10-11年トニー賞予想

 現地時間 5月 3日の朝に発表されたトニー賞ノミネーションに基いて、ミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 13シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年06-07年07-08年08-09年09-10年

 このトニー賞受賞予想は、そもそもは僕の観劇記を読んでいただこうという策略だったのですが、このところ個別の観劇記はめったにアップされませんので(笑)、とりあえずは、ここここここで、簡単な印象批評を読んでみてください。

 さて、毎度のお題目ですが、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことを心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 このシーズンに登場してノミネーションに名前の挙がらなかった作品は、『RAIN』『ELF』『THE PEE-WEE HERMAN SHOW』の 3本(※追記:正しくは 4本。春の新作『WONDERLAND』のことを落としていました。トニー賞ノミネーション発表後の 5/15にクローズしています。ホリデイ・シーズンの限定公演ではありませんでした)。と言っても、いずれもホリデイ・シーズンの限定公演だったもので、ハナからトニーは目指してなかったと思われます。その内、『RAIN』だけは客足が落ちないのか、劇場を替えて公演を続けていますが。
 なお、『BRIEF ENCOUNTER』はプレイとして扱われました。まあ、当然ですが。
 さらに付け加えておくと、『SPIDER-MAN:TURN OFF THE DARK』は、まだ正式オープンに到っていないので、今回のトニー賞の対象になっていません。念のため。


  • 作品賞
     『THE BOOK OF MORMON』
     『CATCH ME IF YOU CAN』
     『THE SCOTTSBORO BOYS』
     『SISTER ACT』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『ANYTHING GOES』
     『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
  • 主演女優賞
     Sutton Foster 『ANYTHING GOES』
     Beth Leavel 『BABY IT'S YOU!』
     Patina Miller 『SISTER ACT』
     Donna Murphy 『THE PEOPLE IN THE PICTURE』
  • 主演男優賞
     Norbert Leo Butz 『CATCH ME IF YOU CAN』
     Josh Gad 『THE BOOK OF MORMON』
     Joshua Henry 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Andrew Rannells 『THE BOOK OF MORMON』
     Tony Sheldon 『PRISCILLA QUEEN OF THE DESERT』
  • 助演女優賞
     Laura Benanti 『WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』
     Tammy Blanchard 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Victoria Clark 『SISTER ACT』
     Nikki M. James 『THE BOOK OF MORMON』
     Patti LuPone 『WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』
  • 助演男優賞
     Colman Domingo 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Adam Godley 『ANYTHING GOES』
     John Larroquette 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Forrest McClendon 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Rory O'Malley 『THE BOOK OF MORMON』
  • 演出賞
     Rob Ashford 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Kathleen Marshall 『ANYTHING GOES』
     Casey Nicholaw and Trey Parker 『THE BOOK OF MORMON』
     Susan Stroman 『THE SCOTTSBORO BOYS』
  • 振付賞
     Rob Ashford 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Kathleen Marshall 『ANYTHING GOES』
     Casey Nicholaw 『THE BOOK OF MORMON』
     Susan Stroman 『THE SCOTTSBORO BOYS』
  • 楽曲賞
     Trey Parker, Robert Lopez and Matt Stone(Music & Lyrics) 『THE BOOK OF MORMON』
     John Kander and Fred Ebb(Music), Lucy Prebble(Lyrics) 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Alan Menken(Music), Glenn Slater(Lyrics) 『SISTER ACT』
     David Yazbek(Music & Lyrics) 『WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』
  • 脚本賞
     Alex Timbers 『BLOODY BLOODY ANDREW JACKSON』
     Trey Parker, Robert Lopez and Matt Stone 『THE BOOK OF MORMON』
     David Thompson 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Cheri Steinkellner, Bill Steinkellner and Douglas Carter Beane 『SISTER ACT』
  • 編曲賞
     Doug Besterman 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Larry Hochman 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Larry Hochman and Stephen Oremus 『THE BOOK OF MORMON』
     Marc Shaiman & Larry Blank 『CATCH ME IF YOU CAN』
  • 装置デザイン賞
     Beowulf Boritt 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Derek McLane 『ANYTHING GOES』
     Scott Pask 『THE BOOK OF MORMON』
     Donyale Werle 『BLOODY BLOODY ANDREW JACKSON』
  • 衣装デザイン賞
     Tim Chappel & Lizzy Gardiner 『PRISCILLA QUEEN OF THE DESERT』
     Martin Pakledinaz 『ANYTHING GOES』
     Ann Roth 『THE BOOK OF MORMON』
     Catherine Zuber 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
  • 照明デザイン賞
     Ken Billington 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Howell Binkley 『HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』
     Peter Kaczorowski 『ANYTHING GOES』
     Brian MacDevitt 『THE BOOK OF MORMON』
  • 音響デザイン賞
     Peter Hylenski 『THE SCOTTSBORO BOYS』
     Steve Canyon Kennedy 『CATCH ME IF YOU CAN』
     Brian Ronan 『ANYTHING GOES』
     Dan Moses Schreier 『THE BOOK OF MORMON』

 今シーズンのトニー賞には大きな特徴が 2つある。
 1つは、先に書いたが、いろんな意味で最大の話題作である『スパイダーマン SPIDER-MAN:TURN OFF THE DARK』が対象になっていないこと。ブロードウェイで上演されている新作にもかかわらず、トニー賞とは関係ないのだからヘンな感じだ(CBSの放送で、この作品に触れるのかどうか興味津々)。
 もう 1つの特徴は、正式オープンからわずか 1か月半足らずで幕を下ろした『スコッツボロ・ボーイズ THE SCOTTSBORO BOYS』のノミネーションの数が、作品別で 2番目の多さになっていること。短命に終わった作品が候補になった例は過去にも少なからずあるが、これほど多いノミネーションを得るのは珍しい。
 と、変わったところのある今シーズンのトニー賞だが、春になってドッと出た新作に充実作が多く、近年になく楽しいシーズンになった。それだけに、逆に言うと予想が難しいわけだが。

