『ザ・タップ』
宇川彩子(キング・レコード)

楽しいタップ・アルバム

 僕が初めて宇川彩子のタップを観たのがいつだったか、実はわからない。と言うのは、彼女が所属していたジャム・タップ・ダンス・カンパニーのステージを、 92年以降何度か観ているのだが、彼女がいつ出ていたかをはっきりとは覚えていないからだ。手元にプログラムがあれば調べようがあるのだが、あいにく昔の資料は全て実家の方だ。
 でも、『ザ・タップ』のライナーノーツによると、同カンパニーがゲストとしてジミー・スライド Jimmy Slide を呼んだ公演に出ていたらしいから、少なくとも、その時(たぶん 5、 6年前?)には観ているわけだ。僕の記憶では、どちらかと言えば、おっとりした感じに見える女の子(当時まだ 10代か?)だったような気がするが、定かではない。
 そんなわけで、昨年の 8月 7日に熊谷和徳ライヴの会場で偶然出会い、 5日後の 12日に六本木のアルフィーという店に出向いたのが、宇川彩子というタップ・ダンサーを意識して観た最初の機会と言っていい。
 僕が彼女を応援しているのは、その時のパフォーマンスが素敵だったから。それだけのこと。何の義理もない。
 あえて、もう 1つ理由をつけ加えるなら、小さなライヴハウスでのセッションという地味な、そして日本ではあまり知られていない活動を積極的に行なっている姿勢に共感を覚えたから。流行り廃りとは関係のない、自分の志を貫こうとするパフォーマーが、そこにはいた。

 その宇川彩子がタップの CDを出した。
 出すという話を聞いた時は、視覚的要素のない分どうなんだろう、と半信半疑だったが、全くの杞憂。タップのスウィング感をうまく捉えた、楽しいアルバムに仕上がっていた。
 セッションの相手は、ウッドウィンズ、ピアノ、ベース、ドラムスのクアルテット。他に、ベース・デュオと組んだ曲が 1曲、タップ仲間 3人とのタップだけのセッションが 1楽曲 2ヴァージョン。題材はジャズのスタンダード・ナンバーばかりだが、手垢のついた感じはしない。どれも瑞々しく、表情豊かだ。僕は、殊に、ユーモラスな気分のある「I Got Rhythm」と、しっとりした「Mr. Bojangles」に惹かれた。
 実は、 8月以来彼女のライヴを観ていないのだが、この『ザ・タップ』を聴いている内に、ぜひともまた観たくなった。みなさんも、ライヴか CDか、あるいは両方を、ぜひとも体験してみてください。気持ちがよくなること請け合いです(ライヴ・スケジュールは彼女のサイトで)。

(4/10/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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