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『アーバン・カウボーイ』騒動 2

 なぜ“2”かと言うと、ミストさんの場合が“1”だから。
 3月 27日のオープンで、不入りのため翌々日の 29日に一旦はクローズしながら、 30日には再始動を決定した『アーバン・カウボーイ URBAN COWBOY』。 31日のチケットを買っていたので大慌て。というのがミストさんの「ゲキもは」話の内容。
 その感想に、 [『アーバン・カウボーイ』、僕は観られるのでしょうか] と書いたのだが、その心配を煽るような出来事が……というのが今回の僕の「ゲキもは」話。

 考えてみれば、行きの飛行機内で病人が出て急遽カナダに降りたせいでニューヨーク到着が遅れた、というところから、この話は始まっていた。おかげで、マンハッタンの宿泊場所に着いたのが午後 6時半過ぎ。その日のチケットを買うために、すぐに tktsに向かった。
 ねらいは『アーバン・カウボーイ』『ルック・オブ・ラヴ THE LOOK OF LOVE』。思った通り、どちらも半額チケットが出ていたが、飛行機の遅れもあって疲れていたので、ストーリーのないショウの『ルック・オブ・ラヴ』を買った。その判断の背景には、次のような読みもあった。
 木曜から日曜までの観劇予定の中で、空いているのは到着日の木曜夜と日曜の昼夜(金曜夜『ノー・ストリングス NO STRINGS』、土曜昼『ジプシー GYPSY』、土曜夜『ナイン NINE』はチケット購入済み)。しかし、『アーバン・カウボーイ』『ルック・オブ・ラヴ』も、他の多くのブロードウェイ作品同様、日曜の夜公演はないから、実際には、木曜夜と日曜昼のどちらでどちらを観るか、という選択になる。ところが、土日の昼公演というのは、観光客を含め、ふだん劇場に来ない人がつめかけて、比較的混むことが多い。だとしたら、いったんはクローズを考えたほど入りの悪い『アーバン・カウボーイ』を日曜昼に持ってきた方が安全だろう(つまり、半額チケットが出ない可能性が低いだろう)……。
 さて、日付は変わって、翌日の金曜午後。
 観劇スケジュールを再確認するために、プレイビル・オンラインを見ていた。ポイントは、土曜正午からの公演がある『ふたりはずっと A YEAR WITH FROG AND TOAD』の上演時間だ。 1時間半という情報に間違いがなければ、土曜 2時からの『ジプシー』の前にこの作品も観ることが出来る。該当ページを見ると、確かに、休憩込みで 1時間半と書いてある。これで土曜の 3本立て決定だ。
 ついでに、最近は日曜の昼公演が 3時ではなく 2時から始まったりする作品もあるので、『アーバン・カウボーイ』の開演時間を確認しておこうと、そのページを開いた。そして、驚いた。
 なんと、『アーバン・カウボーイ』の公演日が、月曜から土曜までとなっていて、日曜の公演がないのだ。
 一瞬パニックになった。日曜の公演がないとなると、今回は『アーバン・カウボーイ』は観られないということになる。そして、今回観られないということは、おそらく永遠に観られないということなのだ。なにしろ、トニー賞のノミネーション発表まではがんばりたい、ということで延長することにしたショウなのだから。
 どうしよう。混乱した頭で考えた。そして決心した。すでにチケットを買ってある作品の観劇日時を変更してでも観ることにしよう。最悪、買ってあったチケットが無駄になっても、この際しょうがない。
 ところが、検討してみると、変更出来る作品は 1つしかないことに気づいた。
 まず、『ジプシー』は日曜公演がない。そして、『ナイン』は、日曜公演はあるがチケット入手の困難な人気作品。『ノー・ストリングス』だけが、日曜公演があり、かつ、限定公演ながら劇場が大きいだけにチケット入手の可能性が高い。変更するなら『ノー・ストリングス』なのだ。
 となると、ここでもう 1つ問題が浮上する。『ノー・ストリングス』のチケットは自分で持っていない。ニューヨーク在住の知人がとっておいてくれたもので、前夜に電話で、劇場前で開演 15分前に待ち合わせすることを約束したばかりなのだ。
 祈るような気持ちでその知人に電話したら、幸いにもつながった。で、事情を話し、チケット代はもちろん僕が払うので、今日の今日で大変申し訳ないけれども、どなたか代わりに行ってくださる方を探していただけないだろうか、とお願いしたところ、了解してもらえた。そんなわけで、とりあえずホッとしたのだが、了解してくれた後で先方がこんなことを言った。
