タップ・ファン必見のイヴェント in N.Y.報告

 前回こちらでお知らせしたタップの伝説的兄弟コンビ、ニコラス・ブラザーズ The Nicholas Brothers へのトリビュート・イヴェントが、4月6日カーネギー・ホールで行なわれた。
 約束通り友人の矢崎由紀子が報告を書いてくれたので、掲載します(表記は原則として原文のままです)。

 セット:舞台中央に15人編成のオーケストラ、上手に小さなテーブルと椅子が2つ。いちおう「コットンクラブ」に見立ててある。椅子は、ショウの最中ニコラス兄弟がすわるためのものだったことが、のちに判明。オーケストラの頭上に、小さなスクリーン。

 オープニング:「A列車で行こう」のオーケストラ演奏。続いて、スクリーンに2人の映画のダンスシーンが映写される。壁を蹴って一回転のアクロバティックなダンスに、客は拍手喝采。
 映写の終了と同時に、ニコラス兄弟がステージ下手より登場。もちろん、客は総立ち。3分くらい、拍手が鳴り止まず。兄弟は杖をついているけど、まだ矍鑠たるもの。
 「映画を気に入ってくれたと思うけど、ま、今宵は映画の我々は忘れて楽しんでください」という兄ファヤードのイキなコメント。いっぽう弟のハロルドは、観客の熱狂ぶりに涙ぐみ状態。彼はショウの間中、ずっと目をこすってました。
 頃合いをみはからって、司会者ビル・コスビー(!)が登場。兄弟を上手の席につかせる。

 ここから、TRIBUTEショウの始まり。(以下、番号はゲストの順番です)

 1)ボビー・ショート(エンタティナー)
 ニコラス兄弟の映画についての思い出を語る。

 2)ジミー・スライド(ダンサー)
 「自分は踊れないからスピーチする」と言って、ニコラス兄弟との思い出話をひとしきり。その後、2曲を踊る。
 私は、この人について知識がないんだけど、ビル・コスビーによれば「今世紀最高のタップダンサー」とのこと。フォックストロットふうのタップが持ち芸のよう。退場のさいは、再びスタンディングオベーション。

 3)ベン・ベリーン
 1曲目は「ジャンピングなんとか」というアップテンポの曲。その後、ニコラス兄弟にソフィスティケイテッドを教えてもらったという思い出話。2曲目は「見果てぬ夢」

 4)ゲイル・ニールソン(女性歌手)
 2曲を歌い、バンド紹介。とくに兄弟とのつながりはない模様。

 5)テディ・レビー(「ノイズ/ファンク」「ジェリーズ・ラスト・ジャム」)
 「サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」の曲でタップ。途中、女性ダンサー(ブラム・ウィジナンズ)が加わり、デュエットになる。ふたりでニコラス兄弟のスライドステップをマネたり、兄弟のテーブルのまわりをまわったりと、盛り上がる。

 6)クリスチャン・マクブライド(ベーシスト)
 上記(5)のナンバーのベースをつとめたのち、ディジー・ガレスピーのナンバーをオーケストラとともに聞かせる。

 7)モーリス・ハインズ
 「あなたたちから学んだことは、兄弟が愛し合うことだ」という主旨の長めのスピーチ。そのあと、1曲(ごめん、何を歌ったかメモをなくした)。途中、兄弟のテーブルまで行き、ファヤードの持ち芸の手踊りを誘発。おおいにウケる。
 ビル・コスビーの説明によると、彼は来年、ブロードウェイでキャブ・キャロウエイの役をやるそう。

 8)ハロルド・ニコラス
 ビル・コスビーに誘導され、ハロルドが舞台中央へ。「ミスター・ボー・ジャングル」を歌う。最後にちょっとだけタップっぽい動き。スタンディング・オベーション。

 9)サビオン・グローバー
 下手からまっすぐ上手のテーブル席のとことまで行き、抱擁。
 すぐ兄弟の目の前でタップを踏み始める。音楽はナシ。兄弟に対して、タップでいろいろな言葉を語り掛けているような感じ。
 他のアーティストが兄弟と客席を半分ずつ相手にしているような感じだったのに対し、グローバーは、ずーっと兄弟のほうを向いたまんま。オレは一晩中でも踊れるぞって感じで、10分近く踊っていたと思う。
 「タップ・ダンス・キッズ」で彼と共演したことのあるハロルドは、完全にウルウルしてました。
 踊り終えたあとは、再び兄弟と抱擁。そしてひとこもしゃべらず、下手から退場。カッコイイ!(もちろん、スタンディング・オベーション)

