14-15年トニー賞予想

 現地時間4月28日の朝に発表されたトニー賞ノミネーションに基いて、ミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 17シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年06-07年07-08年08-09年09-10年10-11年11-12年12-13年13-14年

 このトニー賞受賞予想は、もともとは僕の観劇記を読んでいただこうという策略で始めました。このところ個別の観劇記はめったにアップされませんが、ざっくりした感想はニューヨーク観劇リストに書くようにしていますので読んでみてください。下の候補作タイトル部分にリンクを貼ってあります。未アップの分が多々ありますが、追って近々。

 さて、毎度のお題目ですが、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことを心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、一覧のタイトル、人名は原語表記です。

 作品別受賞数は次の通り。タイトル右の数字はノミネーション数(▲はリヴァイヴァル)。
 [P]の付いた作品はプレイですが、振付賞候補に入ったので挙げてあります。この作品のノミネーション数 (1) は、その振付賞候補のみを採り上げたもので、実際にはプレイの範疇で作品賞も含め多数候補になっています。

 このシーズンに登場してノミネーションに名前の挙がらなかった作品は、(プレヴュー開始順に)『HOLLER IF YA HEAR ME』『SIDE SHOW』▲、『HONEYMOON IN VEGAS』『FINDING NEVERLAND』『IT SHOULDA BEEN YOU』『DOCTOR ZHIVAGO』。なんと6本!
 なお、今シーズンは音響デザイン賞がありません。


  • 作品賞
     『AN AMERICAN IN PARIS』
     『FUN HOME』
     『SOMETHING ROTTEN!』
     『THE VISIT』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『THE KING AND I』
     『ON THE TOWN』
     『ON THE TWENTIETH CENTURY』
  • 主演女優賞
     Kristin Chenoweth 『ON THE TWENTIETH CENTURY』
     Leanne Cope 『AN AMERICAN IN PARIS』
     Beth Malone 『FUN HOME』
     Kelli O'Hara 『THE KING AND I』
     Chita Rivera 『THE VISIT』
  • 主演男優賞
     Michael Cerveris 『FUN HOME』
     Robert Fairchild 『AN AMERICAN IN PARIS』
     Brian d'Arcy James 『SOMETHING ROTTEN!』
     Ken Watanabe 『THE KING AND I』
     Tony Yazbeck 『ON THE TOWN』
  • 助演女優賞
     Victoria Clark 『GIGI』
     Judy Kuhn 『FUN HOME』
     Sydney Lucas 『FUN HOME』
     Luthie Ann Miles 『THE KING AND I』
     Emily Skeggs 『FUN HOME』
  • 助演男優賞
     Christian Borle 『SOMETHING ROTTEN!』
     Andy Karl 『ON THE TWENTIETH CENTURY』
     Brad Oscar 『SOMETHING ROTTEN!』
     Brandon Uranowitz 『AN AMERICAN IN PARIS』
     Max von Essen 『AN AMERICAN IN PARIS』
  • 楽曲賞
     Jeanine Tesori(Music), Lisa Kron(Lyrics) 『FUN HOME』
     Sting(Music and Lyrics) 『THE LAST SHIP』
     Wayne Kirkpatrick and Karey Kirkpatrick(Music and Lyrics) 『SOMETHING ROTTEN!』
     John Kander(Music), Fred Ebb(Lyrics) 『THE VISIT』
  • 脚本賞
     Craig Lucas 『AN AMERICAN IN PARIS』
     Lisa Kron 『FUN HOME』
     Karey Kirkpatrick and John O'Farrell 『SOMETHING ROTTEN!』
     Terrence McNally 『THE VISIT』
  • 演出賞
     Sam Gold 『FUN HOME』
     Casey Nicholaw 『SOMETHING ROTTEN!』
     John Rando 『ON THE TOWN』
     Bertlett Sher 『THE KING AND I』
     Christopher Wheeldon 『AN AMERICAN IN PARIS』
  • 振付賞
     Joshua Bergasse 『ON THE TOWN』
     Christopher Gattelli 『THE KING AND I』
     Scott Graham & Steven Hoggett 『THE CURIOUS INCIDENT OF THE DOG IN THE NIGHT-TIME』
     Casey Nicholaw 『SOMETHING ROTTEN!』
     Christopher Wheeldon 『AN AMERICAN IN PARIS』
  • 編曲賞
     Christopher Austin, Don Sebesky, Bill Elliott 『AN AMERICAN IN PARIS』
     John Clancy 『FUN HOME』
     Larry Hochman 『SOMETHING ROTTEN!』
     Rob Mathes 『THE LAST SHIP』
  • 装置デザイン賞
     Bob Crowley and 59 Productions 『AN AMERICAN IN PARIS』
     David Rockwell 『ON THE TWENTIETH CENTURY』
     Michael Yeargan 『THE KING AND I』
     David Zinn 『FUN HOME』
  • 衣装デザイン賞
     Gregg Barnes 『SOMETHING ROTTEN!』
     Bob Crowley 『AN AMERICAN IN PARIS』
     William Ivey Long 『ON THE TWENTIETH CENTURY』
     Catherine Zuber 『THE KING AND I』
  • 照明デザイン賞
     Donald Holder 『THE KING AND I』
     Natasha Katz 『AN AMERICAN IN PARIS』
     Ben Stanton 『FUN HOME』
     Japhy Weideman 『THE VISIT』

