[ゆけむり通信Vol.23]

12/21/1996
『リヴァーダンス ザ・ショウ RIVERDANCE The Show』

タップの源流とケルト・ミュージックに酔う

 『リヴァーダンス ザ・ショウ』は、いくつかのダンス・カンパニーと歌い手たちが、達者なミュージシャンたちをバックに繰り広げる、レヴュー・タイプのショウ。
 思った以上に楽しいエンタテインメントだった。

 中心になるのが、ザ・リヴァーダンス・アイリッシュ・ダンス・トゥロープ The Riverdance Irish Dance Troupeという名の大規模な、男女混合のダンス・カンパニー。
 ケルト色濃厚な音楽に乗って、タップ・ダンスの源流と言われる木靴(タップ・シューズの金属チップに当たる部分が木でできている)を鳴らすアイリッシュ・ダンスを見せてくれるわけだが、これが実に新鮮。

 上半身はほとんど直立したままで足だけを動かすというスタイルは、どこまで伝統的でどのくらい洗練されているのかわからないが、印象としてはかなりプリミティヴ。振付に工夫を凝らしてはいるものの、1人の肉体の動きで見ればヴァリエーションは当然少ない。
 が、それを補うのが――。

 一つは数。総勢30人を越えるカンパニーが一斉に木のチップで床を踏みリズムを刻み始めると、それはもう異次元の世界だ。
 もう一つは力強さ。足の打ちつけ方の激しさは、観ているこちらが痛くなるほどだが、その結果生まれる力強い響きには、大地の鼓動を思わせる迫力がある。
 そしてスピード。これは特にソロの時に顕著だが、休むことなく高速で足を鳴らし、飛び回る(ジャンプ力もすごい)。そのエネルギーには感嘆するしかない。
 珍しさだけではない魅力が、彼らのダンスには間違いなくある。

 とは言え、“タップの源流”だけでもつはずもなく、ダンスでは、もう1組、クラシックと民族舞踊を融合させたモスクワ・フォーク・バレエ・カンパニーMoscow Folk Ballet Companyというグループがあり、他にジプシー的女性ダンサー1人と黒人のタップ・ダンサー2人(プログラムには3人名前が載っているが)がゲスト扱いで登場する。

 中で、モスクワ・フォーク・バレエ・カンパニーは、男女3人ずつの小編成ながらリヴァーダンスのカンパニー以上に強い印象を残した。
 バレエとしての技術が高い上に、民族舞踊の取り入れ方が自然で魅力的。ダイナミックで楽しげだ。
 僕の中ではかなりの高得点。この辺、バレエに詳しい人の意見も聞いてみたいところ。

 他に、ケルト的コーラス・グループ、やはりケルトの民族楽器とおぼしい太鼓を演奏するグループ、それにバリトンの男性ソリストが登場。皆、それぞれに水準が高かった。

 そして、なにより、全編にわたってバックで音楽を奏で続けるオーケストラが見事。
 ドラムス、ベース、キーボード、サックス、ギター(うまい!)といった、まあよくある楽器の他に、ハーモニカ、フィドルに始まりバグパイプの一種から果ては何と呼んでいいのかわからない民族楽器の数々をそろえて、味わい深いアイリッシュ・ミュージックを聴かせてくれる。その音楽だけでもOK、と言えそうな充実ぶりだった。
 その背景に楽曲(ビル・ホェランBill Whelan)のよさがあることも忘れちゃいけない。

 各グループが単独で演じるだけでなく、様々な組み合わせの共演があり、最後には全員による一大競演も用意されている、というのも驚き。
 その共演もおざなりじゃないんだから。

 とにかく、これだけの寄り合い大所帯をまとめあげ、一本筋の通った(やがて新大陸へ渡っていくアイルランド人の歴史、というストーリー性を持つ)ショウに仕立てたスタッフ(原案モヤ・ドハーティMoya Doherty、演出ジョン・マッコーガンJohn McColgan)のエネルギーは相当なものだ。
 装置(ロバート・バラーRobert Ballagh)、照明(ルパート・マーレイRupert Murray)も神秘的な美しさをたたえて見事だった。

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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