ST. JAMES THEATRE after LEAP OF FAITH's gone 6/1/2012

[ゆけむり通信Vol.102]

5/29-6/3/2012


  • 5月29日19:00
    『ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
    IMPERIAL THEATRE 249 West 45th Street
  • 5月30日14:00
    『男一人、ご主人二人 ONE MAN, TWO GUVNORS』
    MUSIC BOX THEATRE 239 West 45th Street
  • 5月30日20:00
    『エニシング・ゴーズ ANYTHING GOES』
    STEPHEN SONDHEIM THEATRE 124 West 43rd Street
  • 5月31日13:30
    『ワンス・オン・ディス・アイランド ONCE ON THIS ISLAND』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 5月31日20:30
    『タカラヅカ!!! TAKARAZUKA!!!』
    HERE 145 6th Avenue
  • 6月 1日20:00
    『ワンス ONCE』
    BERNARD B. JACOBS THEATRE 242 West 45th Street
  • 6月 2日14:00
    『ピーターと星の守護団 PETER AND THE STARCATCHER』
    BROOKS ATKINSON THEATRE 256 West 47th Street
  • 6月 2日20:00
    『クリスティン・チェナウェス KRISTIN CHENOWETH』
    CITY CENTER 55th Street between 6th & 7th Avenue
  • 6月 3日15:00
    『着地 THE LANDING』
    VINEYARD THEATRE 108 Eest 15th Street
  • 6月 3日20:00
    『二月の家 FEBRUARY HOUSE』
    MARTINSON HALL at PUBLIC THEATER 425 Lafayette Street
* * * * * * * * * *

 前回渡米の帰国直後に、ほとんど何の前触れもなく『奇跡を呼ぶ男 LEAP OF FAITH』という作品が始まることになり(4月 3日プレヴュー開始)、それを観るために改めて飛ぶことにしたのが、今回の 5月末から 6月初めの日程。ところが、その『奇跡を呼ぶ男』は、こちらが着く前に(5月 13日)幕を下ろしてしまった(チケットを予約した時にすごくいい席が獲れたんで危ないなとは思ったが、トニー賞の、しかも作品賞候補に挙がりながら発表を待たずに閉めるとは思わなかった)。
 そんなわけで、前回書いた通り、今回の主な目的は“トニー賞予想を確認すること”になった。が、これが存外楽しかった。と言うのも、そのトニー賞の楽曲賞候補になったプレイ 2作がどちらも面白かったからだ。

 では、まず、そのブロードウェイの新作プレイ 2作から。

 『男一人、ご主人二人』は、ロンドン(国立劇場 National Theatre of Great Britain)からやって来た、ちょっと下世話なコメディ。主要な役者はロンドンと同じのようだ。
 元は、古いイタリア喜劇(カルロ・ゴルドーニ Carlo Goldoni の 1743年作『アルレッキーノ――二人の主人を一度にもつと ARLECCHINO SERVITORE DI DUE PADRONI』)だそうで、それを 1963年のイギリスに移植して作り変えたとのこと(脚本リチャード・ビーン Richard Bean)。スキッフル・バンドをクビになった主人公が、窮乏のあまり、さる若い男(実はその妹の変装)の用心棒になり、同時に、別の男の使いっ走りにもなるのだが、その男は、先の若い男に成りすました妹が兄の仇と狙う相手であり、実は彼女の元恋人でもあった。そんなわけで主人公は周りを巻き込みつつ右往左往する、という入り組んだ話は、いかにもな古典喜劇。
 そうした、いかにもな設定の上で繰り広げられるのがスラップスティックな芸で、その大半を担うのが、主役の“小太り”ジェイムズ・コーデン James Corden。汗をかきかき、走り回り、転げ回り、口からいろいろと吐き出して回り、客をいじって回る。負けじと沸かせるのがトム・エドゥン Tom Edden で、第 2幕の衝撃の階段落ちで一気に場をさらう。この 2人、それぞれトニー賞でプレイの主演男優賞・助演男優賞の候補になったが、むべなるかな、だ(コーデンが受賞)。その他、達者な役者たちについて書くときりがない。
 基本的に、この作品の音楽は 4人組のバンドが担当し、幕開きの前や場面転換時に演奏される。そこに芝居とは別に役者が歌や楽器演奏でちょこっと絡むこともある。面白いのは、バンドが、第 1幕ではスキッフル・バンド然(ビートルズらの登場以前にイギリスで流行った、ジャグ・バンド的楽器編成のバンドで、アコースティックな印象)として登場し、第 2幕では明らかにビートルズ的編成になっているところ。つまり、そういう時代の変化で主人公はバンドをクビになった、ということのようだ。で、これまたトニー賞の候補になった楽曲(作曲・作詞グラント・オールディング Grant Olding)は、今書いたようなバンド編成に則って、前半がスキッフル風のやや古い時代の香りのするもの、後半が 60年代ビート・バンド風のものになっていて、巧みな演奏と相まって、かなり楽しい。

