『ALAN JAY LERNER PERFORMS HIS OWN SONGS』
Alan Jay Lerner
featuring Kaye Ballard & Billy Taylor
& Burton Lane (DRG)

幻の MGM ミュージカルのデモ曲登場

 クイズ。

Q. アラン・ジェイ・ラーナーの職業は?

  1. 作曲家
  2. 作詞家
  3. 作曲・作詞家

 ナメるなって感じっスか。もちろん正解は2。上のジャケットを見てもわかる通り、LYRICS BY LERNER 。
 では、次は?

Q. ラーナーの最大のヒット作『マイ・フェア・レディ MY FAIR LADY』(1956)の作曲者は?

 フレデリック・ロウ Frederick Loewe 。これも簡単?
 ラーナー&ロウのコンビは、この他に、『ブリガドーン BRIGADOON』(1947)『ペインチャー・ワゴン PAINT YOUR WAGON』(1951)『キャメロット CAMELOT』(1960)のブロードウェイ・ヒットを送り出している。
 さて、次。だんだんむずかしくなるぞ。

Q. ラーナーがブロードウェイで組んだ、ロウ以外の作曲者は?

 答は、年代順に、クルト・ヴァイル Kurt Weil (『ラヴ・ライフ LOVE LIFE』1948)、バートン・レイン(『晴れた日に永遠が見える ON A CLEAR DAY YOU CAN SEE FOREVER』1965)、アンドレ・プレヴィン Andre Previn (『ココ COCO』1969)の3人。

 ここで採り上げた CD 『ALAN JAY LERNER PERFORMS HIS OWN SONGS』はラーナーが作詞を手がけた(彼は脚本も書く)ミュージカル作品の楽曲を集めたものだが、オリジナル LP のリリースは 1956年。
 というわけで当然プレヴィンの楽曲は入っていない。しかし、レインとの楽曲は6曲も入っている。
 実は、ラーナー&レインの楽曲の部分は今回の CD 化にあたって新たに加えられたもので、オリジナルの LP とは無関係なのだが、しかし、その録音は 1951年とさらに古い。
 ここで問題です(笑)。

Q. 収録されているラーナー&レインの楽曲は何のミュージカルからのもの?

 『恋愛準決勝戦 ROYAL WEDDING』と答えた人は、かなりのミュージカル通。フレッド・アステア Fred Astaire 、ジェイン・パウエル Jane Powell によるこの MGM ミュージカル映画の楽曲はラーナー&レインが書いていて、製作はまさに 1951年。
 でも、残念ながらハズレ。
 正解は、『ハックルベリー・フィン HUCKLEBERRY FINN』。やはり MGM でアーサー・フリード Arthur Freed の製作によって作られるはずだった“幻のミュージカル”だ。
 これはカルトでしょう。少なくとも僕は知らなかった。この CD のライナーノーツを読むまで。

 とにかく、その『ハックルベリー・フィン』のための楽曲6曲(内5曲を作曲者バートン・レイン自身が弾き語りしている。1曲のみ不明の男性の歌唱)は、僕の英語読解力に間違いがなければ、この CD によって初めて世に出た。
 なぜ、この映画企画がボツになったかは書かれていないが、再録されているオリジナル LP のライナーノーツに書いてあるラーナーの近況の中には、 [『ハックルベリー・フィン』のミュージカル版(作曲はバートン・レイン)の脚本を完成させた] という記述がある。ということは、少なくとも5年近くは練られていたわけだ。
 うーむ。この辺の事情について情報をお持ちの方、ぜひお知らせください。

 ところで、そのライナーの少し後には、こうも書いてある。
 [彼の最新の劇場作品は、ジョージ・バーナード・ショウ George Bernard Shaw の『ピグマリオン PYGMALION』を下敷きにした『マイ・フェア・レディ』である。]
 オリジナル LP 部分には、空前のヒット作となるこの最新作の楽曲は収められていない。
 前述したロウ及びヴァイルと組んで書いたミュージカル4作から 13曲。そして、やはりロウとの作品だがヒットしなかった『ザ・デイ・ビフォア・スプリング THE DAY BEFORE SPRING』(1945)から1曲。計 14曲の収録曲の内、タイトル通りアラン・ジェイ・ラーナー自身が歌っているのは5曲。
 やや看板にいつわりありだが、残る9曲を歌っているケイ・バラード Kay Ballard と男性クワルテットの方がずっとうまりから、まあ文句はない(ケイ・バラードは、1954年のミュージカル『ゴールデン・アップル THE GOLDEN APPLE』に出演して「Lazy Afternoon」を歌って注目された人らしい)。

 とは言え、作者の自作自演というのはそれなりの味があるもので、楽しい。曲もいいし。
 他にもいろんな人の自作自演 CD が出ているので、また機会を改めて紹介します。

 最後に、アラン・ジェイ・ラーナーと言えば、この本を紹介しないわけにいかない。
 「ミュージカル物語 オッフェンバックから『キャッツ』まで THE MUSICAL THEATRE: A Celebration」千葉文夫・星優子・梅本淳子/訳(筑摩書房)。
 ミュージカルの生い立ちから現在(近く)までを綴った、言ってみれば歴史の本だが、書いたのが実作者だけに、面白さが違う。
 特に、作曲家、作詞家に対する洞察は鋭く、また愛情にもあふれていて、観たこともない作品のことでも読んでいるだけで感動する。舞台裏の様々なエピソードも興味深い。
 舞台や楽曲のタイトルを原題と照合できないのが難と言えば難だが、それは他のデータ的な本で補えばいいこと。訳もこなれていて読みやすい。
 ミュージカル好き必読の1冊です。

 蛇足の蛇足ですが、バートン・レインの姿を間近に観たことがある。
 93年の 5月にハロルド・クラーマンという小さな劇場で『晴れた日に永遠が見える』のリヴァイヴァルをやっていたのだが、僕の行った 29日がたまたま千秋楽で、舞台が終わった後プロデューサーがあいさつし、客席にいたレインを紹介したのだ。
 穏やかな表情の老人は静かに立ち上がり、観客の拍手に応えていた。
 あれが、公に姿を見せた最後だったんじゃないだろうか。

 次回こそ、『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』ブロードウェイ・オリジナル・キャスト盤(?)登場だあ!

(7/22/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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