The box office of the Open Air Theatre/7/20/2006

[ゆけむり通信Vol.68]

7/19-7/22/2006

  • 7月19日 20:00
    『ロッキー・ホラー・ショウ THE ROCKY HORROR SHOW』
    PLAYHOUSE THEATRE Northumberland Avenue
  • 7月20日 14:30
    『ボーイフレンド THE BOY FRIEND』
    OPEN AIR THEATRE Regent's Park
  • 7月20日 19:30
    『日曜日にジョージと公園で SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
    WYNDHAM'S THEATRE Charing Cross Road
  • 7月21日 16:30
    『シカゴ CHICAGO』
    CAMBRIDGE THEATRE Earlham Street
  • 7月21日 20:00
    『ダンシング・イン・ザ・ストリート DANCING IN THE STREET』
    ALDWYCH THEATRE Aldwych
  • 7月22日 14:30
    『エヴィータ EVITA』
    ADELPHI THEATRE The Strand
  • 7月22日 17:00
    『シナトラ・アット・ザ・ロンドン・パレイディアム SINATRA AT THE LONDON PALLADIUM』
    LONDON PALLADIUM THEATRE Argyll Street
* * * * * * * * * *

 到着日の暑さは記録的だったらしく、いきなり熱波の先制パンチを浴びたが、それでも雨続きの東京に比べると気分は晴れやか。翌日以降は、朝夕は涼しくなり、ほどよい風の吹く日陰は日中でも気持ちがよかった。雨もほとんど降らず、おかげで夏の名物、野外劇場での観劇も楽めた(ちなみに、野外劇場で昼公演のチケットを買う時には“日陰側 the shade part”と言い添えた方がいいと思います)。
 それにしても、ロンドンは、ニューヨークに比べるとミュージカル公演が少ない。これまでで最も短い間隔だとはいえ、それでも 1年ちょっとぶりの訪問だったのだが、わずか 4泊でウェスト・エンド作品の未見のものは制覇出来てしまった(もっとも、もう 1本、『マック&メイベル MACK & MABEL』のリヴァイヴァル公演を予定に入れていて、手数料が無料だったのでチケットの予約もしてあったのだが、これは不入りだったらしく月初めにクローズしてしまった)。
 さらに驚くべきことは、それらの作品が全て、リヴァイヴァルか、コンサート形式のある種の“ジュークボックス・ミュージカル”だということ。さすがロンドン。たまに来て観ると、逆に日本やブロードウェイのミュージカルについて、いろいろと考えさせられて面白い。

 『ダンシング・イン・ザ・ストリート』『シナトラ・アット・ザ・ロンドン・パレイディアム』が、コンサート形式の新作ミュージカル。

 『ダンシング・イン・ザ・ストリート』は、モータウン・レヴューの“そっくりショウ”。モータウンの歴史を語るでもなく、モータウンの楽曲を通じてアメリカを語るでもない。単に、モータウン・レーベルに所属したことのある有名アーティストたちが次々に自分たちのヒット曲を歌う、というショウを役者たちが演じるだけの舞台。楽曲の年代もバラけているので、“懐かしのヒット・パレード”的色合いも濃い。“そっくりショウ”としてのレヴェルは高く、似ていることと歌のうまさとが両立しているが、まあ、それだけ。ゴチャゴチャ言わずに、大挙して来場していたブラック・コミュニティの方々のように、ステージと一緒に歌って踊る、というのが正しい観方なのだろう。
 今回観た中での最大の問題作が、『シナトラ・アット・ザ・ロンドン・パレイディアム』。タイトル通り、ロンドン・パレイディアム劇場におけるフランク・シナトラ Frank Sinatra のショウ、という趣向なのだが、『ダンシング・イン・ザ・ストリート』と違うのは、シナトラを演じる役者がいないということ。なぜなら、シナトラ自身が出てくるから。生オーケストラとホンモノのダンサーたち(コーラスも兼ねる)をバックに歌うのは、映像に残されたシナトラなのだ。映像は巧みに処理されていて、時には、シナトラが映像の中で舞台上のダンサーと共演する、なんていうシーンもある。が、ライヴなのに主役がヴァーチャルな存在というのは、なんとも不思議で、中途半端な感じ。楽曲だけでなく主演俳優まで“ありもの”を使う究極の“ジュークボックス・ミュージカル”か。演出は、なんとデイヴィッド・ルヴォー David Leveaux。

