Musicals PV on the billboard @ Duffy Square 3/23/2013

[ゆけむり通信Vol.106]

3/19-3/24/2013


  • 3月19日20:00
    『マチルダ MATILDA The Musical』
    SHUBERT THEATRE 225 West 44ht Street
  • 3月20日14:00
    『キンキー・ブーツ KINKY BOOTS』
    AL HIRSCHFELD THEATRE 302 West 45th Street
  • 3月20日19:00
    『モータウン MOTOWN The Musical』
    LUNT-FONTANNE THEATRE 205 West 46th Street
  • 3月21日19:00
    『シンデレラ CINDERELLA』
    BROADWAT THEATRE 1681 Broadway
  • 3月22日13:00
    『バニキュラ BUNNICULA』
    DR2 THEATRE 103 East 15th Street
  • 3月22日20:00
    『ハンズ・オン・ア・ハードボディ HANDS ON A HARDBODY』
    BROOKS ATKINSON THEATRE 256 West 47th Street
  • 3月23日14:00
    『ラスト・ファイヴ・イヤーズ THE LAST FIVE YEARS』
    SECOND STAGE THEATRE 305 West 43rd Street
  • 3月23日20:00
    『パッション PASSION』
    CLASSIC STAGE COMPANY 136 East 13th Street
  • 3月24日15:00
    『ドニーブルック! DONNYBROOK!』
    THE IRISH REPERTORY THEATRE 132 West 22nd Street
  • 3月24日19:30
    『ピピン PIPPIN』
    MUSIC BOX THEATRE 239 West 45th Street
* * * * * * * * * *

 トニー賞の締め切りを2か月後に控えて“春”の新作ミュージカルがほぼ出揃った3月のブロードウェイ。もっとも、気候的には完全に冬だったが……。
 4か月ぶりのニューヨークだったこともあり、スケジュールは渡米前からビッシリ埋まる。シティ・センター“アンコールズ!”の『鳥だ、飛行機だ、スーパーマンだ IT'S A BIRD, IT'S A PLANE, IT'S SUPERMAN』他、いくつかの舞台は諦めざるを得なかったのは残念。

 まずは、オンの新作を観た順に。大半がプレヴュー中。

 『マチルダ』は、昨年のオリヴィエ賞で作品賞はじめ7部門の受賞を果たしたロンドン産。「マチルダはちいさな大天才」と題した邦訳も出版されているロアルド・ダール Roald Dahl の小説が原作で、96年にアメリカで映画化もされているようだ。
 文学好きの天才少女が、物欲の権化のような両親に理解されないばかりか愛情も注がれず、入った学校にはスパルタを絵に描いたような怪物校長(女性)がいて、息苦しい人生を強いられている。理解してくれるのは女教師と図書館の司書だけ。その女教師とマチルダの交流がドラマの中心。
 ……ではあるが、舞台の前面に出てくるのは校長や両親のエキセントリックさで、マチルダの級友たちも“ねじれ”ている感じが強い(それらがコミック的な強調表現として出てくるので、一層際立つ)。まあ、その奇妙さが現実世界の反映だということなのだろう。いずれにしても、舞台の印象は全体にせかせかしていて、テンポがいいと言うより忙しい。それでも、最終的にマチルダと女教師がお互いを救いあうことになって、よかったよかった、ということにはなるのだが。
 その辺のイギリス的な(のか?)毒に、個人的に、やや食傷したところがあるのは事実。あとはお好みで(笑)。

 『キンキー・ブーツ』が、いい出来。2005年の同名イギリス映画(未見)の舞台ミュージカル化で、その映画も実話を元にしているという。楽曲をシンディ・ローパー Cyndi Lauper が書いているのが話題。脚本はハーヴェイ・ファイアスタイン Harvey Fierstein。
 社長だった父の突然の死でサザンプトンの伝統的な紳士靴工場を継ぐことになった白人の若者と、マッチョな父に育てられながらもドラッグ・クイーンとしてロンドンのクラブのステージに立つようになった黒人の若者。2人が偶然出会い、力を合わせて傾きかけた靴工場を再建することになる。……という設定は、ちょっと『フル・モンティ FULL MONTY』と気分が似ていなくもない。工場で働く市井の人々やゲイに対する温かい視線がドラマの中心だし、マチズモ批判が根にあるのも同じ(その辺が、ローパーとファイアスタインが組んだ由縁だろう)。父と息子の関係が背景にあるのも似ている。登場人物たちが時に傷つけ合いながらも互いの垣根をを乗り越えて手を結び困難に打ち克つ様は、定石とはいえグッと来る。
 ローバーの楽曲は快調で、ドラッグ・クイーンたちのパフォーマンスを含むダンス・ナンバーもいい(演出・振付/ジェリー・ミッチェル Jerry Mitchell)。ドラッグ・クイーン役のビリー・ポーター Bliiy Porter はトニー賞候補確実。アナリー・アシュフォード Annaleigh Ashford のコメディエンヌぶりも高く評価されるだろう。オススメです。

