Duffy Square 3/29/2012

[ゆけむり通信Vol.101]

3/27-4/1/2012


  • 3月27日20:00
    『虹の終わりに END OF THE RAINBOW』
    BELASCO THEATRE 111 West 44th Street
  • 3月28日14:00
    『ジーザス・クライスト・スーパースター JESUS CHRIST SUPERSTAR』
    NEIL SIMON THEATRE 250 West 52nd Street
  • 3月28日19:00
    『ニュージーズ NEWSIES』
    NEDERLANDER THEATRE 208 West 41st Street
  • 3月29日13:30
    『くたばれ!ヤンキース DAMN YANKEES』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 3月29日20:00
    『エヴィータ EVITA』
    MARQUIS THEATRE 1535 Broadway
  • 3月30日20:00
    『ゴースト GHOST:The Musical』
    LUNT-FONTANNE THEATRE 205 46th Street
  • 3月31日15:00
    『今。ここ。これ。 NOW. HERE. THIS.』
    VINEYARD THEATRE 108 East 15th Street
  • 3月31日20:00
    『ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
    IMPERIAL THEATRE 249 45th Street
  • 4月 1日15:00
    『ワンス ONCE』
    BERNARD B. JACOBS THEATRE 242 West 45th Street
  • 4月 1日20:00
    『パイプ・ドリーム PIPE DREAM』
    CITY CENTER 55th Street between 6th & 7th Avenue
* * * * * * * * * *

 ブロードウェイ春の新作ミュージカルが出揃った……はずで日程を組んだ 3月末のニューヨーク行き。ところが、ほとんど何の前触れもなく『奇跡を呼ぶ男 LEAP OF FAITH』という作品が、こちらの帰国直後(4月 3日プレヴュー開始)というタイミングで始まることになり、それを観るためにトニー賞直前の 5月末に改めて飛ぶことにしたら、こちらが着く前に幕を下ろすことになった……という話はトニー賞予想のところに書いた通りだが、ま、これは本来は次回のネタ(笑)。
 今回の主な目的は、なにはともあれブロードウェイ春の新作ミュージカル 6本。ところが、それら(『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ニュージーズ』『エヴィータ』『ゴースト』『ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット』『ワンス』)の内、 3本はすでに同じヴァージョンで観ているので、なんだか気分がパッとしない。しかも、『ワンス』以外は出来もイマイチで……。

 というわけで、まずはブロードウェイの新作ミュージカルから。観た順に。

 『ジーザス・クライスト・スーパースター』が 12年振りにブロードウェイに登場。
 前回(2000年)のブロードウェイ・リヴァイヴァル版、及び、その前の 96年ロンドン版も観ているが、そのいずれとも違うヴァージョンで、いずれよりもスッキリした仕上がり。ドラマに大仰さが少なく、テンポが速い。
 ところで、 2000年のブロードウェイ・リヴァイヴァル版の観劇記に、自分で読み返しても感心するほど面白いことを僕が書いているので、ぜひお読みいただきたいが(笑)、その中に次のような文章がある。
 [この作品の本質は、“聖書に題材を得た歌中心のレヴュー”というところにあって、それ以上でも以下でもない。したがって実際には、演出のポイントは、歌の魅力・勢いを削ぐことなくいかにテンポよく舞台を運ぶか、に尽きる。しかし時代の変化と共に、それだけでは魅力的に見えない作品に、すでになっている。そこで観客の興味を惹くべく、いろいろと演出にアイディアを盛り込んで、意味ありげに見せようとする。そして底の浅さが割れる。]
 なるほど(笑)。ちなみに、今回の演出はロック好きのデス・マカナフ Des McAnuff(『トミー The Who's TOMMY』他)。装置(ロバート・ブリル Robert Brill)は金属製の素材で、 2階相当部分に回廊、数箇所に垂直なハシゴ、移動式の幅2メートルほどの階段、というシンプルなもの。最後にジーザスが客席に向かって迫り出してくる大仕掛けがあるが、それも含めて、スムースに楽曲を聴かせる、言ってみれば“舞台上で繰り広げられるミュージック・ヴィデオ”的な印象。その意味では、僕の分析に沿った(笑)効果的な演出だが、いかんせん、この作品は、すでに時代に取り残されている感が強いので、迫ってくるものがない(だから、最後の大仕掛けなのかも)。
 観た回は、ウリの 1つであるユダ役のジョシュ・ヤング Josh Young(その後、トニー賞助演男優賞候補になった)に代役が立っていた。が、そういう可能性は高いと知って選んだ水曜昼公演なので、致し方あるまい。観直す機会もないだろう。

