『OFF BROADWAY』
Jerry Orbach(DECCA)

2000リイシュー・アルバム補遺

 『フォッシー FOSSE』東京公演も残りあとわずか。名残惜しくなって、明日(3日)のチケットを先週アタマに買いに行ったのだが、もう 3階席しか残っていなかった。まあ、ショウにとっては喜ばしいことだ。
 ところで、ここに紹介するアルバムの主役ジェリー・オーバックは、『フォッシー』の中に登場する「Razzle Dazzle」という『シカゴ CHICAGO』のナンバーを初演(1975年)の舞台で歌った人。
 “razzle-dazzle”という言葉は、ボブ・フォッシー Bob Fosse の評伝のタイトルにもなっているが、見かけの派手な宣伝や演技のことで、定冠詞の the がつくとバカ騒ぎという意味になる。何がホントで何がウソだかわからない『シカゴ』の世界を象徴するタイトルのついたこの歌を、三百代言のビリー・フリン役のオーバックは、独特の色気を振りまきながら、いかがわしく歌ったのだろう。そう言えば、ついに終わるという噂もある『ファンタスティックス THE FANTASTICKS』(1960年)でオーバックの創出したエル・ギャロにも、ビリー・フリンに通じるいかがわしさと凄みがあった。

 『OFF BROADWAY』のリリースは、その『ファンタスティックス』がオープンしてから 3年後の 1963年。出世作となったオフの大ヒット作『ファンタスティックス』の前には、オーバックは、やはりオフのヒット作『三文オペラ THE THREEPENNY OPERA』のリヴァイヴァル(1958年)に出演して注目を集めている。
 このアルバムがオフ・ブロードウェイ・ミュージカル楽曲集というコンセプトになったのは、そんな理由からか。
 自ら舞台で歌った、『ファンタスティックス』「Try to Remember」『三文オペラ』「Mack the Knife」という 2大スタンダードはもちろん収録。その他、有名作品、あまり知られていない作品、取り混ぜた選曲だが、際立つのはオーバックの多彩な歌いぶり。
 基本は、「Try to Remember」や後の「Razzle Dazzle」でもわかる通り、典型的なクルーナー(そう言えば、リヴァイヴァル版『シカゴ』でビリー・フリンを演じたジェイムズ・ノートン James Naughton も伊達男的クルーナーだった)。なのだが、ラテン・ナンバーでの軽快さ、バーレスク風ナンバーでのコメディアンぶりなども堂に入ったもの。この時、オーバック、 27歳らしいが、すでに充分な成熟を感じさせる。それから 10数年後の『シカゴ』のオーバック。よかったんだろうなあ。

 ところで、『フォッシー FOSSE』東京公演、どうぞお見逃しなく(笑)。

 さて、もう 1枚採り上げた『ピピン PIPPIN』のオリジナル・キャスト・アルバムも昨年のリイシュー。おなじみデッカの高音質化シリーズだが、これまた『フォッシー』つながり。って話は、このサイトの読者のみなさんには耳タコか。
 オリジナル・キャストだったベン・ヴェリーン Ben Vereen が、終盤のブロードウェイ版で自ら再現してみせたのはこちらに書いた通り。では、『フォッシー』で再現されているあのヴェリーンのダンス・シーンを、 CM用にフォッシー自らが撮影・編集して、オープン当初入りの悪かった『ピピン』をヒットに結びつけたというエピソードはどうやらホントらしい。
 話は退屈だけど、ヴェリーンはいいもんね。ヴィデオで観ただけだけど。

 というわけで、前回このコーナーで【ミュージカル関連】アルバム 2000年リリース分ベスト 10を発表した後に入手した、昨年リリースの注目リイシュー・アルバム 2枚でした。

(9/2/2001)

Copyright ©2001 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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