LES MIZ ad at Columbus Circle station 3/27/2014

[ゆけむり通信Vol.112]

3/25-3/30/2014


  • 3月25日20:00
    『エマーソンズ・バー・アンド・グリルのレイディ・デイ LADY DAY AT EMERSON'S BAR AND GRILL』
    CIRCLE IN THE SQUARE 235 West 50th Street
  • 3月26日14:00
    『50シェイズ! ザ・ミュージカル 50 SHADES! The Musical』
    ELEKTRA THEATRE 300 West 43rd Street
  • 3月26日20:00
    『キャバレー CABARET』
    KIT KAT KLUB at STUDIO 54 254 West 54th Street
  • 3月27日20:00
    『ブロードウェイと銃弾 BULLETS OVER BROADWAY』
    ST. JAMES THEATRE 246 West 44th Street
  • 3月28日20:00
    『もしも/あの時 IF/THEN』
    RICHARD RODGERS THEATRE 226 West 46th Street
  • 3月29日14:00
    『三文オペラ THE 3 PENNY OPERA』
    LINDA GROSS THEATER 336 West 20th Street
  • 3月29日19:00
    『セカンド・チャンス A SECOND CHANCE』
    SHIVA THATER(at PUBLIC THEATER) 132 West 22nd Street
  • 3月30日20:00
    『死の国のジャスパー JASPER IN DEADLAND』
    WEST END THEATRE(in the Church of St. Paul and St. Andrew) 263 West 86th Street
  • 3月30日19:30
    『ヴァイオレット VIOLET』
    AMERICAN AIRLINES THEATRE 227 West 42nd Street
* * * * * * * * * *

 前回から、ほぼ3週間後に訪れた3月のニューヨーク。というのも、トニー賞のノミネーションを前に、春のブロードウェイ新登場作がドッと出揃ったから。残念だったのは、『ヘドウィグ・アンド・ジ・アングリー・インチ HEDWIG AND THE ANGRY INCH』のプレヴューを初日(3月29日)に観るつもりだったのを見送らざるを得なかったこと。と言うのも、300ドル以上するプレミアム・チケットしか出ていなかったから。この作品だけは、トニー賞発表後の6月に観ることになった。
 さて、では、今回観たオンの新登場作について、ざっと。

 『エマーソンズ・バー・アンド・グリルのレイディ・デイ』(脚本/レイニー・ロバートソン Lanie Robertson、演出/ロニー・プライス Lonny Price)は、トニー賞ではプレイの部門で扱われることになったが、ミュージカルと捉えて何の問題もない。まあ、オードラ・マクドナルド Audra McDonald が、ビリー・ホリデイ Billie Holiday に扮して彼女のレパートリーを歌うだけなので、“プレイ・ウィズ・ミュージック”扱いでも筋は通っているが。
 亡くなる4か月前の1959年3月の深夜、フィラデルフィアの小さなレストラン・バー(楕円形の舞台をスタンド形式の客席が囲む変形劇場で、今回、いつもは舞台になるフロア部分にテーブル席を設けて客を座らせている)。ピアノ、ベース、ドラムスがオープニング・ナンバーを奏でる中、ビリー・ホリデイが客席後方から、ふらつき気味に出てくる……。
 という辺りで想像がつくように、昨年9月にオフで観たディー・ディー・ブリッジウォーター Dee Dee Bridgewater 主演の『レイディ・デイ LADY DAY』(タイトルが酷似しているが別作品)同様、経済的、精神的に追いつめられているホリデイ晩年の“とある1日”を描いたものだが、あちらではリハーサルや楽屋の様子が描かれていたが、こちらは舞台上のみ。それだけにホリデイのセリフが制限され、基本的には観客に向かってしゃべるか、バンマスであるピアニストとの会話になる。もっとも、少し酔っている(と同時に精神が不安定な)設定なので、愚痴めいた語りやピアニストへの罵りがモノローグ的な役割を果たしたりもするし、途中、ホリデイが唐突に引っ込んだ後に(明らかにクスリを打ってから)犬を抱えて出てくる、という波瀾もある。
 が、なにより、マクドナルドの歌が、必ずしも歌詞の内容とは関わりなく、ホリデイの心情を間接的に表現していく。ホリデイ自身の歌がそうであったように。それが、この舞台の、最大の見どころ聴きどころだろう。
 だからこそ、最後に、歌っているホリデイの声(だけ)が消えていく演出が、一際、胸に沁みる。
 ピアニスト役は、シェルトン・ベクトン Shelton Becton。もちろん、ピアノの方が本職。
 8月10日までの限定公演(予定)。

