『パリのイギリス人』的ダンス映画

 オール・ロケーションのダンス・シーンが実に魅力的な映画、『タンゴ・レッスン THE TANGO LESSON』
 過去のどんなミュージカル映画とも、あるいはヴィデオクリップの類とも違うタッチで、ダンスの躍動感と美しさをスクリーンに描き出して、ダンス好き必見。

 イギリスの女性監督サリー・ポッター Sally Potterが自ら脚本を書き、主役を演じているが、内容が映画製作に到るまでの実人生のセミ・ドキュメンタリーになっているという刺激的な話は、パンフレットなりで読んでいただきたい。

 で、ダンス。

 ポッターが惚れ込むパリ在住の男性タンゴ・ダンサー、パブロ・ヴェロン Pablo Veron がとにかく素晴らしい。女性と組んでの切れ味鋭いタンゴはもちろん、ソロでのジーン・ケリー Gene Kelly 顔負けのアクロバティックなタップも、華麗の一語。
 ブエノスアイレスでポッターにタンゴを教える2人のダンサー、グスタヴォ・ナヴェイラ Gustavo Naveira とファビアン・サラス Fabian Salas も、愛嬌のある外見ながら、見事な足捌きを見せる。
 ポッター自身も、自らダンス・カンパニーを組織した過去を持つだけのことはあって、急速に上達してゆく様を抵抗なく演じている。
 この4人が、4人1組でタンゴを踊る長いシーンのスリリングな振付は見もの(振付/ パブロ・ヴェロン)。

 加えて、この映画は、ダンス・シーンの撮り方が素晴らしい。
 最初に出てくるダンス・シーンは劇場での男女ペアのタンゴだが、ここでの適切なフレイミングや余計な動き・切り替えのないカメラワークを観ただけで、監督がダンスを魅力的に見せる方法を熟知していることがよくわかる。
 その後に次々に登場してくるダンス・シーンの、それぞれに工夫を凝らし計算され尽くした、構図、背景、動き、には、ただただ感心するばかり。艶やかなモノクローム撮影の見事さと相まって、斬新かつロマンティックなダンス映画が誕生した(プロダクション・デザイン/ カルロス・コンティ Carlos Conti、撮影監督/ ロビー・ミューラー Robby Muller)。

 今月の13日から、東京・渋谷、ル・シネマで公開。
 この映画を観てタンゴにハマったら、次はブロードウェイで、公演期間がまた延びた『フォーエヴァー・タンゴ FOREVER TANGO』をどうぞ。

(12/3/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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