09-10年トニー賞予想

 現地時間 5月 5日の朝に発表されたトニー賞ノミネーションに基いて、ミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 12シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年06-07年07-08年08-09年

 このトニー賞受賞予想は、そもそもは僕の観劇記を読んでいただこうという策略だったのですが、このところ個別の観劇記はめったにアップされませんので(笑)、とりあえずは、ここここここここここで、簡単な印象批評を読んでみてください。

 さて、毎度のお題目ですが、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことを心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 このシーズンに登場してノミネーションに名前の挙がらなかった作品は、『BYE BYE BIRDIE』▲だけです。


  • 作品賞
     『AMERICAN IDIOT』
     『FELA!』
     『MEMPHIS』
     『MILLION DOLLAR QUARTET』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『FINIAN'S RAINBOW』
     『LA CAGE AUX FOLLES』
     『A LITTLE NIGHT MUSIC』
     『RAGTIME』
  • 主演女優賞
     Kate Baldwin 『FINIAN'S RAINBOW』
     Montego Glover 『MEMPHIS』
     Christiane Noll 『RAGTIME』
     Sherie Rene Scott 『EVERYDAY RAPTURE』
     Catherine Zeta-Jones 『A LITTLE NIGHT MUSIC』
  • 主演男優賞
     Kelsey Grammer 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Sean Hayes 『PROMISES, PROMISES』
     Douglas Hodge 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Chad Kimball 『MEMPHIS』
     Sahr Ngaujah 『FELA!』
  • 助演女優賞
     Barbara Cook 『SONDHEIM ON SONDHEIM』
     Katie Finneran 『PROMISES, PROMISES』
     Angela Lansbury 『A LITTLE NIGHT MUSIC』
     Karine Plantadit 『COME FLY AWAY』
     Lillias White 『FELA!』
  • 助演男優賞
     Kevin Chamberlin 『THE ADDAMS FAMILY』
     Robin De Jesus 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Christopher Fitzgerald 『FINIAN'S RAINBOW』
     Levi Kreis 『MILLION DOLLAR QUARTET』
     Bobby Steggert 『RAGTIME』
  • 演出賞
     Christopher Ashley 『MEMPHIS』
     Marcia Milgrom Dodge 『RAGTIME』
     Terry Johnson 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Bill T. Jones 『FELA!』
  • 振付賞
     Rob Ashford 『PROMISES, PROMISES』
     Bill T. Jones 『FELA!』
     Lynne Page 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Twyla Tharp 『COME FLY AWAY』
  • 楽曲賞
     Andrew Lippa(Music & Lyrics) 『THE ADDAMS FAMILY』
     Adam Cork(Music), Lucy Prebble(Lyrics) 『ENRON』(play)
     Branford Marsalis(Music) 『FENCES』(play)
     David Bryan(Music), Joe DiPietro, David Bryan(Lyrics) 『MEMPHIS』
  • 脚本賞
     Dick Scanlan and Sherie Rene Scott 『EVERYDAY RAPTURE』
     Jim Lewis & Bill T. Jones 『FELA!』
     Joe DiPietro 『MEMPHIS』
     Colin Escott and Floyd Mutrux 『MILLION DOLLAR QUARTET』
  • 編曲賞
     Jason Carr 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Aaron Johnson 『FELA!』
     Jonathan Tunick 『PROMISES, PROMISES』
     Daryl Waters & David Bryan 『MEMPHIS』
  • 装置デザイン賞
     Marina Draghici 『FELA!』
     Christine Jones 『AMERICAN IDIOT』
     Derek McLane 『RAGTIME』
     Tim Shortall 『LA CAGE AUX FOLLES』
  • 衣装デザイン賞
     Marina Draghici 『FELA!』
     Santo Loquasto 『RAGTIME』
     Paul Tazewell 『MEMPHIS』
     Matthew Wright 『LA CAGE AUX FOLLES』
  • 照明デザイン賞
     Kevin Adams 『AMERICAN IDIOT』
     Donald Holder 『RAGTIME』
     Nick Richings 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Robert Wierzel 『FELA!』
  • 音響デザイン賞
     Jonathan Deans 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Robert Kaplowitz 『FELA!』
     Dan Moses Schreier and Gareth Owen 『A LITTLE NIGHT MUSIC』
     Dan Moses Schreier 『SONDHEIM ON SONDHEIM』