 毎年いろいろと疑問の浮かぶトニー賞ではありますが、今年のノミネーションは疑問だらけ。
 とにかく、『ネバーランド FINDING NEVERLAND』が全く候補にならなかったのは、裏で何か悪意が働いているのかと勘ぐりたくなるほど不思議。僕の中では作品賞も含め最有力作品の1つだったのに(ま、観る目がないと言われればそれまでですが、そこそこチケットは売れているようだし、このまま意地でも続けてヒットさせてほしいところ)。
 リヴァイヴァル作品賞の候補が3本しか挙がらなかったことも不思議。終わってしまった『サイドショウ SIDE SHOW』はともかくとして、始まって間もない『恋の手ほどき GIGI』は候補に入れてもよかったのでは? そんなにひどい作品でもないし。
 助演女優賞・助演男優賞の候補が少数の作品に集中しているのも、どうかと思う。
 逆に言うと、楽曲がガーシュウィン・ナンバーばかりで、MGM黄金時代のミュージカル映画を元にした、“ほとんどリヴァイヴァル”と言ってもいい、モダン・バレエ的ダンスを主体にした『巴里のアメリカ人 AN AMERICAN IN PARIS』を、これほど持ち上げる必要があるのだろうか(あのイギリス的“芸術趣味”がお好み?)。
 早い話、所詮、狭い業界内の賞なのですから、ノミネーションぐらいは多少バラ撒いて、公演中の数多くの舞台が注目された方がいいと思うわけですよ。
 ……と、いつも以上に困惑しながら各賞の検討に入りますが、そんなこんなで、やる気も下がり気味。『巴里のアメリカ人』に反発を覚えつつ(別に作品が嫌いなわけではない。ちょっと“気取り”が気になるが)予想するので、まあ、今年は当たらないんじゃないでしょうか(笑)。

 作品賞で、まず躓く。『巴里のアメリカ人』が、楽曲賞を獲ることが出来ないから逆にここで獲るのか。あるいは、10年前の受賞作『スパマロット MONTY PYTHON'S SPAMALOT』によく似た『何か怪しい! SOMETHING ROTTEN!』が獲るのか。それとも、カンダー&エブ(楽曲)、マクナリー(脚本)、リヴェラ(主演女優)とレジェンドたちがガッツリ組んだ『老貴婦人の訪問 THE VISIT』に行くのか。
 僕は、規模が小さいことを除けばオリジナリティの点でも充実度でも満足のいく『ファン・ホーム FUN HOME』に1票を投じるが。

