『レディ・イズ・ア・トランプ THE GIRL I LEFT HOME FOR』
グウェン・ヴァードン Gwen Verdon(BMG ジャパン)

かわいい魔女だった頃

 ブロードウェイ・ミュージカル史における 1955年という年は、僕が生まれた年であると同時に(笑)、グウェン・ヴァードンが『くたばれ!ヤンキース DAMN YANKEES』の魔女ローラを演じて、 2年前の『カンカン CAN-CAN』で得た人気をより確かなものにした年でもある(資料によれば、ね)。
 その『くたばれ!ヤンキース』のブロードウェイ開幕(5月 5日)から約半年後にニューヨークで録音されたのが、この『レディ・イズ・ア・トランプ』。オリジナル・ジャケット裏のライナーノーツの言葉を借りれば、 [彼女の名声がより高まり、ショウ・ビジネス界の最も輝かしいスターの 1人となった] 時期のレコーディングということになる。

 ヴァードンのことをごぞんじない方のために、スタンリー・グリーン Stanley Green の「ENCYCLOPEDIA OF THE MUSICAL THEATRE」(Da Capo Press)で彼女の項を引くと――、

グウェン(グウィネス・イヴリン Gwyneth Evelyn)・ヴァードン
 女優、ダンサー、歌手。 1926年 1月 13日、カリフォルニア州カルヴァ・シティ生まれ。踊る赤毛女優。 50年代に、『くたばれ!ヤンキース』『ニュー・ガール・イン・タウン NEW GIRL IN TOWN』『レッドヘッド REDHEAD』といったブロードウェイのヒット作に主演し人気を得、その後、『スウィート・チャリティ SWEET CHARITY』でも主演。演技者としての彼女は、いつも、セクシーであると同時に傷つきやすいという役柄を与えられてきた。結婚し、離婚したボブ・フォッシー Bob Fosse が、 55年以降は、彼女の出演作の全てで振付あるいは演出・振付を手がけている。
 1948『マグダレナ MAGDALENA』
 1950『アライヴ・アンド・キッキング ALIVE AND KICKING』
 1953『カンカン』
 1955『くたばれ!ヤンキース』
 1957『ニュー・ガール・イン・タウン』
 1959『レッドヘッド』
 1966『スウィート・チャリティ』
 1975『シカゴ CHICAGO』

 ――なんてことをくどくど書くよりも、『くたばれ!ヤンキース』映画版(1958年)を 1度観ようと書く方が、ヴァードンの魅力を伝えるには、実ははるかに有効ですね。
 未見の方は、ぜひ。ノリにノッていた時期の“踊る赤毛女優”の“かわいい魔女”ぶりを、たっぷりと観ることが出来る。それも、後に彼女の夫となる“伝説の振付家”とのデュオ・ダンスのオマケ付きで。

 その名ミュージカル女優が残した唯一の本格的ヴォーカル・アルバムは、ワン・アンド・オンリーのハスキー・ヴォイスの魅力炸裂。音域も広いわけではなく、一聴してうまいと思う歌ではないが、聴き込むほどにハマっていく。まあ、例えば、サラ・ブライトマン Sarah Brightman って最高! と思う人にはわかりにくいかもしれないが。
 歌っている楽曲は大半が舞台ミュージカルや映画からのナンバーで、 12曲中 9曲が 20年代から 40年代のもの。ヴァードンお気に入りの作品集、ということなのだろうか。
 で、まあ、それはともかく、問題は残りの 3曲。日本語ライナー(柳生すみまろ)によれば、彼女が出演した映画のナンバーだというのだが、その映画のタイトルが『ミート・ミー・アフター・ザ・ショウ MEET ME AFTER THE SHOW』(1951年)。そして、彼女はダンサー役!
 この映画、観たくありませんか。あるいは、観た、という方がいらしたらご一報ください。

 ともあれ、リヴァイヴァル『シカゴ』『フォッシー FOSSE』の成功を目の当たりにし、自らはコンサート版『スウィート・チャリティ』の舞台にも立ったヴァードンの晩年は、ブロードウェイの名女優にとっては(個人的な悩みやなんかはわかりませんが)幸せなものだったと思う。
 と書きながら思い出したが、最後の舞台でも、彼女のイメージは“かわいい魔女”だったなあ。

(10/24/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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