『ANNIE GET YOUR GUN』
Original Motion Picture Soundtrack(RHINO)

2000リイシュー・アルバム・ベスト 10
【ミュージカル関連】

 昨年に続いての、【ミュージカル関連】アルバムの昨年リリース分ベスト 10発表です。
 高音質+未発表音源によるオリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤復刻は、コンスタントにリリースを続けるコロンビア(ソニー)を追ってデッカも本格参入し、充実してきたものの、一方でライノの MGMシリーズが一段落。イマイチ盛り上がりに欠けるなあ、と思っていたところに、出ました『アニーよ銃をとれ』

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  1. 『ANNIE GET YOUR GUN』(RHINO)
    Original Motion Picture Soundtrack
  2. 『サウンド・オブ・ミュージック〜コレクターズ・エディション THE SOUND OF MUSIC 35th Anniversary Collector's Edition』(BMG)
    An Original Soundtrack Recording
  3. 『LET ME ENTERTAIN YOU』(DECCA)
    Carol Burnett
  4. 『ANNIE GET YOUR GUN』(DECCA)
    Original Broadway Cast
  5. 『THE THREEPENNY OPERA』(DECCA)
    Original Broadway Cast
  6. 『APPLAUSE』(DECCA)
    Original Broadway Cast
  7. 『BYE BYE BIRDIE』(SONY)
    Original Broadway Cast
  8. 『THE PAJAMA GAME』(SONY)
    Original Broadway Cast
  9. 『FINIAN'S RAINBOW』(SONY)
    Original Broadway Cast
  10. 『太平洋序曲 PACIFIC OVERTURES』(BMG)
    Original Broadway Cast

 ※ [MY FAVORITES] の慣例に従って、日本盤の出ていないものは英語表記のみ。

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 ついに出た、ジュディ・ガーランド Judy Garland 版『アニーよ銃をとれ』(邦題に「!」が付いてないことに今気づいた。これまで書いてきたタイトルからも「!」を外して読んでください。笑)。
 1. の『ANNIE GET YOUR GUN』は、ヴィデオと一緒に復活したベティ・ハットン Betty Hutton 版 MGM映画のオリジナル・サウンドトラック。なのだけれども、そこはライノ。もちろん、大量のオマケ付きで、特に後半は、ガーランド版の音源を可能な限り集めた“もう 1つの”サウンドトラックになっている。昨年のリイシュー・アルバム・ベスト 10で『IRVING BERLIN IN HOLLYWOOD』を採り上げた時に書いたことを、ちゃんとした CDで実現してくれたわけだ。
 もちろん、ハットン版にもオマケはある。録音されたもののカットされた「Let's Go West Again」が、ここで陽の目を見た。その他、 LP時代のサウンドトラックからは録音時間の関係から外されていたと思われる 6曲が入っている。
 逆にガーランド版の方は、過去のライノのシリーズで出尽くしているので新たな発見はない(「They Say It's Wonderful」のインストゥルメンタルのみ未発表ヴァージョン)。でも、こうしてまとめてくれたのはホントにうれしい。「There's No Business Like Show Business」では、ドロシー(ガーランド)とオズの魔法使い(フランク・モーガン Frank Morgan/バッファロー・ビル役で出演したが、ハットン版に切り替わる前に死亡)の最後の共演が聴かれる(ヴィデオ版のオマケ映像でモーガン =バッファロー・ビルの姿も一瞬観られる)。

 2. 『サウンド・オブ・ミュージック〜コレクターズ・エディション』は、従来のオリジナル・サウンドトラックと、未発表音源を含む特別盤の 2枚組。欧米(英語圏?)では、観客が一緒に歌う“シングアロング”版の上映が行われているが(これが劇場の上演と同じ時間帯でやるんで、なかなか観られない)、この“コレクターズ・エディション”のリリースも、そうした動きと関係があるのだろう。公開 35周年キャンペーンということか。
 “未発表音源”と言っても、 1曲、それもその 1部だけが未発表だっただけで、 2枚目の残りは、従来のオリジナル・サウンドトラックに入っていなかったか、短縮されて入っていたものを元の長さに戻したもの。要するに、よりコンプリートなオリジナル・サウンドトラックになった、ということだ。
 その未発表音源とは、 2度目に歌われる「もうすぐ17才 Sixteen Going on Seventeen」(従来のオリジナル・サウンドトラック未収録)の冒頭の、映画ではカットされているマリア(ジュリー・アンドリューズ Julie Andrews)による導入部。マニアック(笑)。
 最後に 9分 24秒に及ぶリチャード・ロジャース Richard Rodgers の語りが入っている。日本盤には聞き取りの英語が載っているので、ヒアリングの勉強にいいかも(笑)。

