劇場通いを止めるのはもはや死ぬときだ!


劇場ガム禁止令発令

〜寛容の“劣化”について〜

 なんか、こんなネタをアップするのも大人気ないかな、と思いつつ、ちょっと怖い気もするので……。

 旧天王洲アイル劇場、現天王洲銀河劇場に観劇に行きました。月曜の夜です。
 入りは七分程度か。僕の座った 2階席は半分も入ってなかったと思います。
 僕の席は最前列の、舞台に向かってやや左寄り。ぴあで買ったのですが、右隣の人との間には最後まで 2つ空席がありました。
 さて、僕の左側です。今、座席表を見て確認しながら書いていますが、 4席あります。僕が座った時点では全て空いていたのですが、開演が近づいた頃、隣の席に若い女性が座りました。その女性が今回の主役です。

 僕は、幕間でも終演後でも即座に席を立つことが多いのですが、今回も第 1幕が終わると、すぐに席を立って左側から通路に出ようとしました。すると、左隣の女性が、通してくれるのかと思いきや、正面から、「あの、ガムを噛むのを止めてもらえませんか」と言うのです。
 劇場に通い始めて 20年間(遅れてきた劇場好きなのです)、ガムを噛むなと言われたことがなかったので非常に驚き、失礼にもタメ口で尋ねてしました。
 「なんで?」

 さて、ここで、みなさんに信じていただかねばなりませんが、僕はガムをクッチャクッチャと噛む人間ではありません。むしろ控えめに、けっして口を開くことなく大人しく、場面によっては口を動かすのを止めるほど気を遣って噛んでいます。僕のガム噛みが周りの迷惑になっていないのは、年間 100回近い観劇で苦情を言われないのが何よりの証拠ではないでしょうか。文楽のような気難しげなお客さんたちの中でも、にらまれたことすらありません。なぜなら、自分も周りの人たちの動向が気になる性質(たち)だからです。劇場にあっては、いろいろな意味で“よき観客”たろうと努めていると言っても過言ではありません。以上、信じていただけましたでしょうか(笑)。
 にもかかわらずガム噛みを注意されたので、思わず「なんで?」とタメ口で訊いてしまったのです。
 彼女の答えは、こうでした。
 「だって飲食禁止ですよ」
 おいおい。自分は聴覚が非常に鋭く、たとえ口を開けずに噛んでいてもガムの音が気になるので止めてくれ、というのであれば納得します。なんだよ、飲食禁止って。
 その時点でハッと気づいたのです。そういえば、幕間になる前、ガムを口から出すために包み紙をポケットから出したのをジッと見ていたな、と。あの時に僕がガムを噛んでいることに気づいて、注意しようと身構えたのでありましょう。
 こうなると黙って引っ込むわけにはいきません。「ガムは飲食じゃないでしょう。ガム(を噛むの)は劇場では常識(的な範疇の行為)でしょ」と抗弁してしまいました(カッコ内の言葉が省略されているのは、言葉より気持ちが先走っているからです(笑))。
 「じゃあ確認してみます」というのが彼女の返答で、「そうして」(またまたタメ口! 失礼!)というのが、それに対する僕の返答です。

 劇場でガムを噛むのは眠気避け(あるいは退屈避け)で、実行している方は多いと思います。ガムやキャンディの包み紙は開演前にむいておくように(音がうるさいから)、というユーモラスなアナウンスがあるぐらいですからね。
 寛容の“劣化”ってやつでしょうか。自分の狭い常識を他人にも当てはめて、そこからの逸脱を許さない。こういう人たちが増えたら劇場も楽しいところではなくなりそうです。考えてみれば、そら恐ろしいことではあります。

 「確認してみます」と言っていたからには、劇場の人でも引き連れて抗議に来るのかとも思いましたが、彼女、第 2幕には現れませんでした。それはそれで少し残念でしたが、舞台の出来もイマイチでしたので、さっさと帰った僕でした。

(8/4/2008)

Copyright ©2008 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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