー Robert Taylor &リチャード・オベラッカー、演出・振付アンディ・ブランケンビューラー Andy Blankenbuehler(『ハミルトン HAMILTON』の振付)。

 マイケル・ジョン・ラキウザの新作『ファースト・ドーター組曲』が期間限定(10月6日~11月15日、好評につき22日まで延長)でオフに登場。劇場は春先に『ハミルトン』(Hamilton)を生んだオフ・ブロードウェイのパブリック・シアター。
 実在のアメリカ大統領の娘や妻を、組曲の名の通り4つのエピソードの組み合わせとして描いたもので、未見だがタイトルからして1993年の『ファースト・レイディ組曲 FIRST LADY SUITE』の続編と思われる。
 『ファースト・ドーター組曲』は、場面設定や登場人物はバラバラだが、時系列的には繋がった4場構成になっている。
 第1幕第1場は1972年6月11日の午後のホワイトハウス。ウォーターゲイト事件発覚直前のニクソン大統領(37代)の妻パットとニクソンの母ハナ、それに2人の娘たちジュリーとトリシアがいて、トリシアは結婚式直前。
 第1幕第2場は1980年春の大統領のヨットの上。実は、カーター大統領(39代)の娘エイミー(12歳)の夢の中(?)。一緒にいるのは、母ロザリンとフォード前大統領(38代)の妻ベティと娘スーザン。
 第2幕第1場は1986年11月のロスアンジェルスにあるベッツィ・ブルーミングデールの家のプールサイド。レーガン大統領(40代)夫人ナンシーと、その年の春に自伝を出版した娘のパティ。そして家のメイド、アニータ。
 第2幕第2場は2005年10月11日のメイン州ケネバンクポートにある父ブッシュ大統領(41代)の家。登場するのは父ブッシュの妻バーバラと幼くして亡くなった娘ロビンの亡霊、それに息子ブッシュ大統領(43代)の妻ローラ。
 この作品でのラキウザの曲調は振れ幅が大きく、刺々しかったり、狂騒的だったり、静謐だったりと様々だが、共通しているのは綱渡りのような緊張感だ。大統領の家族の一員という尋常ならざる状況の中で、それぞれに苦悩する女性たち。だいたいが、現状を追認する大統領夫人と、それに反発する娘、敵対する大統領の母、という人間関係になっていて、互いの真意を探り合っている。そんな中で発する言葉(歌)が、しばしば、時代と女性というジェンダーの在り様を浮かび上がらせる。そうしたドラマを縒り合わせることで、アメリカの歴史を映し出していく、という構図。…だと思う。そこまで理解できていないのですが(笑)。
 9人の魅力的な女優たちの素晴らしい歌と演技の競演が見事だった(何人かが違う場面で別の役を演じるのも面白い)。

 ちなみに、今回『シカゴ』を観たのは、飛行機の到着時間との関係で8時開演の演目がギリギリ間に合うタイミングになり、そうなると『シカゴ』しか選べなかったから。でもって、主要キャストは次の通り。
 ロキシー=ルマー・ウィリス Rumer Willis、ヴェルマ=アムラ-フェイ・ライト Amra-Faye Wright、ビリー・フリン=ジェイソン・ダニーリー Jason Danieley、エイモス=レイモンド・ボッカワー Raymond Bokhour、ママ・モートン=ナターシャ・イヴェット・ウィリアムズ NaTasha Yvette Williams。
 ロキシー役のウィリスはデミ・ムーア Demi Moore の娘。だからと言って七光りという訳ではなく、子役から芸歴を積んでいて、TVの「Dancing With the Stars」という番組の優勝経験もあるようだ。実際、危なげなかった。

(3/13/2016)

Copyright ©2016 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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