 以下は全てリヴァイヴァル。

 おなじみのカルト・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショウ』は 20日間ほどの期間限定公演。その後、“ウェスト・エンド・ミュージカル”の看板を背負って地方公演に出る算段のようで、セットも旅仕様の比較的簡素なもの。それが、 B級 SF映画をネタにしたこの作品には合っていて、やや豪華な感じのあったブロードウェイ・リヴァイヴァル版より“らしさ”は出ていた。そんなわけで舞台の出来自体はけっして悪くないのだが、この作品の場合、どこで上演されていようと(日本は違うが)、客の大半は、舞台上のセリフに勝手に応えたり、先回りしてヤジを飛ばしたり、同じ振りで踊ったりする、独特の“お約束”のノリを楽しみに来ているわけで、まあ、そういうものだから仕方がないのだが、ルーティンになった楽しみ方の向こうにプラスアルファが見えない分、僕はもの足りなかった。
 アメリカではジュリー・アンドリューズ Julie Andrews のブロードウェイ・デビュー作として知られる『ボーイ・フレンド』だが、楽曲作者/脚本家(サンディ・ウィルソン Sandy Wilson)は、そのブロードウェイ版(54年開幕)が気に入っていなかったのだとか(ブロードウェイ側のプロデューサーと袂を別ったという記述もある)。さらに、ケン・ラッセル Ken Russel による映画版も全くお気に召さなかったらしい。そうプログラムに書いてあるのだが、ということは、今回の舞台は、かなりの程度オリジナル版にのっとった演出だったのだろう。ロンドン初演は 1953年だが、 1920年代のニースを舞台にしたこの作品は、その時点ですでに充分にノスタルジックだったはず。だから逆に、いつまで経っても古びた印象にならないのかもしれない。例えて言えば、 RKOのアステア=ロジャーズ Fred Astaire & Ginger Rogers 映画のような世界の再現で、能天気に楽しい。ロンドンのスタッフは、この手の古いミュージカルのリヴァイヴァルを手堅く仕上げるのはうまいようだ。
 『日曜日にジョージと公園で』は、楽曲/スティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim、脚本/ジェイムズ・ラパン James Lapine によるブロードウェイ・ミュージカルのリヴァイヴァル(確か日本で翻訳上演をしたことがあり、邦題が付いていたはずだが失念)。最近プロジェクションによる映像使いが盛んだが、この作品は、効果の点で画期的。例えば、昨年観た『ウーマン・イン・ホワイト THE WOMAN IN WHITE』では、装置を簡素化する代わりに映像で空間的な広がりを持たせようとしていたにすぎない。早い話、装置の代用品だ。ところが、この作品では、 1幕では、主人公ジョルジュ(英語読みジョージ)・スーラ Georges Seurat が描く絵を見せるのみならず、絶えず変化する絵の構想が歌やセリフにシンクロして表れたりもする。そして 2幕(スーラの孫のジョージが主人公となる現代)では、スーラの絵を飾る美術館の内部であることが白いセットに映し出される映像で表現されるのだが、さらに、そこで開かれたパーティの中心人物として招待客たちと会場のあちこちで話をするジョージを映像上に複数登場させ、客を演じる役者たちと絡ませる。その時、ジョージ役の役者は舞台前でそれを見ながら歌っている。そうした凝った映像表現が舞台上でけっして過剰だと感じないのは、ある種の“ギミック”として映像を使うことと、かなり観念的で難解なテーマをはらんだ作品の性格とが、うまく噛みあっているからだろう。カーテンコールの拍手は、その素晴らしい効果に対して起こったように思えた。
 英語版の『エヴィータ』を舞台で観るのは初めて。ここでのロイド・ウェバー Andrew Lloyd Webber(作曲)のメロディ作りは、全作中最も小室哲也に近いと思われる。魅力的でない不自然な節回しの部分に、無理矢理とも思える盛り上がりを持ったサビをくっつけて仕上げる、という意味で。いつも書くように、この作品は「Don't Cry for Me Argentina」がなければ単なる駄作に終わったのではないか。発案したというティム・ライス Tim Rice(作詞)がエヴァ・ペロン(エヴィータ)のどこに魅力を感じてドラマ作りをしたのかも、まるでわからない。不思議な生き方をした人物だとは思うが、その根っこが全く見えてこないので感情移入出来ないのだ。舞台を三方から囲んだ建物のセットは効果的。エヴィータ役のエレナ・ロジャー Elena Roger は微妙にパティ・ルポン Patti LuPon に似て見えた。
 さて、“ブルック・シールズ Brook Sheilds の出ていない”(笑)『シカゴ』を観たのは、金曜日の 4時半という隙間時間にやっていたから。ちなみに昨年とは劇場が違う。ブロードウェイに比べると役者が全体に若干緩いのだが(ヴェルマ役のアムラ・フェイ・ライト Amra-Faye Wright はとても疲れているように見えたが、大丈夫か)、それは承知して観たので、むしろ改めて、この作品の構成がよく出来ていることに感嘆した。こうした結果を生み出すのは、やはりボブ・フォッシー Bob Fosse の舞台魂なのか。

(8/11/2006)

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