 『キャバレー』は、1998年リヴァイヴァル版と同演出(サム・メンデス Sam Mendes)のリヴァイヴァル。しかも、エムシー Emcee 役はアラン・カミング Alan Cumming(同役で98年のトニー賞主演男優賞受賞)。今回、トニー賞でリヴァイヴァル作品賞の対象にならなかったのは、そういう事情からだろう。
 トニー賞と言えば、98年版では、カミングの他、主演女優賞でナターシャ・リチャードソン Natasha Richardson(サリー・ボウルズ役)が、助演男優賞でロン・リフキン Ron Rifkin(シュルツ役)が、助演女優賞でメアリー・ルイーズ・ウィルソン Mary Louise Wilson(シュナイダー夫人役)が、それぞれ候補になり、リチャードソンとリフキンが受賞している。今回も、ダニー・バーステイン Danny Burstein(シュルツ役)とリンダ・エモンド Linda Emond(シュナイダー夫人役)が候補になっていて、どちらも好演。残念ながら、サリー・ボウルズ役のミシェル・ウィリアムズ Michelle Williams は候補にならなかったが、個人的にはナターシャ・リチャードソンと甲乙付けがたい出来だと思う。
 98年版登場時の衝撃は、さすがにないが、依然観るべきところの多い舞台。来年1月4日までの限定公演(予定)だが、観るなら、お早めに。

 『ブロードウェイと銃弾』は、ウディ・アレン Woody Allen 監督(脚本はダグラス・マクグラス Douglas McGrath と共同)の同名映画(1994年)の舞台ミュージカル化で、今回の脚本はアレンが単独で書いている。
 演出・振付はスーザン・ストロマン Susan Stroman。楽曲は、アレンお得意の(彼がジャズ・クラリネット吹きであることは、ご承知の通り)古いスウィング・ジャズ。と来れば、ノスタルジックながらもダイナミックなダンスが続々登場する楽しい舞台になることは必定。実際その通りで、オーソドックスなダンス・ミュージカル好きなら、かなり満足出来るはず。展開もストロマンらしくスピーディで、工夫を凝らした装置による転換も鮮やか(とはいえ、観た日が正式オープン2週間前のプレヴュー中だったこともあり、装置の不調で2度、転換の最中に中断したが)。
 役者も、大女優役のマリン・メイズィ Marin Mazzie は代役(ジャネット・ディッキンソン Janet Dickinson)で観られなかったものの、ブルックス・アシュマンスカス Brooks Ashmanskas、カレン・ジエンバ Karen Ziemba はじめコメディが(も?)達者な実力派が揃っている(あえて言えば、狂言回し的役割の劇作家役ザック・ブラフ Zach Braff が吸引力という点で、やや弱いか)。
 しかしながら、どことなく不完全燃焼感が残ったのは、全てが、あまりにも定石通りだからか。いずれにしても、装置の件も含め、再見の予定。