 リヴァイヴァル作品賞は、『王様と私 THE KING AND I』『特急二十世紀号に乗って ON THE TWENTIETH CENTURY』だろう。
 『オン・ザ・タウン ON THE TOWN』も悪くないが、早く始まった分、印象が薄れた。

 主演女優賞は、今年も激戦。クリスティン・チェナウェス(『特急二十世紀号に乗って』)、ケリ・オハラ(『王様と私』)、チタ・リヴェラ(『老貴婦人の訪問』)という強力なヴェテラン勢に、リアン・コープ(『巴里のアメリカ人』)、ベス・マローン(『ファン・ホーム』)の新興勢力が挑む、という図。
 スター女優らしい華やかな熱演という点でチェナウェスが一歩リードか。もちろん、地味な題材に厚みと彩りを与えるリヴェラの存在感も素晴らしい。ヒロインであると同時に狂言回しでもある難役を見事にこなしているオハラだが、2005年以来10年間で5回候補になりながら(1回は助演女優賞)1回も受賞していない。最早これはジンクスの域。個人的には、小品ながら散漫になりかねない舞台をきっちり束ねるベス・マローン(『ファン・ホーム』)の健闘を推す。ロイヤル・バレエのスターであるリアン・コープには、あえてこの賞をあげる必要はないのでは?

 主演男優賞にも、『巴里のアメリカ人』からロバート・フェアチャイルドがノミネーション。この人もバレエ畑の人(ニューヨーク・シティ・バレエ)で、ここであえてミュージカルの主演男優として称揚する必要があるのか疑問。が、女優も男優もノミネーションに持ってくるってことは獲らせたいのか……。
 てなことは無視して、力が一段上のマイケル・サーヴェリス(『ファン・ホーム』)かブライアン・ダーシー・ジェイムズ(『何か怪しい!』)に行くのが順当。トニー・ヤズベック(『オン・ザ・タウン』)も実力は充分だし力演だが、主演男優って感じではない。僕は、歌がやや弱いものの、ケリ・オハラと互角に渡り合って難役を魅力的にこなしたケン・ワタナベに1票。

 助演女優賞は、小品『ファン・ホーム』から3人。主演女優候補のベス・マローンが成人したヒロインだが、ヒロインの子供時代がシドニー・ルーカス、学生時代がエミリー・スケッグズ、ヒロインの母がジュディ・キューン。誰1人欠けても成り立たない小さなカンパニーだけに、3人全員にあげたい。
 が、ここは、『恋の手ほどき』からの唯一のノミネーションで、『ライト・イン・ザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』(主演女優賞受賞)以降はミュージカル出演の度に候補になってきたヴィクトリア・クラークが獲るのではないか。ルーシー・アン・マイルズ(『王様と私』)はオフの『ヒア・ライズ・ラヴ HERE LIES LOVE』でイメルダ・マルコスを演じて注目された人。今回は役柄に対してやや成熟しすぎの印象。

 助演男優賞でも『巴里のアメリカ人』から2人が候補に。ブランドン・ウラノウィッツ、マックス・フォン・エッセン、共に好演だが、さすがにノミネーションまでだろう。ここは、やはりダブルで候補になった『何か怪しい!』の強烈な2人、クリスチャン・ボールかブラッド・オスカーで決まるはず。前者は2012年の『ピーターと星の守護団 PETER AND THE STARCATCHER』でこの賞を得ているが、一度観たら忘れられない個性。ブラッド・オスカーは、この賞の候補になった『プロデューサーズ THE PRODUCERS』の時と印象の被る、かなり“怪しい”役で、今回も強力。
 アンディ・カール(『特急二十世紀号に乗って』)のコメディ演技も熱が入っているが、候補までと見る。

