音楽座ミュージカル再出発のゆくえ

 先月、音楽座ミュージカルオフィスというところからダイレクトメールが届いた。
 音楽座のオリジナル・ミュージカル『泣かないで』を再び上演する、という内容で、差出人は企画者である“音楽座ミュージカルを上演する会”。朝倉摂(舞台美術家・画家)、衛紀生(演劇評論家)、北川登園(読売新聞社編集委員)という3人の方の名前がその下に書かれている。

 「公演にあたって」という短いあいさつ文に、[音楽座の解散による音楽座ミュージカルの活動停止は、大変残念]であり、[音楽座ミュージカルをもう一度復活させることは意義のある事であると考え]る、とある。
 つまり、音楽座の復活ではなく、作品としての音楽座ミュージカルを再演する、ということだ。

 公演日程が決まっていて、東京・PARCO劇場/11月1日〜30日、神戸・新神戸オリエンタル劇場/12月11日〜14日。

 キャストは全役オーディションということで、5月18、25日に審査が行なわれた後、7月から8月にかけて約1か月のレッスン、8月下旬に最終オーディション、9月から公演まで本稽古、というスケジュールが組まれている。
 ここに書かれている限りスタッフは以前と同じ。音楽/井上ヨシマサ、高田浩、美術/朝倉摂、振付/鎌田真由美、照明/服部基。ただし、脚本・演出から横山由和の名前が消えてワームホールプロジェクト名義のみ残っている。

 とてもいい企画だ。
 舞台を作り上げたスタッフが、劇団ではなく作品を惜しんで再生させようという情熱のあり方が、自然でうれしい。
 解散前にはいくつかのプロダクションに分かれて各地で公演を行ない、ミニ四季化しているように見えた音楽座が復活するよりも、こうした形で可能性を持っていた作品が再上演される方がはるかに意義があると思う。

 ただ1つ、すでにチケットを予約したうえで言わせてもらいたいことがある。

 主催・製作がTBS、パルコ、ヒューマンデザインとなっているのだが、TBSとヒューマンデザインは音楽座時代の主催・製作者でもある。そして、このダイレクトメールは、音楽座メイトというかつての会員のデータによって発送しているはずだ。
 だとすれば、音楽座解散時には詳しく説明されなかった解散に到る事情を、主催・製作者はここで明らかにする義務があるんじゃないだろうか。たとえそれが自分たちの責任じゃなかったにしても、だ。

 だって、動機はどうあれ、“音楽座”という名前を使って商売するわけでしょ。半年先の公演の、まだキャストも決まっていないチケットを買わせるわけだから。
 ニフティのシアター・フォーラム見ると、かつての音楽座ファンは素直に喜んでいるわけです。それはそうだと思う。夢、託してたはずだから。日本のオリジナル・ミュージカルという夢を。
 そんな思いを、言葉は悪いが利用して(まあ、よく言えば支えにして)公演を打とうというからには、ね、やっぱり解散の事情、きちんと説明する必要があると思いませんか。
 雑誌の記事やなんかで漏れ聞いてみんな納得しているのかもしれないが、でも、ミュージカル公演というビジネスの将来を考えるならば、けじめをつけたいところです。

 ところで、『泣かないで』。音楽座のレパートリーの中でも、題材の選び方で『アイ・ラブ・坊っちゃん』と並ぶ意欲作。原作は遠藤周作の小説「わたしが・棄てた・女」だ。
 芝居とショウ場面との質感に多少ズレがあった印象があるが、他の作品と違いメルヘン的な要素が全くないという意味で音楽座オリジナル・ミュージカルの可能性を大きく広げるはずだった。

 再演(『泣かないで'97』)に意欲を燃やすスタッフに拍手を送りたい。

(5/10/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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