 昨年 10月にニュージャージーのペイパーミル・プレイハウスで観た『ニュージーズ』がブロードウェイ入り。
 キャストも装置その他も、ほとんどそのままなので、感想はその時と変わらない。 [ダンスはイキがいい。楽曲は、悪くないが、決め手に欠ける印象] ということ。
 その辺のことを考えながら観ていて気づいたのだが、この作品、ストーリーに重層性がない。ほぼ、善(新聞少年)と悪(新聞社主)との対立に終始して、その周辺のドラマに膨らみがないまま終わる。楽曲が決め手に欠けるのも、そうした重層的な表現がないからではないだろうか。別の言い方をすれば、キャラクターの掘り下げが浅い、ということか。

 『エヴィータ』も、 06年に観たロンドン版と同じ演出(マイケル・グランデイジ Michael Grandage)で、エヴィータ役者(エレナ・ロジャー Elena Roger)も同じ。というわけで、これまた感想は同じ。繰り返すと――。
 [この作品は「Don't Cry for Me Argentina」がなければ単なる駄作に終わったのではないか。発案したというティム・ライス Tim Rice(作詞)がエヴァ・ペロン(エヴィータ)のどこに魅力を感じてドラマ作りをしたのかも、まるでわからない。不思議な生き方をした人物だとは思うが、その根っこが全く見えてこないので感情移入出来ないのだ。舞台を三方から囲んだ建物のセットは効果的。エヴィータ役のエレナ・ロジャー Elena Roger は微妙にパティ・ルポン Patti LuPon に似て見えた。]
 実のところ、この 06年ロンドン版は 1年足らずで終わっているのだが、それがなぜ、 6年後にブロードウェイにやって来たのか。不思議。ともあれ、今回のウリは、チェ・ゲバラ役をリッキー・マーティン Ricky Martin が演じることだろう。マーティンは、僕の目には可もなく不可もなしに映ったが、さて、観光客がどう反応するか。とりあえず見もの。
 ちなみに、ペロン役は実力派のマイケル・サーヴェリス Michael Cerveris。

 『ゴースト』は、昨年夏にロンドンで観た。当然のように、これも同じヴァージョン。主演男優も同じだ(リチャード・フリーシュマン Richard Fleeshman)。
 ロンドン版の感想はこちら。要約すると、「映画版で特殊技術で見せていた部分を舞台上でどう表現するのかが最大の見どころで、それがミュージカル的興奮とは結びつかないものの、話の上では必然性があるので納得は出来る」、というところか。もっと短く要約すると、「ミュージカルとしてはもの足りないが、舞台エンターテインメントとしては、これでいいのかも」となる。
 今回、 [総じて悪くないが、映画に出てくる「Unchained Melody」以上に印象に残るものがない] オリジナル楽曲の中では、悪役の歌うウソのラヴ・ソングが比較的いい曲なことに気づいたが、それって、どうなんだろう。

 『ナイス・ワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット』は、成り立ちが『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』とよく似ている。すなわち、古い脚本素材(今回はガイ・ボルトン Guy Bolton & P・G・ウォードハウス P.G. Wodehouse)を元に新たな脚本を書き上げ、ガーシュウィン兄弟(George & Ira Gershwin)の楽曲を使って、ダンスたっぷりのミュージカル・コメディを作っている、ということ。しかしながら、『クレイジー・フォー・ユー』にあった新鮮さが、こちらには、まるでない。その原因の多くは脚本にあると思われる。
 新たな脚本を書いたのは、ジョー・ディピエトロ Joe DiPietro。僕の認識では、オフでヒットした『アイ・ラヴ・ユー、ユア・パーフェクト、ナウ・チェンジ I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE』で出てきた人で、その後、オンで『オール・シュック・アップ ALL SHOOK UP』を手がけたりしたが、抜群に面白かったのはオフの『悪魔の毒々モンスター THE TOXIC AVENGER』。いずれにしても、規模が小さめのパロディ色の濃い作品で本領を発揮する人で、正攻法のミュージカル・コメディの脚本には必ずしも向いていないのではないか。どうにも古臭さが先に立つ作品になっていた。
 それから、主演のマシュー・ブロデリック Matthew Broderick が、いかにプレヴュー開始間もないとはいえ踊れなさすぎで、なんだかなあ、な感じ。キャスリーン・マーシャル Kathleen Marshall の腕をもってしても、いかんともしがたいでしょう。その辺、改善されたのか。再度の渡米を前に、観直すかどうか思案中。

