The big high heel shoe on the Palace Theatre/8/28/2009

[ゆけむり通信Vol.85]

8/26-9/1/2009


  • 8月26日 20:00
    『ドリームボートとベティコート DREAMBOATS AND PETTICOATS』
    SAVOY THEATRE Savoy Court
  • 8月27日 14:30
    『ハロー・ドリー! HELLO DOLLY!』
    OPEN AIR THEATRE Regent's Park
  • 8月27日 19:30
    『ラ・カージュ・オ・フォール LA CAGE AUX FOLLES』
    PLAYHOUSE THEATRE Northumberland Avenue
  • 8月28日 15:00
    『ダーティ・ダンシング DIRTY DANVCING』
    ALDWYCH THEATRE Aldwych
  • 8月28日 19:30
    『シスター・アクト SISTER ACT』
    LONDON PALLADIUM THEATRE Argyll Street
  • 8月29日 14:30
    『オリヴァー! OLIVER!』
    DRURY LANE THEATRE Catherine Street
  • 8月29日 19:45
    『ブラッド・ブラザーズ BLOOD BROTHERS』
    PHOENIX THEATRE Argyll Street
  • 8月30日 15:00
    『ストンプ STOMP』
    AMBASSADORS THEATRE West Street
  • 8月30日 19:30
    『スリラー・ライヴ THRILLER LIVE』
    LYRIC THEATRE Shaftesbury Avenue
  • 8月31日 19:30
    『プリシラ PRISCILLA QUEEN OF THE DESERT』
    PALACE THEATRE Shaftesbury Avenue
  • 9月 1日 14:30
    『オペラ座の怪人 THE PHANTOM OF THE OPERA』
    HER MAJESTY'S THEATRE Haymarket
  • 9月 1日 20:00
    『僕は今日青い車を買った I BOUGHT A BLUE CAR TODAY』
    VAUDEVILLE THEATRE The Strand
* * * * * * * * * *

 3年ぶりのロンドン。気温は東京より 5度ほど低く、途中からは肌寒い感じになったが、劇場通いしかしない身には、ほどよい気候。もっとも、 2日目の野外劇場は、 tktsでチケットを買ったので日陰の席を選べず、思いっきり暑かったが。
 いつものロンドン行きと同じで、ブロードウェイが端境期なので、というのが久々の訪問の理由だが、調べていたらアラン・カミング Alan Cumming の限定公演(コンサート)が始まることがわかったので、当初の予定より 1日滞在を延ばして、過去最長の 7泊となった。しかも、月曜以外は全て昼公演ありだから余裕がある。この際とばかりに、ニューヨークでは観たものの 1度は本場でと思っていた『ブラッド・ブラザーズ』『ストンプ』『オペラ座の怪人』も、まとめて観た。
 それら超ロングラン 3作と、 13年ぶりの再見となった、これまたロングランの『オリヴァー!』以外の 8本が、前回以降の登場作(観るつもりだった『トゥ・クロース・トゥ・ザ・サン TO CLOSE TO THE SUN』は渡英前に予定より早くクローズした)。 [それらの作品が全て、リヴァイヴァルか、コンサート形式のある種の“ジュークボックス・ミュージカル”] と書いたのは前回だが、さすがロンドン、今回も、 [コンサート形式のある種の] という部分を除けば、ほぼ(『シスター・アクト』以外は、という意味)同様だ。

 では、まず、“ジュークボックス・ミュージカル”から。『ドリームボートとベティコート』『ダーティ・ダンシング』『スリラー・ライヴ』『プリシラ』の 4作がそれに当たる。