 『モータウン』は、モータウン・レコーズの、と言うより、その創設者ベリー・ゴーディ Berry Gordy の自伝的ミュージカル。脚本は本人(少なくとも名義上は)。ちなみに、ゴーディはこの舞台の共同プロデューサーでもある。だからだと思うが、けっこう綺麗事になっていて、そこが、同様に本人たちの関わった実録ものでありながら汚点も描いた『ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS』と違うところ。結果、話としてはつまらなくなっている。あくまでフィクションで、モータウンのモの字も出てこないものの、明らかにモータウンを想起させる『ドリームガールズ DREAMGIRLS』のダーティな印象が、映画化であれだけ広まったことを意識しての汚名挽回、という意図もあるのかもしれないが。
 そんなこんなで、見どころは往年のヒット曲のそっくりショウ的場面にならざるを得ないところが、まず弱い。
 では、そっくりショウとしてはどうか、と言うと、似ている部分もあれば、そうでもない部分もある、といったところ。まあ、客の大半は往年のヒット曲集で満足している様子なので、とやかく言うことではないのかもしれないが。
 ちなみに、ざっくりした構成は、モータウン25周年記念コンサートで始まって、回想になって、再び25周年記念コンサートに戻る、というものだが、マイケル・ジャクソンのムーン・ウォークは登場しない。おそらく、難しい権利の問題があるのだろう。

 『シンデレラ』は、ロジャーズ&ハマースタイン Richard Rogers & Oscar Hammerstein が書き下ろした1957年TV版の舞台化。ブロードウェイ登場は初だが、脚本が大きく改変されており、明らかに別ヴァージョンになっている。新たな脚本のダグラス・カーター・ビーン Douglas Carter Beane は『ザナドゥ XANADU』『リシストラータ・ジョーンズ LYSISTRATA JONES』を書いた人。パロディ要素が強いのは彼の持ち味だろう。
 ここでのシンデレラは自分の力で運命を切り拓く積極派。王子は国政に無知な、けっこう能天気な存在。国王夫妻は登場せず、いわゆる大臣的側近が悪役で、政治を私物化。そのため、市民の間には改革への空気も生まれつつあったりする。ちなみに、2人して意地悪であるはずのシンデレラの姉たちだが、ここでは上の姉は気弱な善人で、シンデレラの味方になる。
 というわけで、物語の興味は、シンデレラの運命もさることながら、側近の悪事を覆すことが出来るのか、という点にも向かう。キャラクターが多彩だし、そういう意味では、従来の話よりは面白い。
 が、個人的に最大の見どころだったのは、歌舞伎の早替りに倣ったかとも思われる、ロウテクな変身シーン。ほぼ人力のみで、観客の目の前で、馬車を仕立て、御者や従者を作り、シンデレラの衣装や髪型を変えてしまう。華麗ではないが、舞台ならではの楽しさに満ちていて、一見の価値あり。
 『ボニーとクライド BONNIE & CLYDE』のボニー役ローラ・オスネス Laura Osnes がシンデレラ。魔法使いは『ライト・イン・ザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』でトニー賞を獲ったヴィクトリア・クラーク Victoria Clark。

