Theatres Ads at St. Martin's Court/7/26/2011

[ゆけむり通信Vol.97]

7/26-7/30/2011


  • 7月25日 19:30
    『ラヴ・ネヴァ・ダイズ LOVE NEVER DIES』
    ADELPHI THEATRE The Strand
  • 7月26日 15:00
    『ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS』
    PRINCE EDWARD THEATRE Old Compton Street
  • 7月26日 19:30
    『レンド・ミー・ア・テナー:ザ・ミュージカル LEND ME A TENOR:The Musical』
    GIELGUD THEATRE Shaftesbury Avenue
  • 7月27日 14:30
    『オズの魔法使い THE WIZARD OF OZ』
    LONDON PALLADIUM THEATRE Argyll Street
  • 7月27日 19:30
    『ゴースト GHOST:The Musical』
    PICCADILLY THEATRE Denman Street
  • 7月28日 14:30
    『キューティ・ブロンド LEGALLY BLONDE』
    SAVOY THEATRE Savoy Court
  • 7月28日 19:30
    『青い眼のベティ BETTY BLUE EYES』
    NOVELLO THEATRE Aldwych
  • 7月29日 17:00
    『シカゴ CHICAGO』
    CAMBRIDGE THEATRE Earlham Street
  • 7月29日 19:45
    『狭間! BETWIXT!』
    TRAFALGAR STUDIOS 2 THEATRE Whitehall
  • 7月30日 14:30
    『ロンドン・ロード LONDON ROAD』
    COTTESLOE(NATIONAL THEATRE) South bank
  • 7月30日 19:45
    『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』
    OPEN AIR THEATRE Regent's Park
* * * * * * * * * *

 3〜 4月のニューヨーク行きの後、ブロードウェイの新作が端境期なので、という理由で決めたロンドン行きだったのだが、急遽 6月末にニューヨークに飛んだため、気分は端境期でもなんでもなくなり、贅沢な(中身がではなく、行くこと自体が)旅になってしまった。 2年振りにもかかわらず、未見のミュージカルの数も少なかったし。
 が、行ってよかった。観た後で、話題の舞台がバタバタっと閉まったから。
 まあ、なにより、気候がよかったのは幸い。暑からず寒からずで、毎晩通って飽きないバルも見つけて、初めてロンドンを楽しく感じた。半月後に、あのデモが起こるとは思いもせずに……。

 まずは、ロンドン産の新作(と言っても、前回以降に始まった、という意味だが)を、観た順に。

 『ラヴ・ネヴァ・ダイズ』は、あの『オペラ座の怪人 THE PHANTOM OF THE OPERA』の続編にして、愚作。
 今回の舞台は、 20世紀初頭のニューヨークはコニー・アイランド。パリを逃れてアメリカに渡ったファントムがコニー・アイランドで(別人として)興行で成功している、という設定。そこに、歌手として名声を得ているクリスティーンを呼び寄せる。カネに困っている夫のラウルと一人息子と共に。となれば、その後展開するドラマは、前作同様、ファントム、クリスティーン、ラウルの三角関係。……という話には正直あまり関心はない。ラウルがダメ男になってる、とか、どうでもいい。なにしろ、前作のストーリーにも思い入れはないから。
 ただ、言えるのは、元になったフレデリック・フォーサイス Frederick Forsyth(脚本にクレジットあり)の小説『マンハッタンの怪人 THE PHANTOM OF MANHATTAN』の設定を生かして、舞台をマンハッタンの新設オペラハウスにしておけば、こんなチープな感じにはならなかっただろう、ということ。
 『オペラ座の怪人』の面白さというのは、大時代的なゴシック・ホラーを大仕掛けな装置と大袈裟な音楽(オペラ的なものとシンセサイザーによるユーロビート〜ヘヴィメタルとの強引な組み合わせ)で賑々しく見せたところになる。その雰囲気醸成のために、古色蒼然としたオペラ座という舞台設定は不可欠だった。それが、当時は賑わっていたとはいえ、どこか場末感の漂うコニー・アイランドでは、スケールが小さすぎるし、神出鬼没のファントムが棲息している気がしない。事実、ここでのファントムは神出鬼没の存在ではなく、さほど恐ろしくもない。新世紀になって、すっかり神通力を失った格好だ。おまけに、実際の装置も、前作に比べるとチープで、アイディアも不足している(その分をプロジェクター処理で補おうとしているが、成功していない)。
 当然のごとく作曲(+共同脚本)はアンドリュー・ロイド・ウェバー Andrew Lloyd Webber だが、その他のスタッフは、ほぼ前作とは違っている(編曲のデイヴィッド・カレン David Cullen と、前作に作詞でクレジットされているチャールズ・ハート Charles Hart が今回は補作詞で加わっているぐらい)。さらに言うと、装置、照明のクレジットに“original”の表記が付いているし、振付も“new”の表記付きで 2人目のクレジットがあるところから想像するに、かなりの手直しが行なわれたのではないだろうか(昨年 3月正式オープン)。なんにしても最大の問題は、プロデューサーがアンドリュー・ロイド・ウェバー自身(+彼の会社リアリー・ユースフル・グループ The Really Useful Group)だというところにあると思う(前作のプロデューサーは、キャメロン・マッキントッシュ Cameron MaCkintosh +リアリー・ユースフル・グループの前身とも言うべきリアリー・ユースフル・カンパニー THE REALLY USEFUL COMPANY)。的確な判断が全く出来ていない。自分でプロデュースを続ける限り、自作の成功は 2度とないだろう。
 もっとも、楽曲にも特筆すべきものがないのだが。
 と言っていたら、 8月 27日公演で幕を下ろした。となれば、とりあえず、観られてよかった、と言うべきか。