 『ドリームボートとベティコート』は回顧的なオールディーズ・“ジュークボックス・ミュージカル”。イギリスで売れている(らしい)同名コンピレーション・アルバムのシリーズから発想されたようだ。設定は 1961年(つまりビートルズ登場以前)のイギリスで、若者たちの集まるクラブが舞台。そこでの恋の鞘当てを軸にした他愛ないストーリーを、当時の若者向けヒット曲でつないでいく。ロンドン安上がり“ジュークボックス・ミュージカル”の典型だ。イギリスとアメリカの流行の違いがわかるのが面白い、といった程度。
 『ダーティ・ダンシング』『プリシラ』は同名映画の舞台ミュージカル化(映画版『プリシラ』の原題は、前に“THE ADVENTURES OF”と付く)。
 『ダーティ・ダンシング』の設定は 1960年代前半、価値観が大きく変わりつつあるアメリカ。避暑地で出会ったダンサーを通して大人の世界に踏み込んでいく少女の物語。使われている楽曲には、若者向けだけでなく、当時のスクエアな大人たちの聴いていたヒット曲も含まれる。ただ、主だった登場人物は歌わないのが特徴で、彼らはもっぱら踊る。少女と恋に落ちるダンサーを演じるマーティン・ハーヴェイ Martin Harvey の踊りは、ロイヤル・バレエで活躍しただけあって、迫力がある。たたずまいもセクシーで魅力的。しかしながら、演出(ジェイムズ・パウエル James Powell)がどうにも緩く、全体としては凡作の印象。
 “ジュークボックス・ミュージカル” 4作の中で最もよく出来ているのが『プリシラ』。シドニーのナイトクラブで働くドラッグ・クイーン(女装の男性) 3人がバスに乗り、砂漠を越えて保養地アリス・スプリングスに行くという話は、ロード・ムーヴィ的なだけに風景の広がりがある映画には及ばないが、人情コメディとして手堅くまとめてある。ド派手な衣装のドラッグ・クイーンたちによるショウ場面(口パク。歌は空から降りてくる 3人のディーヴァたちが担当)をディスコ調にアレンジされた有名ヒット曲に乗せてグイグイ見せる部分と、意外なヒット曲を心情吐露に使うドラマ部分との組み合わせが、乱暴なようで案外うまく舞台を転がしていく。オリジナルのシドニー版でも演じたという中年のトニー・シェルドン Tony Sheldon の存在感が大きいが、狂言回し役(あのポップ・シンガーの)ジェイソン・ドノヴァン Jason Donovan、切れ気味の若手オリヴァ・ソーントン Oliver Thornton という 3人のドラッグ・クイーンが皆いい。観て損はない。
 『スリラー・ライヴ』は、マイケル・ジャクソン Michael Jackson の足跡を振り返る擬似ライヴで、追悼公演へと変質したのは偶然。そっくりショウにもなりきれず(モータウン 25周年記念の「Billy Jean」や、「Thriller」の PVの再現に期待したが、ソコソコだった)、優れた歌手によるトリビュートにもならないという中途半端な内容。それでもロンドンの観客はオーケーだからな。

 リヴァイヴァルは、『ハロー・ドリー!』『ラ・カージュ・オ・フォール』というジェリー・ハーマン Jerry Herman の名作 2本。

 『ハロー・ドリー!』は、ロンドン夏の風物詩、リージェント・パークの野外劇場での限定公演で、前回の『ボーイ・フレンド THE BOY FRIEND』の時に書いたことを繰り返すと、[ロンドンのスタッフは、この手の古いミュージカルのリヴァイヴァルを手堅く仕上げるのはうまい]。ほぼ固定のセットの一部だけを巧みに動かして場面を変えていくアイディアは、窮余の策とはいえ、巧み。堅実な役者が揃って、楽しく観た。
 今回一番グッと来たのが、『ラ・カージュ・オ・フォール』。主演、フィリップ・クワスト Philip Quast(ジョルジュ)、ロジャー・アラム Roger Allam(アルバン)の情感豊かな演技がまず良く、“カージュ”の踊り子たちのダンスが献身的かつヤバい香りがあり(振付リン・ペイジ Lynne Page)、両袖上に配置されたバンドが親密度の高い演奏で渋く舞台を盛り上げる。小ぢんまりした劇場も、作品に似合って、いい雰囲気だ。瑕疵はジョルジュの息子役の一本調子な演技ぐらいか。 05年 2月に観たブロードウェイ・リヴァイヴァルとは雲泥の差、と言っていい。余談ですが、すぐそばの席でジュディ・デンチ Judi Dench も観劇中でした。

