映像化『キャッツ』の出来映え

 来年 1月 2日(土)20:00〜22:00 に WOWOW でオン・エアされる『キャッツ CATS』の映像版。観る機会があったので報告します。

 アンドリュー・ロイド・ウェバー Andrew Lloyd Webber の製作によるこの映像版『キャッツ』、通常の舞台公演とは異なる特別ヴァージョンだ。収録地はロンドンだが、劇場はロングラン公演中のニュー・ロンドン劇場ではなく、アデルフィ劇場(『サンセット大通り SUNSET BOULEVARD』上演にあたってロイド・ウェッバーが共同所有者となった)。その舞台に、映像用に新たにセットを組み、 1か月近くかけて撮影したという。
 したがって、このパフォーマンスには観客はいない。

 そんなわけでショウ場面の後に拍手がない。暗闇に包まれた客席の小さなイスに身を埋めながら味わうあの高揚感は、だから残念ながら得られない。
 その代わりに、猫たちと一緒に舞台の上を這い回るような臨場感が、ここにはある。猫たちの微妙な表情の変化、筋肉の動きなどがアップでくっきりと見える。
 さらに、わずかながら、映像メディアならではの処理を施して、舞台では観られない効果を生んだ部分もある。これについては賛否意見が分かれるところかもしれないが、ここは、生の舞台とは別物と割り切って観るべきなのだろう。そうでなければ、フレームに入っていない猫たちの動きが見えない(当然だが)ことなど、気になって仕方なくなる。
 でも、カット割りはもっと少なくしてほしかったなあ。

 キャストは以下の通り(役名のアルファベット順)。

 Alonzo/Jason Gardiner
 Asparagus/Tony Timber Lake
 Bombalurina/Rosemarie Ford
 Bustopher Jones/James Barron
 Cassandra/Rebecca Parker
 Coricopat/Tommi Sliiden
 Demeter/Aeva May
 Electra/Leah Sue Morland★
 Etcetera/Jo Bingham★
 Exotica/Femi Taylor★
 Grizabella/Elaine Paige
 Gus the Theatre Cat/John Mills★
 Jellylorum/Susan Jane Tanner
 Jemima/Veerie Casteleyn★
 Jennyanydots/Susie McKenna
 Macavity/Bryn Walters
 Mistoffolees/Jacob Brent
 Mungojerrie/Drew Varley
 Munkustrap/Michael Gruber
 Old Deuteronomy/Ken Page
 Pouncival/Karl Morgan
 Rumpleteazer/Jo Gibb
 Rumpus Cat/Frank Thompson
 Rum Tum Tugger/John Partridge
 Skimbleshanks/Geoffrey Garrat
 Tantomile/Kaye Brown
 Tumblebrutus/Fergus Logan
 Victoria/Phyllida Crowley Smith

 なぜアルファベット順にしたかと言うと、書き漏らさないため(笑)と、プレイビルのクレジットと比較してみるため。僕はロンドンで観たことがないのでブロードウェイ版としか比べられないのだが(東京では品川で観たが、プログラムが今手元にない)、これがけっこう違っているのだ。
 まず、★はブロードウェイ版にはない役名。逆にブロードウェイ版にあってこちらにない役名が、 Griddlebone、Growltiger、Plato、Sillabub、それに The Cats Chorus と呼ばれる男 1人、女 3人のグループ。
 役柄から言って Jemima が Sillabub に当たるのは間違いないと思う。それから E で始まるメス猫 3匹は The Cats Chorus なんじゃないかなあ。
 ブロードウェイ版にしかない役の内、 Griddlebone、Growltiger については後述するが、 Plato は全く不明。だいたいどんな役だか覚えてないんだからしょうがない。ただし、この役、ブロードウェイでは 1人の役者が Macavity、 Rumpus Cat と共に演じる 3役の内の 1つなので、おそらくアンサンブル的役だと思われる。

 問題は、 Gus the Theatre Cat。
 Gus と呼ばれるのは実は Asparagus という猫で、歌の中でも「アスパラガスを略してガス」という意味のことが言われる。この、ブロードウェイでは同一であった役を、なぜ 2つに分けたのかは分からない。が、それはまあいい。
 それよりもむしろ、 Gus がメインになるシークエンスに出てくる回想の活劇シーンがなくなっているのに驚いた。
 活劇シーン――役者猫 Gus が栄光の日々を思い出して演じる海賊物語。この劇中劇で Gus が扮するヒーローの役名が Growltiger。で、 Gus に付き添うようにしている Jellylorum が演じるヒロインが Griddlebone。
 というわけなのだが、このシーン、第 2幕最大の見せ場(時間的にもいちばん長いと思う)であるにもかかわらず、この映像版からは削られている。あの大がかりな船のセットにかかる経費を嫌ったのだろうか。
 それでもこの映像版を作ったロイド・ウェバーの真意は何?

 とまあ、いろいろあるが、これ以上の細かい比較検討探求はみなさんにお任せしたい。僕なんかよりもはるかに『キャッツ』好きの方がたくさんいらっしゃるはずだから。
 とにかく、ロイド・ウェバー作品としては『ヨセフと不思議なテクニカラーのドリームコート JOSEPH AND THE AMAZING TECHNICOLOR DREAMCOAT』と並んで例外的に楽しい『キャッツ』。キャストのレヴェルの高いこの映像版は、ロンドン版を観た人もニューヨーク版を観た人も……四季版しか知らない人はもちろん、一見の価値ありです。観たことのない人はこれを観て、で、必ず舞台も観てくださいね。

 スタッフは……まあ、観て確かめてください。年内というヴィデオソフト発売情報も詳しい日程はつかんでませんので、申し訳ない、どこかでご確認を。

 99年 1月 2日(土) 20:00〜22:00 WOWOW。考えたら、その日僕はニューヨークだ(笑)。


Elaine Paige ©POLYGRAM FILMED ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED

(11/16/1997)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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