 『レンド・ミー・ア・テナー:ザ・ミュージカル』は、その名の通り、劇作家ケン・ラドウィグ Ken Ludwig の出世作である傑作コメディ『レンド・ミー・ア・テナー LEND ME A TENOR』のミュージカル化。やはりラドウィグが脚本を手がけた『クレイジー・フォー・ユー』と、(オペラとソング&ダンスのショウという違いはあるが)音楽舞台のバックステージものというだけでなく、取り違えのギャグ等、多くの共通点があり、以前からミュージカルになる題材なのでは、と思ってはいた。
 が、実際にミュージカルとして姿を現してみると、あえて作らなくてもよかったかな、と(笑)。まあ、元の脚本が非常によく出来ているので、まとまってはいるし、退屈することはないが、ミュージカルにするために付け加えた部分が余計なものに感じてしまう、というのが正直なところ(脚本は、ラドウィグのプレイ版を元に作詞のピーター・シャム Peter Sham が新たに書き起こしている)。特筆すべき楽曲がなかったのも残念なところ。
 こちらも、すでに終了した。

 『オズの魔法使い』を新作と言うかどうかは微妙だが、一応、映画版楽曲に加えて、プロデューサーでもあるアンドリュー・ロイド・ウェバーが数曲書き下ろし、その内の何曲かにはティム・ライス Tim Rice が歌詞を付けているし、脚本も、ロイド・ウェバーと演出のジェレミー・サムズ Jeremy Sams が書き加えた部分があるようなので、“準”新作とでも言うべきものになってはいる。その“ちょっと手を加えた”感が半端で、なんとも邪魔なんだな(笑)。
 実のところ、それほど大きな改変があるわけではない。最も大きな変化は、『ウィキッド WICKED』を意識して、西の悪い魔女をはじめとした何人かのキャラクターが現代風に更新されているところ。もちろん、それは、いい魔女(グリンダ)にも及んでいる。
 まあ、今、ホリデイ・シーズンの限定公演ではなくロングラン作品として『オズの魔法使い』を作るとすれば、大好評上演中の『ウィキッド』を気にしないわけにはいかないだろう、というのは想像がつく。でも、その中途半端な目配せが、瞬間的に「あれ!? この『ウィキッド』、全体にショボくない?」という錯誤を覚えさせるのは、かえってマイナスだろう。このところ、ロイド・ウェバーが憑かれたように繰り出すプロジェクションを駆使した CG画像も、舞台好きにとっては、驚きよりも食傷の対象となりがち。ここでもプロデューサーとしてのロイド・ウェバーの資質に疑問を抱いてしまう。
 ちなみに、オズの魔法使い役は、初代ファントム、マイケル・クロフォード Michael Crawford でした。ロイド・ウェバーとしてはブロードウェイ進出を狙ってるんだろうなあ。