 さて、残る新作が『シスター・アクト』。邦題『天使にラブ・ソングを』として知られるヒット映画のミュージカル舞台化だ。
 映画では既成楽曲が歌われていたが、ここでは、アラン・メンケン Alan Menken とグレン・スレイター Glenn Slater(舞台版『リトル・マーメイド THE LITTLE MERMAID』で組んだ 2人)によるオリジナル楽曲が使われている。
 主人公の歌手が殺人を目撃してから修道院に匿われるまでは緩い舞台だと感じたが、その後、空気が変わる。きっかけは、第 1幕中盤のエイコ・ミッチェル Ako Mitchell 演じる(主人公を修道院に連れて行く)警官役のソング&ダンスで、このファンキーなナンバーがなければ凡作で終わっていたかもしれない。以降、大して話のないところをショウ場面をうまく並べて盛り上げている。主演のパティーナ・ミラー Patina Miller は熱演。愛嬌もあり、舞台栄えがする。
 ブロードウェイを目指していると思うが、それはちょっと厳しいかも。

 アラン・カミングのワンマン・ライヴのタイトルが『僕は今日青い車を買った』。由来は、アメリカのグリーンカードを得るときの問答にあるらしい。
 リンカーン・センターのライヴ・ハウス、シドニー・オペラ・ハウスで行なって、晴れての帰国公演。歌だけで勝負出来る人ではないと思うが、語りのうまさを含めたパーソナリティで楽しく見せる。早く次のミュージカル出演を観たいですね。

 最後にロングラン作品について、これも観た順に、ざっと。
 『オリヴァー!』は、劇場も変わっていたが、ヴァージョンも若干変わっているようで、演出家として、以前に観たパレイディアム劇場版のサム・メンデス Sam Mendes の他にルパート・グールド Rupert Goold の名前がある。と言っても、 13年前とどこが変わったか指摘出来るほどの記憶力があるわけもなく(笑)、相変わらずの充実作として楽しんだ。
 『ブラッド・ブラザーズ』をブロードウェイで観たのは 93年の 6月。主要キャスト 5人(ナレーター、双子の母親、双子、その恋人)が全員イギリスからやって来ていた。その時の感想は、 [山口百恵の『赤い〜』シリーズも真っ青のメロドラマ。にもかかわらず、意外にも、その世界に否応なく引きずり込まれた。] というもの。その理由として、小規模なカンパニーの練り上げられた緊密な演技を挙げているが、今回も同じ印象を持つと同時に、やっぱり地元で観てよかったと思った。ドラマの根底にある階級意識の軋みがリアルに伝わってきたからだ。シンセサイザー使いやヴォーカルのエコーに時代を感じるが、そうしたことを超えて、観るべき価値あり。
 『ストンプ』ニューヨークで観たのは 95年 1月。これまた記憶が曖昧だが、今回のように、後ろの壁一面に打楽器(の代用品)が配置してあった気がしない。その真偽はともかく、少なくともロンドンでは、おそらく、飽きられないように進化し続けていると思われる。予想以上に面白かった。
 『オペラ座の怪人』の劇場は意外に小ぢんまりしていた。ブロードウェイより親密度が高くて、いい感じ。でもって、あえて前方の席を予約していったが、これも正解。『ライオン・キング THE LION KING』を 3回目に観た時にも思ったが、おおよそのことがわかっている演目は、近くで観ると細かいことがいろいろと見えて、大して好きではない作品でも面白く観られる。観てよかったです。

 次回はニューヨーク。 10月 1日からの予定。

(9/23/2009)

Copyright ©2009 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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