 『ピーターと星の守護団』は、同名小説(デイヴ・バリー&リドリー・ピアーソン Dave Barry and Ridley Pearson 著)の舞台化で、オフ(オフ・オフか?)のニューヨーク・シアター・ワークショップで上演された後にブロードウェイ入りしたようだ。例のピーター・パン話の前日譚で、なぜピーターがネヴァランド(“ないない島”ですな)に住むことになったか、が明かされる。そういう意味では、話の切り口は『ウィキッド WICKED』に似ていなくもない。雰囲気はまるで違うが。
 演出は即興劇的で、 12人の役者が、担当の主要な役とは別に様々な役や舞台装置(例えば「扉」や「窓枠」)に扮して“当意即妙”な演技を次々に見せていく。このあたりの感触は『三十九夜 THE 39 STEPS』に近い。その流れで役者たちは、いかにも作り物めいた感じでミュージカルのように歌い、絶妙のコーラスを聴かせる。そんなわけで、トニー賞の楽曲賞候補(作曲ウェイン・バーカー Wayne Barker、作詞リック・エリス Rick Elice)になったわけだが、むべなるかな。演奏がドラムス&パーカッションとキーボードの 2人というシンプルさも、楽曲や舞台の内容と合っている。ちなみに、効果音も彼ら演奏家がジャストなタイミングで発しているのに感心した。
 役者たちは、それぞれ個性を発揮して楽しかったが、中でも、結局トニー賞助演男優賞(プレイ)を受賞することになるクリスチャン・ボール Christian Borle が、鼻の下に靴墨(?)を塗って、まるでグラウチョ・マルクス Groucho Marx が乗り移ったかのように傍若無人の(?)活躍を見せて素晴らしい。

 続いて、再見のブロードウェイの新作ミュージカル 2作。

 『ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット』については、前回、 [主演のマシュー・ブロデリック Matthew Broderick が、いかにプレヴュー開始間もないとはいえ踊れなさすぎで、なんだかなあ、な感じ。キャスリーン・マーシャル Kathleen Marshall の腕をもってしても、いかんともしがたいでしょう。その辺、改善されたのか。再度の渡米を前に、観直すかどうか思案中。] と書いたが、結局再見。
 マシューの動きは多少は改善されていたが、全体の印象は変わらずで、今ひとつピリッとしない。トニー賞主演女優賞に推されたものの、ケリー・オハラ Kelli O'Hara もコメディエンヌの動きではない。という役者の向き不向きの問題もあるが、最終的には、前回書いたように、やはり脚本の問題だろう。
 トニー賞のダブル受賞となった脇役の奮闘で、どこまで保たせられるか、微妙なところかも。

 前回、代役で観られなかったトニー賞候補主演女優クリスティン・ミリオッティ Cristin Milioti を観るために……というのを口実に、『ワンス』を再見。
 いやあ、素晴らしい。小品ですけどね(おそらく、このオン公演を見据えてのことだと思うが、元々は昨年の 11月半ばから 今年 1月半ばにかけて、『ピーターと星の守護団』同様ニューヨーク・シアター・ワークショップで上演されていた。残念ながら、その時はチケットを入手出来なかった)。でも、ブロードウェイの舞台でも立派に映える。
 でもって、クリスティン・ミリオッティは素晴らしかった。当世風に言えば若干“不思議ちゃん”の入ったキャラクターを演じて不自然さがなく、魅力的に見せている。加えて、抑えた悲しみも静かに表出させ、じんわり感動させる。残念ながらトニー賞は逃しましたがね。
 ともあれ、興味のある方には早めの観劇をオススメします。この手の舞台は旬が短い気がするので。

