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古本の価値は中身か希少さか

 『サウンド・オブ・ミュージック THE SOUND OF MUSIC』絡みで一席うかがいます。

 この間、神保町三省堂書店の演劇本コーナーを覗いていたら、「サウンド・オブ・ミュージック」という本が目に入ってきた。手に取ってみると、マリア・トラップ著「THE STORY OF THE TRAPP FAMILY SINGERS」の翻訳、早い話、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の元になった映画『菩提樹 DIE TRAPP FAMILIE』の原作本だった。
 アララ、と思った。
 と言うのは、その数日前に、古賀書店という音楽書専門の古本屋で、やはり「THE STORY OF THE TRAPP FAMILY SINGERS」を翻訳した、これまた「サウンド・オブ・ミュージック」というタイトルの別の本を買っていたからだ。

 左がその本だが、奥付の発行日は1965年 6月 20日発行。初版だ。
 訳者の書いた「あとがき」には、こうある。
 [“THE SOUND OF MUSIC”は原作「トラップ家族合唱団物語」(中略)に基づいて作られたミュージカル・プレイで、一九五九年ニューヨークで初演、その後米各州、オランダ、ブラジル、フィンランド、南アフリカ、オーストラリヤ等で上演され、日本ではこの春東宝劇団によって上演された。この原作は以前ドイツで映画化され、一九五七年にわれわれのやっていた会社新外映が「菩提樹」と称して輸入配給した。その時私がこの原作の翻訳に当り数回その訳書は版を重ねていた。今度そのミュージカルの方が映画化され近く東京で封切られるという。この機会に新版を出したいから、あとがきを書くようにと出版社から求められた。]
 ということだから、おそらくこの本も、元は「菩提樹」というタイトルだったのだろう。ご覧のように、タイトル変更に伴って装丁(箱)も変えたとおぼしく、口絵として映画のスティルも加えられている。
 なお、引用した「あとがき」中の [オーストリラリヤ] の「ア」→「ヤ」の表記は訳者のクセらしく、本文中でも [オーストリヤ] だし、 [マリヤ] となっている。

 それはともかく。

 三省堂に並んでいた新しい方の「サウンド・オブ・ミュージック」本を見て、アララ、と思ったのは、僕の買った方の版が四六判(最も普及している単行本サイズ)で 240ページほどの本であるのに対し、そちらは A5 判(ひとまわり大きいサイズ)で厚さは1.5倍ぐらい。文字が大きめなのを差し引いてもそれなりの分量を持っていたからだ。
 どういうことだろうと思って、新しい版の訳者の「あとがき」を読んでみたら、さらなる衝撃の事実が待っていた。
 その本は2部に分かれた原書の第1部の翻訳で、第2部も近々訳出される、と書いてあったのだ。
 確かに元本は2部構成で、第1部がミュージカルになったオーストリア脱出まで、第2部はアメリカに渡ってから、となっている。なぜそれを知っているかと言うと、僕の持っている版には第2部まで入っているからだ!
 小振りな方の本に2倍にあたるはずの内容が収まっている? と言うことは何かい、こっちは抄訳ってわけかい? 抄訳も抄訳、いっそ省訳と呼んだ方がいいぐらいじゃないか!
 実はこの古本、発行時の定価 350円に 2500円の値段が付いてたんです。それだけに貴重なのだろうと、迷ったけれども買ったらこの始末だ。おまけに訳文は素人っぽいし。
 もしかしたら希少価値はあるのかもしれないが、僕は別に『サウンド・オブ・ミュージック』マニアじゃないぞ(泣)。

 ところで、トラップ・ファミリーの作ったロッジがヴァーモント州ストウにあるらしい。こちらでサイトが見られます。

(5/4/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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