 『アーバン・カウボーイ』は僕が考えていた通り、確かに月曜が休みで日曜はやっていたはず。急にスケジュールを変えたんですかね……。
 新たな疑念発生。そう言えば、渡米前に上演スケジュールを確認した上で観劇スケジュールを組んだはず。到着遅れのため時間に余裕がなかったので tktsに行く前に再確認出来ず、今になってプレイビル・オンラインを見て慌てることになったが、本当のところはどうなのだろう。
 買ってあったタイムアウト・ニューヨークで調べてみると、なんと、『アーバン・カウボーイ』の休みは月曜で、日曜昼公演があることになっているではないか。さらに、オンライン・チケット予約のテレチャージで 5月 11日 15時からの公演の予約をしようとすると、これが可能。ということは、プレイビル・オンラインの情報が間違っているということなのか。
 とにかく、再び知人に電話。オンライン予約が可能という事実を根拠に、『アーバン・カウボーイ』日曜公演ありという結論を自分の中で出し、『ノー・ストリングス』は予定通り観に行かせてもらうことにした。その時点で、すでに知人が代わりに観に行く人を見つけてくれていたので、深くお詫びしながら。
 話はこれで終わらない。
 明けて土曜。『アーバン・カウボーイ』のチケットは当然のように tktsで当日券を半額で買うつもりでいたが、天気予報によると、当日である翌日曜は雷雨。雷雨の中、傘をさしてチケット買いに並ぶのはちょっとイヤだなと思い、翌日の昼公演の半額チケットが買えるサウス・ストリート・シーポートの tktsまで行って、その日の内に買っておくことにした。
 3本立て観劇の合間、出来れば少しでも休んで英気を養っておきたい貴重な時間を使って、地下鉄でダウンダウンへ。 tktsに着いて掲示板で確認すると、確かに“URBAN COWBOY”の文字。並んでいるのは 2人だけだったので、すぐに順番が来て、 1つだけ開いている窓口で、「明日の昼公演の『アーバン・カウボーイ』を 1枚」と頼んで一安心。「『アーバン・カウボーイ』 1枚だね?」と復唱する係のおじさんの顔も心なしか優しげに見える。売れない『アーバン・カウボーイ』を買ってくれるなんざあ、お前さん偉いよ、てなところか、なんて勝手な想像を巡らせる僕。
 ところが、コンピュータに向かっていた係のおじさんがこちらに向き直って言うことには、「ソールド・アウト」。思わず、「リアリー?」と陳腐な反応をしてしまい、しばし茫然。おじさんの顔も今や冷たく見えてしまう。
 傷心の帰り道、冷静になって分析。ソールド・アウトと言ったところで半額チケットのこと。元々ダウンタウンの tktsに出るチケットの枚数は少ないわけで、それが売れてしまっただけだ。掲示板に“URBAN COWBOY”の文字があったのは事実だから、日曜昼公演があることはこれで確定だし、当日ミッドタウンの tktsには半額チケットが出る可能性もある。もし出なかったら(出来れば割引クーポンを見つけた上で)劇場窓口で買えばいい。
 と、ここまで考えて、ふと思った。なぜ、『アーバン・カウボーイ』ごときのために、こんなに右往左往しているのだろう。 2ドルに上がったばかりの地下鉄代(しかも往復)と時間を無駄にしてまで。まさに“ゲキもは”。
 どんなに評判が悪かろうが不入りだろうが、とにかく自分の目で観たい。それも、出来れば安く(笑)。そのために最後まであがいている自分がおかしくなってきて、地下鉄の中で思わず含み笑い。周囲の人は、さぞ気持ち悪かったことだろう。

 結果的には、『アーバン・カウボーイ』、無事半額で観たのだが、ミストさんの「ゲキもは」話の感想に、僕はこうも書いた。
 [『ジプシー GYPSY』を観られたのはホントによかったんじゃないでしょうか。未見なので出来についてはなんとも言えませんが、なにしろバーナデット・ピータース Bernadette Peters ですから。]
 この時のうらやむ口調には予感が潜んでいたのかも。僕はバーナデット・ピータースが観られなかったのであります。という話は、また観劇記ででも。

(5/14/2003)

Copyright ©2003 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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