 残りは観た順に、 3度目のブロードウェイ作品、ニュージャージーにあるペイパーミル・プレイハウスのリヴァイヴァル、微妙にミュージカルではないオフ・オフのプレイ、シティ・センターのコンサート、そして、オフの期間限定新作ミュージカル 2作。

 『エニシング・ゴーズ』をまたまた観たのは、サットン・フォスター Sutton Foster の降りた後を確かめたかったのもあるが、水曜夜、他に観たいものがなかった、という消極的な理由もある。と言うのも、最近、オフの舞台の公演日が木曜から日曜にかけてというものが多くなっていて、今回も、観たいが水曜夜はやっていないという演目が複数あった。残念。
 さて、フォスターに代わってリノ・スウィーニィを務めるのはステファニー・J・ブロック Stephanie J. Block。ブロードウェイでもいろいろ出ている人だが、個人的には『ボーイ・フロム・オズ THE BOY FROM OZ』のライザ・ミネリ Liza Minnelli 役が印象深い。というわけで、もちろん(高いレヴェルで)歌って踊れるのだが、フォスターのあの長い手足が目に焼きついているので、ダンス・シーンでは微妙に違和感がある。やはり、フォスターにとっては、あれが武器なのだな、と改めて思ったしだい。
 それを除けば今回も楽しく観ました。

 今回のペイパーミル・プレイハウスのリヴァイヴァルは『ワンス・オン・ディス・アイランド』。ブロードウェイ公演を観たのが…… 1991年夏、もう 21年前か(!)。グラシエラ・ダニエル Graciela Daniele(演出・振付)とラシャンズ LaChanze(主演女優)の名前が心に刻み込まれた印象的な舞台だった。その時の感想はこちら
 今回の演出は『イン・ザ・ハイツ IN THE HEIGHTS』のトーマス・カイル Thomas Kail。劇中劇としてスピーディに展開していく印象は初演と変わらない(もちろん、初演の詳細は記憶のはるかかなたで、幕間なしの 1幕ものだということも忘れていた)が、ペイパーミルの舞台が横に広いので(おまけに客席も全体にゆったりしているので)、この作品にとって重要な親密な空気がやや薄れたかも。とはいえ、よくまとまったプロダクションではあった。
 ラシャンズのやった役はアメリカン・アイドル出身のサイーシャ・メルカド Syesha Mercado。装置は、前述の『ピーターと星の守護団』でも即興劇的な雰囲気を生み出すのに貢献していたダニエル・ウォーリ Donyale Werle。

 『タカラヅカ!!!』は、演劇組織クラブド・サム Clubbed Thumb がオフ・オフの劇場で開催した“サマーワークス2012 Summerworks 2012”というイヴェントの演目の 1つ。もちろん、題材に惹かれて観に行った。ショウ場面で歌が歌われはするが、基本的にはストレート・プレイだ。
 宝塚歌劇の男役トップの引退前後を描いているのだが、主人公が、尊敬していた先輩の男役トップの霊に取り憑かれるというオカルティックな話の展開が、意外にもハマって全体を面白くした。狂言回しに日系アメリカ人男性の映像ドキュメンタリー作家(BBCに派遣されたと言っているのにアメリカ人だったと思う)を据えたのも、日系アメリカ人の演じる日本人のドラマに一捻り加えて視点を重層的にする、という意味で功を奏していた。
 書いたのが中国系アメリカ人(スーザン・スーン・ヒー・スタントン Susan Soon He Stanton)だからか、細部に誤解がある気がするのだが、設定が 1975年という僕の知らない時代の宝塚なので、断定は出来ない。だが、まあ、前述したようにオカルティックな内容を含むので、むしろ、それもひっくるめて、ある種のファンタジーとして観ればいいのかも。
 主演のジェニファ・イケダ Jennifer Ikeda の冷たい美しさが作品の雰囲気にピッタリだった。