 『ゴースト』は、同名映画(1990年)の舞台ミュージカル化。映画版で話題になった「Unchained Melody」は使われているが、それ以外の楽曲は、デイヴ・スチュワート Dave Stewart とグレン・バラード Glen Ballard という音楽業界のビッグ・ネームが手がけていて、それも話題。
 ストーリーは、ほぼ映画版通りの展開。ということは、映画をご覧の方はおわかりかと思うが、映画では CGで描かれた主人公の“ゴーストぶり”(例えば壁をすり抜けるとか)を舞台上でどう表現するのか、が関心の的となる。その辺は、さすがに技術とアイディアを凝らしていて関心はするのだが、それが楽曲や振付と一体になって素晴らしい効果を上げているかと言えば、はなはだ怪しい。思うに、ある種の映像的技術と演劇との相性は必ずしもよくないのではないか。タイミングその他を合わせるのに高い技能や訓練が必要なのはわかるが、それは舞台裏の話。特にミュージカルの場合、やはり観たいのは、訓練を積んで高い技能を備えた役者が、生の肉体を使って披露する歌唱やダンスであって、それを引き立てる効果を映像的技術は生みづらい気がする。近年、その手のプロジェクション技術を駆使することが非常に多いロンドン産ミュージカルを観ていて感じるのは、興奮よりも煩わしさだ。この辺のことは機会があったら別に分析してみたい。ともあれ、『ゴースト』の場合、ミュージカル的興奮とは結びつかないものの、映像的技術のマジックを使う必然性は一部あるわけで、その部分に限って言えば、見どころにはなっている。
 で、ミュージカル的魅力について言えば、まずまずの出来。もっとも、その多くの部分を(映画ではウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg が演じた)霊媒師役のシャロン・D・クラーク Sharon D Clarke の歌が担っている。楽曲も総じて悪くないが、映画に出てくる「Unchained Melody」以上に印象に残るものがないのは残念。
 来春にはブロードウェイでも開幕する予定のようだが、はたして当たるか。少なくとも僕は、ロンドンの若い観客たちのようにはノレなかった。

 『青い眼のベティ』も、映画の舞台ミュージカル化。映画のタイトルは『最強最後の晩餐 A PRIVATE FUNCTION』で、日本では劇場未公開。
 第二次大戦後のイギリスの食糧難を背景にした苦いコメディで、舞台は、食品の闇取引摘発に異常な執念を燃やす取締官のいる田舎町。地元の資本家連中が、エリザベス王女(現女王)の結婚祝賀の名目で政治家相手にパーティを開き、非合法に育てていた豚を供して取り入ろうと計画する。ところが、回収直前に豚が消える。犯人は内気な足医者(という職業があるらしい)で、いろいろあって、この暴挙に出る。そして……。
 という話は、大筋はわかるものの、階級意識も含め、複雑に入り組んだニュアンスがあるようで、イギリスの文化や歴史に慣れ親しまない異邦人には俄かには理解しがたいところも多い(映画が劇場未公開だった理由もその辺か)。逆に言うと、地元の人々にとっては身につまされるネタで、諧謔的な笑いが詰まっている、とも考えられる。なにしろ、細かいことはわからずとも、充実した舞台であることは充分に伝わって来たから。
 ショウ場面は、楽曲(ジョージ・スタイルズ George Sitles & アンソニー・ドリュー Anthony Drewe)のスタイルも含め、時代背景に沿ったオーソドックスなもので、つまりは(内容はヒネってあっても)奇を衒うことなく楽しい。プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュの狙いは、その辺(内容は辛く、様式は楽しい)にあったのではないだろうか。
 ヒットには到らず、正式オープンから半年経たない 9月下旬に幕を下ろしてしまったが、観客の立場で言えば、よく出来たミュージカルだった。

 『狭間!』の主人公は、現実世界(現在のニューヨーク)と異次元に存在する魔法に支配される王国との間を行き来することになった若者で、ニューヨークから王国に紛れ込んで美女と出会う辺り、ディズニー映画『魔法にかけられて ENCHANTED』の逆パターンと言えなくもない(この作品も元々は「ENCHANTED」というタイトルだったらしい)。が、観客に接するような狭い空間で展開される物語は、ディズニー的世界とは似て非なるもので、けっこうエグかったりもする。
 というわけで、劇場のサイズも含め、感覚としてはオフオフ。それらしい、バカバカしくも笑える趣向もあり、楽曲にもシャレがあって(魔法で頭だけ生かされている女性が「I got nobody(no body) but you」と歌ったり)、見どころがないではないが、役者が全体に未熟で、どうも入りきれなかった。なんでも、 2008年にコンサート形式で上演された際には評判をとったらしいが、その時はオールスターだった、とプログラムには書いてある。しっかりした役者で観直してみたい気もする。