 楽曲賞は、『巴里のアメリカ人』が入り込めない数少ないカテゴリーの1つ。ここは、『ファン・ハウス』(ジニーン・テソーリ&リサ・クロン)か『老貴婦人の訪問』(ジョン・カンダー&フレッド・エブ)に獲らせたい。が、パロディ色濃厚な『何か怪しい!』を面白がる審査員も多そう。
 スディング(『ラスト・シップ THE LAST SHIP』)も健闘したが、いかんせん舞台の出来がイマイチだった。

 脚本賞『巴里のアメリカ人』(クレイグ・ルーカス)が獲るかどうかが(僕にとっては)1つの分かれ道。映画の時代設定を第二次大戦直後に変え、戦争で傷ついた若者の群像劇にしたのは手柄だが、とはいえ元の映画もモダン・バレエ寄りのダンス・ミュージカルだからな。
 そこを無視して他の3作について言うと――、全くのオリジナルという点で『何か怪しい!』(カレイ・カークパトリック&ジョン・オファレル)、複雑な素材を原作コミック(“グラフィック・ノヴェル”と表現されている)の語り口を生かして見事に舞台化してみせた点で『ファン・ホーム』(リサ・クロン)、半世紀前のシニカルな戯曲をロマンティックなミュージカルに仕上げた手腕という点で『老貴婦人の訪問』(テレンク・マクナリー)、となる。迷った末の予想は上の一覧の通り。

 演出賞は、『巴里のアメリカ人』(クリストファ・ウィールドン)が獲りそうだ。というのも、この作品、モダン・バレエ寄りのダンス・ミュージカルなので演出と振付が通常のミュージカル以上に不即不離。で、振付賞は必ず獲ると思うから、ここも獲る、という三段論法。うれしくない(笑)。
 なので、個人的1票は、『巴里のアメリカ人』の対極にある小品『ファン・ホーム』(サム・ゴールド)に。よく出来ている。

 振付賞は、そんなわけで間違いなくクリストファ・ウィールドン(『巴里のアメリカ人』)が獲るだろう。ブロードウェイがロイヤル・バレエに頭を垂れる体だ。
 同じモダン・バレエ系ならジョシュア・バーガス(『オン・ザ・タウン』)の仕事も実のところ遜色ない。と言うか、過去の同作品のリヴァイヴァルに比べ、オリジナルの精神に立ち返ったように見えた今回のプロダクションは、ダンスに清々しさがあった。とはいえ、未見のプレイを除けば、どれが獲ってもおかしくない出来の中で、『巴里のアメリカ人』が一番華麗に見えるのも間違いない。

 編曲賞『巴里のアメリカ人』(クリストファ・オースティン&ドン・セベスキー&ビル・エリオット)に行くのか。ガーシュウィン・ナンバーをひたすら流麗に聴かせるのだが、モダン・バレエ的趣向を是とするのなら、これも是とされる可能性大。
 僕は、繊細かつユーモラスで楽しくもある(子供たちによるジャクソン5風ナンバーもグルーヴィに聴かせる)小編成の『ファン・ホーム』(ジョン・クランシー)に1票。

 装置デザイン賞は、『巴里のアメリカ人』(ボブ・クロウリー&59プロダクションズ)が、大掛かり、かつ華麗で、普通に有力。
 対抗は08年に受賞した『南太平洋 SOUTH PACIFIC』の流れで『王様と私』(マイケル・イヤーガン)。

 衣装デザイン賞は、不思議な感じでユーモラスな『何か怪しい!』(グレッグ・バーンズ)と、08年に受賞した(以下同)『王様と私』(キャサリン・ズーバー)に。

 照明デザイン賞は、『老貴婦人の訪問』(ジャフィ・ワイドマン)と、08年に受賞した(以下同)『王様と私』(ドナルド・ホールダー)に。

 トニー賞の発表は現地時間の6月7日(日)夜の予定です。

(5/5/2015)


 トニー賞の結果はこちら


Copyright ©2015 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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