 3. 『LET ME ENTERTAIN YOU』は、ジュリー・アンドリューズの仲良し、キャロル・バーネットの若き日の姿(20代後半から 30歳)がよみがえる旧作 LP 2枚の 2イン 1復刻。
 1枚は 61年リリースの『REMEMBERS How They Stopped The Show』。もう 1枚が CDタイトルにもなっている 63年の『LET ME ENTERTAIN YOU』。バーネット主演のブロードウェイ・ミュージカル 2本――鮮烈だったと言われるブロードウェイ・デビューを飾った『ワンス・アポン・ア・マットレス ONCE UPON A MATTRESS』(1959)と、残念ながらプロダクション内でもめごとがあって、以降長い間ブロードウェイから遠ざかるきっかけとなったという『フェイド・アウト-フェイド・イン FADE OUT-FADE IN』(1964)――の間に出た 2枚だ。
 内容は大半がミュージカル・ナンバーで、 2枚目は、『ジプシー GYPSY』(1959)、『ド・レ・ミ DO RE MI』(1960)、『地下鉄は眠るために SUBWAYS ARE FOR SLEEPING』(1961)と脂ののっていたジュール・スタイン Jule Styne(作曲)楽曲集。『ファニー・ガール FUNNY GIRL』(1964)の直前。リリースが半年遅れていたら、バーネットの「People」が聴かれただろうか。

 4. 5. 6. は、昨年から精力的にブロードウェイ・キャスト盤の CDリイシューを開始したデッカのシリーズ。ディジタル・リマスター、ボーナス・トラック&写真も豊富な詳細ライナーノーツ付きは、ソニーによるコロンビアのシリーズ同様だが、こちらはプラスティック・ケースの上に紙箱タイプの包装がしてあり、やや贅沢感あり。

 4. 『ANNIE GET YOUR GUN』は、もちろんエセル・マーマン Ethel Merman 主演による 1. のオリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤。
 ボーナス・トラックは、 1973年にリリースされた『Ethel Merman sings ANNIE GET YOUR GUN』から「Overture」「Colonel Buffalo Bill」「I'm a Bad, Bad Man」「An Old-Fashioned Wedding」の 4曲で、いずれもオリジナル盤には入っていない。もっとも、マーマンが歌っているのは、彼女が再び主演した 66年のリヴァイヴァル舞台用に書き下ろされた「An Old-Fashioned Wedding」のみだが、この音源が CD化されるのは初めてとのこと。

 5. 『THE THREEPENNY OPERA』は、オリジナル・ブロードウェイ・キャスト・アルバムと書いてあるが、正確には、オリジナル・“オフ”・ブロードウェイ・キャスト・アルバム。 1954年にリス劇場 Theatre de Lys で幕を開けた『三文オペラ』完全英語版初演の音源だ。とは言っても、例えば、同じデッカからやはり昨年リマスターされて出た『THE FANTASTICKS』(ボーナス・トラックなし)もオリジナル・ブロードウェイ・キャスト・アルバムって書いてあるしな。ま、慣例なんでしょう。
 この盤のボーナス・トラックは、同舞台の英語詞&台本を補作した(『クレイドル・ウィル・ロック THE CRADLE WILL ROCK』の)マーク・ブリッツスタイン Marc Blitzstein のピアノ伴奏によるロッテ・レーニャ Lotte Lenya の「The Ballad of Mack the Knife」。レーニャが個人的に所有していたライヴ音源だそうで、詳細は不明。

