『ランディ・ニューマンズ・ファウスト RANDY NEWMAN'S FAUST』
ランディ・ニューマン Randy Newman

新たな『バンド・ワゴン』か

 先日の東京フォーラムでのバート・バカラック Burt Bacharach のコンサートはとても楽しかったが、何よりうれしかったのは、僕を歓迎するように1曲目に「プロミセス・プロミセス Promises, Promises」を演奏してくれたことだ(って、すごい思い込み)。
 ご存知の通り、彼とハル・デイヴィッド Hal David のコンビが手がけた唯一の舞台ミュージカルのタイトル曲で、オープンは1968年の暮れ。ブロードウェイ、シューバート劇場で1281回のロングランを記録している。
 ミュージカル『プロミセス・プロミセス PROMISES,PROMISES』からは、タイトル曲の他に「恋よさよなら I'll Never Fall In Love Again」がヒットした。

 かつて――アーヴィング・バーリン Irving Berlin やジョージ・ガーシュウィン George Gershwin 、コール・ポーター Cole Porterやロジャース&ハーツ Richard Rodgers & Lorenz Hart らが“ガンガン”活躍していた時代は、花形作曲・作詞家はミュージカル作家であり、ヒット曲はミュージカルから生まれた。
 が、それも今は昔。ロックンロール登場以降、ヒット・チャートの世界ではミュージカルの楽曲はそれまでのようには振るわなくなり、人気作曲・作詞家はミュージカルと関わらなくなる。飛ぶ鳥を落とす勢いだった60年代後半のバカラック=デイヴィッドが、1回とは言えブロードウェイ・ミュージカルを手がけたということが、今となっては奇跡のようだ。
 それだけに、今年のシティ・センター“アンコールズ!”シリーズの限定公演版『プロミセス・プロミセス』は観たかったのだが……。

 ところが――。
 90年代も終わりに近くなって、バカラック&デイヴィッドとはニュアンスが違うが、それでも希代のヒット・メイカーであることには間違いないポール・サイモン Paul Simon が、書いてくれた。ミュージカル『ケイプマン THE CAPEMAN』
 12月1日、ついにプレヴュー開始。
 左の CD は、そのミュージカルで使われる楽曲を当のサイモンらが歌った、最近流行の、パブリシティを兼ねた“パイロット・アルバム”とでも言うべきもの(詳しい内容は、畏友・萩原健太のこちらのページで)。

 で、ですね、こないだは、Playbill On-Line に、ビリー・ジョエルがミュージカルを作る計画がある、なんていうニュースが載っていた。それも、既存の自作曲を元にしたものと書き下ろし曲によるものの2作品を作りたい、と言っているとか。

 アメリカン・ポップスのビッグ・ネームたちがミュージカルに関心を示すこういう動きって、実は彼らがヒット・チャートの世界で戦ってく自信を失いつつあるってことの反映かね、やっぱり――なんて話を萩原と交わしたりもしたのだが、“この人”の場合はちょっと違うような気がする。
 ランディ・ニューマン。
 なにしろ、ご本人もそうだが、おじさんたち(ライオネル、アルフレッド)が映画音楽の巨匠なのだから、ミュージカルまではあと一歩だったわけだ。

 『ランディ・ニューマンズ・ファウスト』の CD は、クレジットを見ると95年の製作だが、僕は確か昨年、レコード屋で見つけて買ったと思う。
 気になってはいたんですよ。他のミュージカルのプレイビルを読んでいると、出演者の紹介文に、『ランディ・ニューマンズ・ファウスト』に出た、とか書いてあることがときどきあったから。
 公演場所は、ラ・ホーヤ。ここから出てきたのが、『トミー TOMMY』『努力しないで出世する方法 HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』のリヴァイヴァルで、どちらもテクノロジーをうまくミュージカル舞台に導入してブロードウェイに新風を送り込んだ作品。
 だから、密かにブロードウェイ入りを期待していたのだが……。

 『ファウスト』はいけないよね。なにしろ、映画 『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』では、最初、コメディをシリアスな『ファウスト』に仕立てて大コケするんだから(でも、『ファウスト』ネタだけど『くたばれ!ヤンキース DAMN YANKEES』は当たったよなあ)。
 なんてことを先刻承知で、ニューマンさんはオマージュとして作ってたりするんじゃないか。そんなことを考えて楽しみにしていたのだけれど。

 舞台が観られないのは残念だけど、音楽はいい。楽曲もいいが、役者(歌手)がスゴい。
 ジェイムズ・テイラー James Taylor、エルトン・ジョン Elton John、ドン・ヘンリー Don Henley、ボニー・レイット Bonnie Raitt、リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt、そしてランディ・ニューマン。オールスターと呼びたいくらいの顔ぶれ。
 曲調も一筋縄では行かない凝りようで、CD を聴きながら、あらすじ読んで舞台を想像するというのも一興かなと思う今日この頃。
 一応、Playbill On-Line には舞台に関する質問を載せたんですが……。もし返事があったら報告します。

(12/9/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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