 『ロンドン・ロード』は、イギリスのサフォーク州で 2006年に実際にあった複数の殺人死体遺棄事件の容疑者が“町内”(ロンドン・ロード)に引っ越してきていた人物だったことで起こる住民たちのドラマで、劇場はナショナル・シアター内の小劇場。今年 4月に同じ劇場で初演されていて、これが再演のようだ。演技空間をコの字に囲んだ客席や 2階建て構造を使って、小さなコミュニティの空気をうまく表現していた(冒頭、観客を“町内”の集会に来た人々に見立てるのが効果的)。
 最大の特徴は、ある種のオペラ形式になった楽曲で、セリフと歌が不即不離に展開していく(脚本・作詞/アレッキー・ブライズ Alecky Blythe、作曲・作詞/アダム・コーク Adam Cork)。それが実に精緻に作られているのだが、歌唱も丁寧で、複雑でありながら魅力的な“音楽”として聴こえてくる。もちろん、そうやって、絡み合った様々な感情を巧みに観客に伝えているわけだが……あまりに音楽として魅力的で、しばしば眠気を誘われたもので、その辺はちょっと確信がない(笑)。が、役者も演奏者も実にうまかったのは事実。
 現実の事件を丹念に取材して、こうした舞台に昇華しようという、発想と技術と根気が素晴らしい。

 ここからの 4本はブロードウェイ産。観ていなかったロンドン産は以上だったので、ロンドンでは観ていなかったブロードウェイ産を観たしだい(『シカゴ』は除く)。こちらも観た順に。

 『ジャージー・ボーイズ』のブロードウェイ版は、ご承知の通り、書き下ろし楽曲のない“ジュークボックス・ミュージカル”でありながら 05-06年シーズンにトニー賞のミュージカル作品賞を受賞した。その面白さはこちらに書いた通り。
 ロンドン版は、と言えば、演出が同じデス・マカナフ Des McAnuff なだけに、内容はブロードウェイ版と変わりない。ただ、ブロードウェイ開幕時のフランキー・ヴァリ Frankie Valli 役ジョン・ロイド・ヤング John Lloyd Young を観ている身には、火曜マティネーに出演の 2番手役者(ブロードウェイなら、はっきり代役)のジョン・リー Jon Lee は、別にヘタなわけではないが、物足りなかったのも事実。
 でも、まあ、脚本が強力なこの作品は、役者の力がそこそこあれば、まずは楽しく観ていられる。

 『ジャージー・ボーイズ』とは逆に、『キューティ・ブロンド』は、 06-07年シーズンのトニー賞で 7部門(ただし作品賞は除く)にノミネートされながら全く受賞せず、結局ブロードウェイ版は 1年半ほどで幕を下ろした。が、意外にもロンドンでは今年春発表のオリヴィエ賞で作品賞を含む 3部門で受賞している。
 その時に女優賞を受賞したシェリダン・スミス Sheridan Smith はすでに降板。僕の観たのは 3人目のエル・ウッズ(主役の女の子)で、半月ほど前に参加したカーリー・ステンソン Carley Stensonだが、悪くなかった。
 演出はブロードウェイと同じジェリー・ミッチェル Jerry Mitchell。というわけで、『ジャージー・ボーイズ』同様、こちらも取り立てて変わっているところはないように見受けられた。この作品も、脚本はじめ、よく出来ていて、新鮮な驚きがあるわけではないが、楽しい。ブロードウェイでもっと当たってもおかしくなかった、と改めて思った。

 さて、なぜ『シカゴ』を観たかと言えば、金曜は昼公演がなく、唯一、夕方に午後 5時始まりのこの作品があって、これを観ても夜公演に間に合う、と考えたから。つまり、観るチャンスがあれば観る、という海外観劇時の個人的原則に従ったしだい。しかし、その判断も微妙だったな(苦笑)。
 なにしろ、ロキシー役のクリスティ・ブリンクリー Christie Brinkley が歌えず踊れず、で、どのくらいかと言えば、メラニー・グリフィス Melanie Griffithに肉迫するぐらいだったから。これ以上、突っ込んで書きませんが、周りのキャストは大変だろうな。ダンサーのみなさん、偉い!
 ちなみに、ヴェルマ役は、アムラ・フェイ・ライト Amra-Faye Wright。

 『クレイジー・フォー・ユー』は、夏の風物詩、リージェント・パークの野外劇場での上演。今回のロンドン行きの一応の目玉ではあった。なにしろ、好きな演目なもので。
 装置的に自由の利かない野外劇場なので演出や振付が、ことに振付が変わるだろうなとは思っていたが、案の定、大きく変わっていた。が、オリジナルを尊重しつつ、限られた装置の中で、元々の狙いを生かすにはどうすればいいかを考えた末の新たな演出・振付だと見受けられ、悪い印象はなかった。てか、大いに楽しみました。

 次回はニューヨーク。 10月 12日からの予定。

(10/6/2011)

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