『THE BAND WAGON』
Original Motion Picture Soundtrack(Rhino)

アステアの未公開シーンを見せてくれ

 ライノ・レコードがリリースしている映画音楽シリーズの1つとして昨年登場した、1953年のMGMミュージカル映画『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』のサウンドトラック盤。
 と言ってもライノだけに、過去に出ていたサウンドトラックとは比べものにならない“超”コンプリート盤。サウンドトラック全曲(この時点でコンプリート)に、アウトテイクが4曲、弾き語りのデモが2曲加えられている。

 アウトテイク4曲は撮影されながら編集時にカットされたショウ・ナンバーの“ほぼ”全てのサウンドトラックで、以下の通り。

 「Sweet Music」
 ナネット・ファブレイ Nanette Fabray、オスカー・レヴァント Oscar Levant

 「You Have Everything」
 ザ・MGMスタジオ・オーケストラ

 「Got A Bran' New Suit」
 ナネット・ファブレイ、フレッド・アステア Fred Astaire

 「Two-Faced Woman」
 インディア・アダムズ India Adams

 この内、「Two-Faced Woman」は映画『ザッツ・エンタテイ(ン)メント3 THAT'S ENTERTAINMENT! V』で公開されている。シド・チャリース Cyd Charisse が女性ダンサーたちを従えて踊るナンバーで、失敗に終わる現代版ファウストのリハーサル・シーンとして撮影された。この映画のチャリースの歌は全曲インディア・アダムズの吹き替え。

 「Sweet Music」はファブレイ、レヴァントの作家夫妻が投資家たちの前で披露する1曲。レヴァントお得意のピアノ・テクニック発揮の場。これは見られなくても、まあいい。

 問題は残る2曲。いずれもアステアのダンスがらみのナンバーだ。

 「You Have Everything」は、アステアとチャリースが偶然隣り合わせの部屋でリハーサルをするというシーンで使われる、ジャズ調とクラシック調が交互に表れる曲。左の部屋でアステアが、右の部屋でチャリースが踊るのを一度に見せるというこのナンバー、どんな振付だったのだろう。

 そして「Got A Bran' New Suit」。ファブレイがレヴァントのピアノ伴奏で歌って聴かせた曲を、アステアが劇場のそこここでリハーサルしながらソング&ダンス・ナンバーとして仕上げていく、という実に興味深いもの。
 この曲、劇中でも結局カットされてアステアが落ち込む、という設定だったらしいのだが。

 この後者2曲の映像は、なんとしても公開してほしい。

 同じシリーズでCDが出ている『ジーグフェルド・フォリーズ ZIEGFELD FOLLIES』にもアステアのアウトテイク「If Swing Goes, I Go Too」が収録されているし、この辺は映像が残っているんじゃないでしょうか。
 『ザッツ・エンタテイ(ン)メント3』では、ヒットしなかった『ザ・ベル・オブ・ニューヨーク THE BELLE OF NEW YORK』から「I Wanna Be A Dancin' Man」の別テイクが公開されたぐらいなんだから。もっとも、素晴らしいナンバーではありますが。

 ところで先に、カットされたショウ・ナンバーの“ほぼ”全て、と書いたのは、本編に残った「The Girl Hunt Ballet」の一部として撮影されたアステアとチャリースの電話を使ったダンス・ナンバーもアウトテイクになっているからだ。
 このシーンも観たいなあ。

 さて、最後にボーナス・トラックとして付け加えられた2曲のデモを弾き語っているのは、MGMの音楽監督だったロジャー・イーデンス Roger Edens。ジュディ・ガーランド Judy Garland の伝記にひんぱんに登場する人だ。
 このデモ版の「That's Entertainment!」もなかなか味わい深い。ぜひご一聴あれ。

 以上、参考文献はジョン・ミューラー John Mueller著「ASTAIRE DANCING The Musical Films」でした。

(5/1/1997)


 Cyd Charisse の読みは、どうやら本人はチャリシーと言ってるようです。よって、最近の文章の中ではチャリシーで統一しています。

(4/27/2004)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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