 『もしも/あの時』は、『レント RENT』のキャスト(イディナ・メンゼル Idina Menzel、アンソニー・ラップ Anthony Rapp)と『ネクスト・トゥ・ノーマル(正常の隣) NEXT TO NORMAL』の作家陣(脚本・作詞/ブライアン・ヨーキー Brian Yorkey、作曲/トム・キット Tom Kitt、装置/マーク・ウェンドランド Mark Wendland)、そして両作の演出家(マイケル・グリーフ Michael Greif)が組んだ新作。この『レント』『ネクスト・トゥ・ノーマル』には、オフから登場して好評価を得た後、オンでトニー賞を得て興行的にも成功した、という共通点がある(日本では、どちらもシアター・クリエで上演された、という共通点もある)。今回の舞台にもオフ的な斬新な感覚があり、語り口は必ずしも平易ではない。その辺が前2作同様にウケるのかどうか、が興行的には岐路だろうが、個人的には、そこが面白かった。
 とはいえ、“時に人生は何気ない判断で人生は大きく変わっていく、かも”という、タイトルにも表われた、やや哲学的な色合いのテーマを、恋愛+マンハッタン都市開発の是非という問題に絡めた内容は、凝った表現と相まって、僕の英語力では十全には理解しがたいものだったと告白しておこう(笑)。ま、ざっくり言えば(笑)、現代のマンハッタンに住む若者たちのある種の青春群像劇。もっとも、彼らは、『レント』の登場人物たちほど貧しくはなく、年齢もやや高いが。……といった印象(メンゼルとラップの役柄の関係が『レント』のモーリーンとマークに似ていたりするのは、やはり狙いなのだろうか)。時間があれば再見したいが、どこまで続くか。
 メンゼルは当然のことながら完全にスター扱いで、それに応える好演だが、モーリーン→エルファバ(『ウィキッド WICKED』)→エルサ(映画『アナと雪の女王 FROZEN』)と、ことに楽曲に関しては“歌い上げ”のイメージが固定化していく傾向にあるのが個人的には気になっていて、今回それを打破してくれることを期待したが、結果は微妙(あくまで、こんな個人的な期待ですので、あしからず)。
 役者では他に、メンゼルの親友役でラ・シャンズ LaChanze、メンゼルの上司的役でジェリー・ディクソン Jerry Dixon と、『ワンス・オン・ディス・アイランド ONCE ON THIS ISLAND』のオリジナル・キャストが揃って登場したのがうれしい。

 『ヴァイオレット』は、ドリス・ベッツ Doris Betts の短編小説『THE UGLIEST PILGRIM』を原作に、作曲/ジニーン・テソーリ Jeanine Tesori(『キャロライン、あるいはチェンジ CAROLINE, OR CHANGE』)、作詞・脚本/ブライアン・クロウリィ Brian Crawley で舞台ミュージカル化、1997年春にオフのプレイライツ・ホライズンズで1か月弱上演されている(演出/スーザン・H・シュルマン Susan H. Schulman、振付/キャスリーン・マーシャル Kathleen Marshall)。今回の舞台(演出/リー・シルヴァーマン Leigh Silverman、振付/ジェフリー・ペイジ Jeffrey Page)は、シティ・センターの短期間上演“アンコールズ!”のオフ・シリーズからブロードウェイへと移ってきた(初演も“アンコールズ!”版も未見)。という経緯からもわかる通り、セットもブロードウェイ作品としては簡易で、1幕間ものの(ある意味)小品だが、生命力に溢れたドラマで、楽曲も素晴らしい。製作はラウンダバウト劇場。
 アメリカで1964年と言えば、7月に公民権法が成立した年。そんな変動の年に、若い女性ヴァイオレット(サットン・フォスター Sutton Foster)が、バスでノース・キャロライナからオクラホマのタルサに向かう。で、これまた、ざっくり言うと(笑)、子供の頃に父によって傷を負い、頑なな心を持つに到ったヴァイオレットが、そのバスの旅で2人の若い兵士(白人と黒人)に出会い、人生観を変えていく、という話。TV宣教師も登場して、キリスト教の問題も物語に深く関わってくる辺り、アメリカ南部ならではなところもあるのだろう。
 もちろん楽曲にも“アメリカ南部”が強く反映していて、カントリー、ゴスペル色が濃く、カントリーのギター・バンドに弦を絡めた編成によるサウンドは滋味豊か(音楽監督/マイケル・ラフター Michael Rafter)。ダンスも、さりげないが的確で、独特の磁場を生み出す。
 サットン・フォスターは、2度目のトニー賞を得た前作『エニシング・ゴーズ ANYTHING GOES』とは打って変わって、ややエキセントリックな、陰のある、と同時に肯定的な力も秘めた60年代の若い女性を見事に演じて素晴らしい。
 8月10日までの限定公演(予定)。

 以上、第1次アップでした。

(6/9/2014)

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