 『ハンズ・オン・ア・ハードボディ』は、観劇前日の3月21日に正式オープンした作品。が、結局ひと月もたず、4月13日で幕を下ろした。
 ニッサンのディーラーによる一風変わったコンテストの話で、これも元になる実話(ドキュメンタリー映画)があるらしい。店頭に置かれたトラック(ハードボディ)に最後まで手(ハンズ)を触れていられた者が、そのトラックを手に入れることが出来る、というルールで、現在のチャンピオン(という人がいるのも面白い)を含め老若男女様々な境遇の人々が集まり、時間の経過と共に、それぞれの人生が炙り出されていく。言ってみれば、舞台『スティール・ピア STEEL PIER』や映画『ひとりぼっちの青春 THEY SHOOT HORSES, DON'T THEY?』で描かれた大恐慌時代の“マラソン・ダンス”の現代的変奏。“あの頃”に、今のアメリカの気分は似ている、ということか。脚本のダク・ライト Doug Wright は『グレイ・ガーデンズ GREY GARDENS』を書いた人。なるほど、アメリカの暗部を苦いユーモアを交えながら描く筆致が共通している。
 キース・キャラダイン Keith Carradine、ハンター・フォスター Hunter Foster 他、渋い実力派が顔を揃えて着実な演技を見せ、トレイ・アナスタシオ Trey Anastasio(作曲)とアマンダ・グリーン Amanda Green(作曲・作詞)による楽曲もよく、個人的には好感を持ったが、地味な題材に加え、セットも変化に乏しく、オフでならともかく今のオンでこれを当てるのは難しいと思った。その予想が残念ながら当たった形。

 今回観た中で最も遅くに登場した作品で、観劇前日にプレヴューを開始したばかりだったのが、リヴァイヴァル版『ピピン』。初演は72年で、ロングランは4年と8か月。オンでのリヴァイヴァルは、それ以来となる。舞台版をヴィデオで観たことはあるものの、実際に舞台で観るのは、これが初めて。
 まず感じたのは、『シカゴ CHICAGO』との類似。いずれも初演は演出・振付がボブ・フォッシー Bob Fosse で、『シカゴ』の初演開幕は『ピピン』がロングラン中の75年。テイストが似ていても不思議はない。具体的には、幕開きの観客に向けてのナレーションとか、サーカス(『ピピン』)やヴォードヴィル(『シカゴ』)の世界を外枠として借りているところとか、舞台の世界観とでもいうべき部分が似ている。おまけに、僕の観ているリヴァイヴァル版の振付家は、両作ともフォッシーの弟子筋で、『シカゴ』はもちろんアン・ラインキング Ann Reinking。『ピピン』のチェット・ウォーカー Chet Walker は、ダンサーとしてフォッシー作品に出演してきた後、『フォッシー FOSSE』で振付を手がけた人。どちらも振付がフォッシー流儀の再現だろうことを考えても、似ている要素は多い。
 で、比較しての結論は(と言っても、どちらもリヴァイヴァル版しか観ていないので、その比較だが)、『ピピン』は脚本が弱く、特に第2幕にそれが顕著になる。第1幕は、とにかく、特異な人物のエピソードが次々に登場、様々な手法を駆使して展開していくので、視覚的に(聴覚的にも)楽しく、一気に観てしまうが、一転シリアスになる第2幕は、脚本の弱さが露呈する。まあ、この第2幕の“祭の後”的な空気が72年当時の“気分”だったのかもしれないが。そう言えば、『ピピン』の初演版は、開幕直後はチケットの売行きも鈍かったが、当時としては珍しいPVをTVで流す宣伝をして当たった、とフォッシーの追悼番組だかで言っていた覚えがある。イマイチな感触は当時からあったのかも。
 ちなみに、そのPVで見事なフォッシー・ダンスを見せていたのは、狂言回し役(“Leading player”と呼ばれている)のベン・ヴェリーン Ben Vereen だが、今回その役を演じるのは、英米の『シスター・アクト SISTER ACT』で名を馳せたパティーナ・ミラー Patina Miller。体の動きがシャープで、素晴らしい。他に、アンドレア・マーティン Andrea Martin、テレンス・マン Terrence Mann、シャーロット・ダンボワーズ Charlotte d'Amboise といった曲者たちが(特に第1幕を)盛り上げる。彼らの芸を観るためにチケットを買う価値はある。ピピン役のマシュー・ジェイムズ・トーマス Matthew James Thomas は『スパイダー・マン SPIDER-MAN:TURN OFF THE DARK』の元祖スパイダー・マン。

 以上、第1次アップ。
 オフの作品については、追って。

(4/30/2013)

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