 『ワンス』は同名映画の舞台ミュージカル化(映画には日本公開時に「ダブリンの街角で」という副題が付いている)。今回観たブロードウェイ作品の中で最もグッと来たのが、これ。
 大筋は映画と同じだが、脚本は舞台版の方がはるかに細かく描き込まれていて、脇の人物たちもいきいきしている。そうしなければ、映像の魅力だけである程度観客を惹きつけられる映画と違って、舞台は成り立たないからなのだが、その膨らませた部分が吉と出た。
 もう 1つ、役者たちが全ての楽器を演奏しているのも、テーマに沿って大きな意味があり、舞台をより刺激的にした(客入れの時から舞台上で役者たちがパーティっぽく演奏しているのも雰囲気作りに寄与している)。
 ダブリンの街角で出会った男女(男はアイルランド人、女はチェコ人)が愛する音楽を通じて心を通わせる、という、何ということのない話だが、前述したように映画以上に周辺の人物たちにも場が与えられ、より広い意味での人と人とのつながりが描き出される。
 基本の舞台装置が、客席に向かって半円状に開いた、ダブリンのパブをイメージさせる壁だけ、というシンプルさもいい。
 トニー賞の候補になった振付(スティーヴン・ホゲット Steven Hoggett)は、いわゆる踊りではなく不思議な役者の動きで、プレイビルにも“ムーヴメント”とクレジットされているが、これが新鮮。
 もちろん楽曲も素晴らしい。
 必見。
 ちなみに、主演女優が代役(クリスティン・ミリオッティ Cristin Milioti →アンドレア・ゴス Andrea Goss)だったが、全く不満なし。ではあるが、これは次回、迷いなく観直す予定。

 残りは、観た順に、ブロードウェイの新作だが微妙にミュージカルではない 1作、ニュージャージーはペイパーミル・プレイハウスのリヴァイヴァル、オフの新作、そして恒例シティ・センターのリヴァイヴァル。

 ジュディ・ガーランド Judy Garland の最後の日々を描いた『虹の終わりに』は、オーストラリア産。一昨年秋に、今回ブロードウェイでも主演しているトレイシー・ベネット Tracie Bennett を擁してウエスト・エンドに登場。半年ほど上演した後、 11年夏から秋にかけてイギリス国内ツアーに出て(って訳で昨年のロンドン行きの際は観られなかった)、今年初めからミネアポリスでアメリカでのトライアウトを行なっていたらしい。
 経済的に追い込まれ、不調であってもステージに立つしかないが、精神的にも不安定なジュディは、若い頃から常習化しているクスリとアルコールに逃避しがち。最後の夫となるミッキーと、コンサート・ピアニストであるアンソニーは、それぞれのやり方で彼女を助けようとするが、嫉妬心もあって反目し合っている。その狭間でズルズルとダメになっていくジュディ。
 ロンドン産(オーストラリアはロンドンと同じ興行サーキット内なので準ロンドン産と言っていい)にありがちな“実録風そっくりショウ”の一種で、歌は劇中でガーランドの持ち歌として歌われることからして、ミュージカルと言うより“Play with Music”。なので、 94年にやはりロンドンからブロードウェイにやって来た『リトル・ヴォイス THE RISE AND FALL OF LITTLE VOICE』を思い出した。どちらも、ヒロインがガーランドそっくりに歌うし(てか、こっちはガーランド役だから当然だが)、雰囲気が陰惨だし。
 そもそも晩年(つっても亡くなった時は 47歳!)のガーランドは、伝記の類を読んでいても読み進むのがつらくなるほど悲惨。逆に言えば、この舞台は観客の“怖いもの観たさ”の上に成り立っているわけで、そういう意味では、第 2幕の“鬼気迫る”ライヴ・シーン(設定はロンドンのトーク・オブ・ザ・タウン Talk 0f The Town というナイトクラブ)はクライマックスの一つではある。が、ドラマの中心は、あくまで前述の男性 2人との葛藤であり、さらに言えば、最大の見どころは崩壊寸前のガーランドに成りきったトレイシー・ベネットの演技にある(トニー賞でプレイの主演女優賞候補になった)。付け加えておくと、悲惨な中にもガーランドの人としての魅力は感じられて、ユーモラスな部分もある。
 という訳で、ミュージカル的な面白さを期待して観てはいけない舞台。