 作品賞は、『モルモン書 THE BOOK OF MORMON』『アヴェニューQ AVENUE Q』『サウス・パーク SOUTH PARK』組)と『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン CATCH ME IF YOU CAN』『ヘアスプレイ HAIRSPRAY』組)の一騎打ちだと思っていたのだが、楽曲・脚本・演出あたりに全く絡んでいないところを見ると、後者の評価は低いのか。となると『モルモン書』で決まりか? あの内容でも? 仏教徒の日本人としては何の問題もないが(笑)。
 内容は素晴らしかったが短命だった『スコッツボロ・ボーイズ』は、さすがにノミネーションまでだろう。『シスター・アクト SISTER ACT』はノミネーションそのものにちょっと驚いた。

 候補が 2作しかないリヴァイヴァル作品賞は、『エニシング・ゴーズ ANYTHING GOES』で決まり。候補作がもっと多かったとしても筆頭はこれだ、と思わせる充実ぶり。

 珍しく、候補が枠の 5人に満たない主演女優賞だが、これも、候補が何人いようと、今回は『エニシング・ゴーズ』のサットン・フォスター。同舞台の楽しさの半分はフォスターのソング&ダンスにある。これがブロードウェイ・ミュージカルの主演女優だ、と納得させられる輝き。
 他の 3人も、それぞれ持ち味を生かして魅力があるが、今回ばかりはフォスターには及ばない。

 主演男優賞は、特異なキャラクターを愛嬌たっぷりに演じる『モルモン書』のジョシュ・ガッドか。『モルモン書』もう 1人の主演者アンドリュー・ラネルズの底の浅い好青年ぶりも、かなりいいが、同作品で争ったら前者に行くだろう。
 個人的には、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』で、派手な詐欺師役と対峙して、受けの演技で舞台を支える FBI捜査官役(映画で言うとトム・ハンクス Tom Hanks の役)ノーバート・レオ・バッツに 1票。もちろん、『プリシラ PRISCILLA QUEEN OF THE DESERT』を引っ張ってシドニー→ロンドン→ニューヨークと巡ってきたトニー・シェルドンが獲ることも大いにありうる。

 助演女優賞は、作品の勢いの後押しもあって、『モルモン書』のニッキ・M・ジェイムズが獲るかも。
 僕は、予想外のコメディエンヌぶりで楽しませてくれた『神経衰弱ぎりぎりの女たち WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』のローラ・ベナンティの熱演を推したい。

 渋いところが並ぶ助演男優賞の中にあって、一際アクの強い演技で印象深かったのが、『スコッツボロ・ボーイズ』のコールマン・ドミンゴ。個人的には彼を推すが、イギリス流の軽妙なコメディ演技をイギリスからやって来て披露した『エニシング・ゴーズ』のイギリス人役アダム・ゴッドリーが獲る気がする。
 あるいは、『努力しないで出世する方法 HOW TO SUCCEED IN BUSINESS WITHOUT REALLY TRYING』の社長役ジョン・ラロケットが持っていくか。

 演出賞『モルモン書』だろう。僕は『スコッツボロ・ボーイズ』のスーザン・ストロマンの冒険心に敬意を表したい。

 振付賞『努力しないで出世する方法』のロブ・アシュフォード(とダンサー陣)のがんばりが評価されるべきだと思う。と言いつつ、キャスリーン・マーシャル『エニシング・ゴーズ』の華麗なダンスに 1票。
 しかし、演出賞振付賞の候補が、ほぼ同じというのも珍しい。振付家出身の演出家が増えた証しか。

 楽曲賞は、このノミネーションからだと『モルモン書』しかないか。しかし、なぜ、この 4作なのだろう。
 僕は『スコッツボロ・ボーイズ』でカンダー&エブが見せた衰えぬ意欲に 1票を。

 脚本賞も、流れから言って『モルモン書』だろう。
 僕は、オフと合わせて都合 3度観た『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン』のパンク精神に 1票。

 編曲賞『モルモン書』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』

 装置賞『エニシング・ゴーズ』の船旅気分か。個人的には、建国初期のアメリカの気分を醸し出していた『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン』の悪趣味スレスレな劇場内部が忘れがたい。

 衣装賞は、すんなり『プリシラ』でどうでしょう。あるいは、『努力しないで出世する方法』の 60年代風味で。

 照明賞は、『モルモン書』『努力しないで出世する方法』

 音響賞は、『モルモン書』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』

 以上、今シーズンの受賞予想でした。

 作品賞のところでも書いたが、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のノミネーションが少ない。作品賞に挙がりながら、残りは主演男優・編曲・音響の 3つだけって? と疑問が残る。が、まあ、こういうのってトニー賞のみならず、この手の賞にはありがちなことだから。言い出すとキリがない。
 ともあれ、今年の授賞式は楽しいはず。ショウ場面が華やかな作品が多いから。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 12日(日)夜の予定です。さて、蜘蛛男の処遇やいかに。一番の楽しみはそれか?(笑)

(5/6/2011)
(revised 6/13/2011)


 トニー賞の結果はこちら


Copyright ©2011 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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