***インターミッション***

 二幕の開幕前に、スポンサーからのご挨拶。
 場内暗くなり、スクリーンに「ストーミー・ウェザー」のダンス・シーン。上映の最中に兄弟が登場(スタンディング・オベーション)。と、ふたりが舞台中央までやってきたところで、スクリーンに「ストーミー・ウェザー」のリナ・ホーンが映る。
 そこに下手から本人が登場し、客席は興奮のルツボ。この間、客はずっと立ちっぱなし。

 10)リナ・ホーン
 上手側にハロルド、下手側にファヤード、真ん中にホーン。ふたりの手をしっかり握ったまま、マイクの前へ(ここで客はすわる)。「ストーミー・ウェザー」撮影中の思い出話を語る。

 11)ニコラス兄弟
 兄がオーケストラを指揮、弟が歌という担当で、「エブリデイ・アイ・ハブ・ザ・ブルース」を。兄の指揮ぶりがユーモラスかつツボを心得ていて、客席は大笑い。スタンディング・オベーション。

 12)ブロワ・マイナーズ?(白人ピアニスト)
 名前は違っているかもしれません。クラシック畑の人のよう。ストライドのアレンジで、「ダイナ」を歌う。
 あとから気づいたけど、この人はグレゴリー・ハインズのピンチヒッターだったみたい。プログラムにも名前ナシ。ビル・コスビーにうながされるまで兄弟に挨拶にも行かなかったところを見ると、自分がどういうショウに出ているか、あまり認識がなかったようです。

 13)ケビン・マホガニー(歌手)
 ろうろうとした声で、2曲歌う。彼も、兄弟とは初対面のよう。

 14)サビオン・グローバー&「ノイズ/ファンク」の仲間
 前の2人でちょっとシラケ気味になったところを、サビオンが挽回。
 一幕のときと同じく、最初ひとりで出てきて兄弟の前でタップを踏み始めたサビオン。続いてカンパニーが登場し、タップのコーラスになだれこむ。最後は、全員が兄弟と抱擁。

 15)ニコラス・シスターズ
 ベン・ベリーン、ジミー・スライドが出てきて、兄弟をステージ中央へ誘う。ファヤードの紹介で、彼の2人の孫娘(12歳と10歳)が登場。デュエットのタップを踏む。これがなかなかのウマさで、客席からアンコールの声。
 ファヤードが「自分たちがデビューしたときは13歳と9歳だったけど、その数十年後、今度は孫が同じことをしている」とコメント。それをきっかけに、スクリーンに兄弟のデビュー当時の映画が映し出される。と、孫娘たちが、兄弟の歌とセリフにあわせて当てぶり。続くダンス・シーンも、映画そっくりに踊ってみせた。とくに妹のほうが愛敬たっぷりで大ウケ。

 スタンディング・オベーションになったところで、サビオンや「ノイズ/ファンク」軍団、ジミー・スライドらが舞台へ。なんかハチャメチャだけど、とりあえずみんなでタップを踏む。上手端のサビオンと下手端のスライドが、向かい合ってタップ対決(!?)を演じる場面もあり、最高に盛り上がり。
 で、これがそのままフィナーレへ。花束を贈呈された兄弟が、「また、このショウをやるぞ、リアル・スーン」と言ったところで、全員タップを踏みながら退場。
 アンコールはナシだったけど、ひとこと、VERY GOOD SHOWでありました。

 読めばわかるように、グレゴリー・ハインズはプログラムに名前があるにもかかわらず出演しなかったようだが、それでもすごい顔ぶれ。わかる人には観たくてたまらないショウだし、わからない人にはどうでもいいショウ(笑)。
 でも、やっぱ、サヴィオンのソロ・パフォーマンスとリナ・ホーンの登場シーンの演出がイカシてますね。
 矢崎、ありがとう。

 ところで今回、矢崎はタランティーノが役者で出ているリヴァイヴァル・プレイ『暗くなるまで待って Wait Until Dark』も観ていて、その模様を彼女の映画サイトで期間限定公開中。興味のある方はどうぞ。笑えます。

(4/14/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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