 いつもはリヴァイヴァル・シリーズ“アンコールズ!”を観に行くシティ・センターに登場したのは、『クリスティン・チェナウェス』。あのクリスティン・チェナウェス Kristin Chenoweth をモデルにした実録物語、というわけではもちろんなく、彼女の 1回限りのコンサート。一応、ブロードウェイの出演作(プレイを除く)をみんな観ているので、ここはハズせないだろう、とチケットを獲った。
 実のところ、舞台を離れて彼女のソロ CDを聴いているとイマイチ魅力を感じなかったりするのだが、生で観ると俄然惹きつけられる。しかし、強いノドだなあ。
 面白かった趣向は、『ウィキッド』コーナーの 2曲。 1曲は「Populer」で、日本語を含む数ヶ国語で歌ったこと。もう 1つは、グリンダ(チェナウェス)がエルファバとデュオで歌う「For Good」で、エルファバ役を客席から募ったのだが、出てきた 15歳の少女のうまかったこと。アメリカン・アイドルを観ている気分だった。

 『着地』は、 3つの 1幕ものから成る“短編集”的な舞台で、それぞれ趣は違うが、いずれも近しい人間同士の愛情について描いている。 04年に長年の相棒フレッド・エブ Fred Ebb を失ったジョン・カンダー John Kander(作曲)が新たに若いグレッグ・ピアース Greg Pierce(脚本・作詞)と組んだ作品で、最初に 2人して舞台前に出てきて簡単な紹介をするのがうれしい。
 出演者は 4人だけ。知名度で言うと、カンダー&エブ作品『カーテンズ CURTAINS』でトニー賞主演男優賞を得たデイヴィッド・ハイド・ピアース David Hyde Pierce が目玉ということになるが、残る 3人(子役 1人)も実力派で、手触りの違う 3つの劇世界の中で均等の重さで渡り合い、絶妙の緊張感を生み出す。かと言って、堅苦しいわけではなく、面白い。演出はウォルター・ボビー Walter Bobbie。
 ヴァインヤード劇場の“Developmental Lab”と呼ばれる実験的なシリーズなので規模は小さいが、その分料金も安い。観光客を呼び込むことを想定しないこうした試みを、一線級のスタッフとキャストで続けていくことの意味は、とてつもなく大きいはず。羨ましい限りだ。

 『二月の家』は、 1940年から 1941年にかけてブルックリンに実在した“二月の家”と呼ばれた家に集ったアーティストたちのコミュニティの話。ホンモノのアンティークに見える家具や装飾品が時代の気分を醸し出す。
 キナ臭くなってきたヨーロッパから半ば亡命してきた人たちを受け入れる形で開放された別荘に、様々な才能を持った人々が希望を持って集い、やがて失望して去っていく。その背景にはアメリカ国内の空気の変化もあった。簡単に言うと、そういう話。自由な機運が急速に失われていく中で、手を組んで最後の砦を守りたい気持ちと人間関係の軋轢に耐えかねて離れたい気持ちとの間で揺れる、個性的な人々の物語。ある意味バック・ステージものと言ってもいい内容で、興味深く観た。集った人の中にジプシー・ローズ・リー Gypsy Rose Lee がいたことからミュージカル化を発想したのではないか、と素人は考えたりするが、もちろん何の確証もない(笑)。
 脚本セス・ボックリー Seth Bockley。作曲・作詞・編曲は自身シンガー・ソングライターとしてアルバムを出してもいるガブリエル・カハネ Gabriel Kahane。演出デイヴィス・マッカラム Davis McCallum。
 ちなみに、『ワンス』の主演女優クリスティン・ミリオッティが仲間と一緒に観に来ていた。「あなたの演技を観るためだけに日本からやって来ました」と言いに行こうかと思ったが、もちろん、それは控えた(笑)。

 以上。

 次回の渡米は 7月下旬の予定。秋から夏に移ったニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル New York Musical Theater Festival +ブロードウェイの新作 1本が目的です。

(7/2/2012)

Copyright ©2012 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next

Let's go to BROADWAY

How to get TICKETS

[TITLE INDEX]


[HOME]