 『今。ここ。これ。』は、『「タイトル・オブ・ショウ」 [title of show]』を作った 4人が再集結してのオフの新作ミュージカル。 4人とは、ハンター・ベル Hunter Bell(脚本)、スーザン・ブラックウェル Suzan Blackwell(脚本)、ヘイディ・ブリッケンスタッフ Heidi Blickenstaff、ジェフ・ボウェン Jeff Bowen(作曲・作詞)で、全員が本人役で出演する(前作の脚本はベル単独名義)。
 前作は、いかにしてミュージカルを作るかを描いた、言ってみれば“メタ・ミュージカル”だったが、今回は、宇宙を語りながら自分たちのプライヴェートな独白にもなるという、壮大でありながら身につまされる“人間存在について”のミュージカル。地球規模の環境問題と自分の親の死を看取る話とを一連の流れの中で当たり前のように表現していくこと自体が面白く、軽口とシリアスさとのバランスも絶妙で、おかしくもあり、せつなくもある。
 そして、なにより、こんな小規模であっても、真摯な姿勢とアイディアと技術さえあれば、こんなに深いミュージカルが作られるのだということに感動する。日本のミュージカルよ、奮起せよ。

 ニュージャージーのペイパーミル・プレイハウスで観たのが『くたばれ!ヤンキース』
 ブロードウェイ級の役者を複数配した、かなりオーソドックスな演出(マーク・S・ホービー Mark S. Hoebee)の手堅いリヴァイヴァルだったが、肝心のローラを演じたクリッシー・ホワイトヘッド Chryssie Whitehead が個人的にイマイチしっくり来ず、ノリきれなかった。もっとも、 94年 5月に観たブロードウェイ・リヴァイヴァル版のビビ・ニューワース Bebe Neuwirth のローラにもピンと来なかったヤツなので、もしかしたら、ローラにグウェン・ヴァードン Gwen Verdon の影を追い求めすぎているのかもしれない。
 ちなみにアップルゲイト役は、ブロードウェイ版ファントム役者として知られるハワード・マッギリン Howard McGillin。僕にとっては、いつまで経っても、パティ・ルポン Patti LuPone 版『エニシング・ゴーズ ANYTHING GOES』のビリーなのだが。

 シティ・センターのリヴァイヴァル・シリーズ“アンコールズ!”に登場したのは、『パイプ・ドリーム』。ロジャーズ=ハマースタイン Richard Rodgers & Oscar Hammerstein U 作品だが、必ずしも成功作ではないってことか。
 主人公が海洋生物学者って辺りが変わっているが、他のこのコンビの作品に比べると、さほど劇的ではないラヴ・ストーリーで、それが当時の観客には(ロジャーズ=ハマースタインにしては)“軽い”ってことでウケなかったのかも。逆に、ロジャーズ=ハマースタイン作品をこんな風に捉える僕にとっては悪くはない。が、うつらうつらしたのも事実(笑)。
 出演は、ウィル・チェイス Will Chase、ローラ・オズネス Laura Osnes(短命に終わった『ボニーとクライド BONNIE & CLYDE』のボニー役)、レズリー・アガムズ Leslie Uggams、トム・ウォパット Tom Wopat 他。チェイスの歌に合わせて、彼の分身として踊るチャーリー・サットン Charlie Sutton が印象的だった。

 以上。
 次回の渡米は本日午後(笑)。最初に書いたように、ホントは『奇跡を呼ぶ男』を観るための旅だったのだが、どうやら、トニー賞予想を確認するのが主な目的になりそう。

(5/29/2012)

Copyright ©2012 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next

Let's go to BROADWAY

How to get TICKETS

[TITLE INDEX]


[HOME]