Noel Coward Theatre/1/29/2018

[ゆけむり通信Vol.134]

1/27-1/29/2018


  • 1月27日 14:30
    『グリニング・マン THE GRINNING MAN』
    TRAFALGER STUDIO 1 14 Whitehall
  • 1月27日 19:30
    『噂のジェイミー EVERYBODY'S TALKING ABOUT JAMIE』
    APOLLO THEATRE 31 Shaftesbury Avenue
  • 1月28日 15:30
    『バーナム BARNUM』
    MENTER CHOCOLATE FACTORY 51 Southwark Street
  • 1月28日 19:00
    『間違っていく芝居 THE PLAY THAT GOES WRONG』
    DUCHESS THEATRE 5 Catherine Street
  • 1月29日 19:00
    『北国の少女 GIRL FROM THE NORTH COUNTRY』
    NOEL COWARD THEATRE 85-88 St Martin's Lane
* * * * * * * * * *

 6年半ぶりのロンドン。目玉はボブ・ディラン楽曲による『北国の少女』のウェスト・エンド公演。
 6年半ぶりでも道は覚えてるもんだな、と妙な感慨(笑)。

 『グリニング・マン』の原作はヴィクトル・ユーゴーの「L'Homme qui rit(The Man Who Laughs)」だと、プログラムを読んで知った。映画化、舞台化ともに複数回あるようだ。今回の舞台は、『戦火の馬 WAR HORSE』舞台版の演出家の1人、トム・モリス Tom Morris が手掛けている。巧みにパペットを使う辺りが、その流れだろう。
 内容は、子供の頃に口の両脇を切り裂かれて“笑って”いるように見える男の数奇な人生。昔のロンドンを舞台に、王族も絡んで、善悪や貴賤が入り交じり曖昧になっていく様が濃密に描かれて面白い。主人公がフリーク・ショウで暮らしていたことを受けて、こぢんまりした劇場を移動劇場的に装飾。登場人物を演じる役者による観客に向けてのナレーションから始まり、全体がバーレスクの出し物のように作られている。
 楽曲は、ティム・フィリップス Tim Phillips とマーク・テイトラー Marc Teitler のコンビ(作曲・作詞)に、演出のモリスと脚本のカール・グロース Carl Grose も作詞に加わっての仕事。

 『噂のジェイミー』は、ドラッグ・クイーンになりたい高校生ジェイミーの話。2011年にBBCが作った「Jamie: Drag Queen at 16」というドキュメンタリーが元だそう。
 活きのいい楽曲はダン・ギレスピー・セルズ Dan Gillespie Sells(作曲)×トム・マクレア Tom MacRae(作詞)。セルズはザ・フィーリングというバンドのヴォーカリストとして知られる人(1978年生まれ)、マクレアは作家・脚本家で、この作品の脚本も彼が書いている(1980年生まれ)。
 学校では偏見を持たれながらも、母親とその友人(女性)に温かく見守られている、という主人公の設定がユニーク。が、一方に、別れて暮らす無理解なマチズモ信奉者の父親がいるのだが。ドラッグ・クイーン専用衣装の店の店主が、彼自身もドラッグ・クイーンという立場で、いい味を出す。
 すごく優れた作品というわけではないが、わざとらしくない温かさの籠もった、後味のいいミュージカル。主演のジョン・マクレア John McCrea の不思議な魅力も印象に残る。

 『バーナム』は、サイ・コールマン Cy Coleman(作曲)×マイケル・ストュワート Michael Stewart(作詞)による1980年初演のブロードウェイ・ミュージカル。その時の主演はジム・デイル Jim Dale。翌年、ロンドンでも幕を開け、その後ツアーに出た際の舞台をBBCが録画、後にDVD化されている。そちらの主演はマイケル・クロフォード Michael Crawford。
 今をときめく“ザ・グレイテスト・ショウマン”の物語で、それをサーカスの演目としてご覧にいれるという入れ子構造は、今回のリヴァイヴァルも初演同様。演出のゴードン・グリーンバーグ Gordon Greenberg は、2016年にブロードウェイに登場した『ホリデイ・イン HOLIDAY INN』を手掛けた人。手数の多い堅実な仕事ぶり。さして天井も高くない小ぶりな劇場だが、四方に客席を巡らしてサーカス小屋に見立てている分、規模は小さいものの今回の方が気分は本格的なのかも。初演で目玉だったと言われる主演役者による綱渡りも、ちゃんとやる。楽しく観た。主演はマーカス・ブリッグストック Marcus Brigstocke。日本ではファースト・ネームを「マルクス」と書くのが通例になっているスタンダップ・コミックとしてな有名な人。どう聞いても自他ともに「マーカス」と発音している。
 ちなみに、翌日の午後、映画『ザ・グレイテスト・ショウマン THE GREATEST SHOWMAN』を観た。もちろん別ヴァーションだが、前日にバーナムの人生のあらすじを把握していたので、字幕なしでも話がわかった(笑)。

 『間違っていく芝居』は、ブロードウェイにも昨年3月に登場したコメディ(ストレート・プレイ)で、ロンドンでは2014年9月に幕を開けている。ロンドンの劇場は日曜夜はほとんど閉まっていてミュージカルの選択肢がなかったので、やむなく……と言いつつ半分は楽しみに選んだのがこれ。
 同じイギリス産のコメディでも、『ノイゼズ・オフ NOISES OFF』の洗練には及ばない。ジェイムズ・コーデン James Corden 主演の下世話な『男一人、ご主人二人 ONE MAN, TWO GUVNORS』とはテイストが似ているが、こちらの方が野暮ったい。とはいえ、笑えるが。ブロードウェイ版もそこそこ当たっているようだが、演出の感触は同じなのかな。気になる。

 『北国の少女』は昨年秋にオールド・ヴィク劇場に登場。その時にも渡英を考えたのだが、宿代が高い季節だったのと、他に観るべきミュージカルが見当たらなかったので諦めた。その公演が好評だったのだろう、幸いウェスト・エンドの劇場に移ってロングランを始めたので、宿代の安いこの時期に観に来たしだい。
 ボブ・ディラン Bob Dylan の既成楽曲を使って作られた、その意味では“ジュークボックス・ミュージカル”と呼ぶべき作品だが、成立過程が興味深く、そもそもは脚本家コナー・マクファーソン Conor McPherson にボブ・ディラン側から打診があって始まった企画らしい。その辺りの事情がプログラムにも、マクファーソンへのインタビューとして書かれている。
 熟慮の結果マクファーソンが選んだ作品の舞台はディランの生誕地ミネソタ州デュルース。時はディランの生まれる前、大恐慌の傷跡深い1934年。とある宿の食堂に集う人々の群像劇。それぞれ解決できない問題を抱えたまま、現れ、去っていく。
 ディランの楽曲は、セリフとナレーションの狭間で渦巻き、時に彼らの心情を代弁し、時に彼らを叙事的に描く。そうしたユニークな使われ方の中で、楽曲の内包するスピリチュアルな趣が際立つ。ディランの楽曲が無名の歌として改めて世に解き放たれ、救済を求めて彷徨う魂たちに呼応する。そんな場面を目撃した気のする舞台だった。
 現地時間の4月8日に2018年オリヴィエ賞が発表され、素晴らしい歌を聴かせてくれたシーラ・アティム Sheila Atim と、エキセントリックな主人公の少女を演じたシャーリー・ヘンダーソン Shirley Henderson が、それぞれ助演女優賞と主演女優賞を受賞した。

(4/29/2018)

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[ゆけむり通信Vol.97] 7/26- 7/30/2011
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