 ローレン・バコール Lauren Bacall の主演作 6. 『APPLAUSE』のボーナス・トラックは、作曲者チャールズ・ストローズ Charles Strouse(作詞はリー・アダムズ Lee Adams)のピアノ弾き語りによるデモ・レコーディング 4曲。
 貴重なのは、この内 3曲がブロードウェイ公演開始までにカットされたものであること。ライナーノーツによれば、 69- 70年シーズンのトニー賞を獲得したこのミュージカルも制作過程で悪戦苦闘があったようで、ストローズとアダムズはオープニング直前まで曲を書いていたらしい。カットされた 3曲はその試行錯誤の名残でもあるんだろう。

 7. 8. 9. は、デッカに先行してディジタル・リマスター、ボーナス・トラック付きでリイシューを続ける、ソニー/コロンビアのシリーズ。
 例によって、写真も豊富な詳細ライナーノーツつき。

 7. 『BYE BYE BIRDIE』は、『APPLAUSE』の 10年前にストローズとアダムズが楽曲を書いた、彼らのブロードウェイ・デビュー作。 63年の映画版にも出演したディック・ヴァン・ダイク Dick Van Dyke のミュージカル・デビュー作でもあり、ガウワー・チャンピオン Gower Champion の初演出作でもある。
 ボーナス・トラックは、『APPLAUSE』同様ストローズの歌う未発表音源だが、楽曲そのものは既発表のもの。 78年にスミソニアン博物館で演奏された、とある。また、詳細はわからないが、いくつかの未発表音源を含むと書いてあるから、楽曲によっては LP収録時に短縮された部分が復元されていたりするのかもしれない。
 なお、ごぞんじかもしれないが、映画版でアン・マーグレット Ann-Margret が歌うタイトル曲は映画用に(と言うかマーグレット用に)書かれたもので、舞台では歌われていない。

 8. 『THE PAJAMA GAME』は、ごぞんじボブ・フォッシー Bob Fosse のブロードウェイ振付デビュー作。ハイライト・シーンは、『フォッシー FOSSE』でも見どころの 1つになっている「Steam Heat」で、このオリジナル・キャスト・アルバムでは、キャロル・ヘイニー Carol Haney(映画版『キス・ミー・ケイト KISS ME, KATE』で、フォッシーと一緒に踊るその姿を観ることが出来る)のハスキー・ヴォイスが聴かれる。
 ボーナス・トラックの 3曲は、 53年 4月 25日に CBSラジオの番組用にボストンで録音されたもので、おそらく間近に迫ったブロードウェイ開幕(5月 13日)に向けてのプロモーションを意図していたと思われる。歌っているのは、主演のジョン・レイット John Raitt、ジャニス・ペイジ Janis Paige、作曲・作詞コンビのリチャード・アドラー Richard Adler(歌)とジェリー・ロス Jerry Ross(ピアノ)で、レイットが単独で歌う 1曲はブロードウェイ上演時にはカットされている。
 また、 LP収録時にカットされたと思われる短い 1曲が初お目見えしている。

 9. の『FINIAN'S RAINBOW』は、もちろん、後にフレッド・アステア Fred Astaire 主演で映画化された作品のオリジナル版。
 ボーナス・トラック 3曲は、いずれも、作詞家E・Y・ハーバーグ E.Y.Herburg が歌っている。内 2曲は舞台で使われた楽曲で、 73年にリチャード・レナード Richard Leonard という人のピアノ伴奏で聴衆を前に録音されたもの(詳細不明)だが、もう 1曲は最終的にカットされた楽曲。これまた出所不明だが、ピアノ伴奏は作曲家バートン・レイン Burton Lane が自ら受け持っている。
 また、この盤にも、 LP収録時に短縮された楽曲の復刻や、別ヴァージョン収録などのオマケがある。

 10. 『太平洋序曲』は、新たな要素はないし、音質的な向上もない盤だが、宮本亜門による日本語ヴァージョンの上演に合わせて(名目上は、作曲・作詞のスティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim の高松宮記念世界文化賞受賞記念)日本盤が登場したので採り上げた。本当は、かつて日本でオンエアされた舞台映像のヴィデオソフト化が望まれるのだが。
 ともあれ、近年では珍しく“意味のある”翻訳ミュージカルだった宮本亜門版の切り口の面白さを、このオリジナル版を聴きながら反すうするのは悪くない。ただし、隔靴掻痒の感のある解説よりも、歌詞の対訳がほしかったところだ。

(2/18/2001)

Copyright ©2001 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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