 まず初めにお断りしておくと、トニー賞の締め切りギリギリに始まった『EVERYDAY RAPTURE』は現時点で未見です。ご了承ください(ノミネートされた部門が少なくて助かった。ま、ソロ・パフォーマンスですからね)。
 さて、今シーズンの最重要作は間違いなく『フェラ! FELA!』なのだが、同作品を含む今シーズンの多くの新作には共通の特殊事情がある。それが楽曲賞のノミネーションに如実に表れた。何かと言うと、楽曲がオリジナルだと認められないミュージカルだ、ということだ。『アメリカン・イディオット AMERICAN IDIOT』はグリーン・デイ Green Day が、『カム・フライ・アウェイ COME FLY AWAY』はフランク・シナトラ Frank Sinatra が、『フェラ!』はフェラ・クティ Fela Anikulapo Kuti が、『ミリオン・ダラー・カルテット MILLION DOLLAR QUARTET』はエルヴィス・プレスリー Elvis Presley、ジョニー・キャッシュ Johnny Cash、カール・パーキンス Carl Perkins、ジェリー・リー・ルイス Jerry Lee Lewis が、『ソンダイム・オン・ソンダイム SONDHEIM ON SONDHEIM』はスティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim が、それぞれ過去に書いたり歌ったりした楽曲で成り立っている。つまり、(最近は、もう当たり前になったからか言わなくなった気がするが)“ジュークボックス・ミュージカル”というわけだ。そうでない新作ミュージカルは 2作しかないので、プレイの楽曲までが候補になってしまっている。でもねえ、 92-93年シーズンに『トミー THE WHO'S TOMMY』の楽曲が候補になり、しかも受賞していることを考えると、『アメリカン・イディオット』は候補になってもいいんじゃないかな、と思うが。
 ともあれ、そんなわけで、今シーズンはちょっと異例。で、それが作品賞に影を落とすのか落とさないのか、そのあたりが気になるところではある。

 作品賞は、冒険的な『フェラ!』 1本で。前述したように楽曲がオリジナルではないが、 05-06年に同条件で『ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS』が獲っているし、問題なしとしたい。
 対抗となるべき『アメリカン・イディオット』は 1幕もので脚本的に物足りないし、『メンフィス MEMPHIS』も脚本に大きな穴がある。ま、逆転があるとすれば後者だと思うが。『ミリオン・ダラー・カルテット』は論外だろう。

 リヴァイヴァル作品賞は今年は難しい。
 早々と終わった『フィニアンの虹 FINIAN'S RAINBOW』『ラグタイム RAGTIME』を無視すれば一騎打ちになるのだが、その消えた 2作の出来がよかったからなあ。あと、逆輸入された『ラ・カージュ・オ・フォール LA CAGE AUX FOLLES』は、ロンドン版を先に観ていて、そちらの印象が非常によかったので、ブロードウェイ版を自分が過小評価している可能性があるのも気になる。
 と迷った挙句、上記の予想に。やはり、『ラグタイム』を強く推したい。実際の票は上演中の 2作に行く可能性が高いだろう。『リトル・ナイト・ミュージック A LITTLE NIGHT MUSIC』も完成度は高いのだが、ノミネーションが役者に偏っているところをみると、投票者の支持を得にくいのかも。

 主演女優賞は今年も激戦。
 が、ここでも『ラグタイム』を推す。マザー役クリスティアン・ノールの凛とした演技は素晴らしかった。『フィニアンの虹』のケイト・ボールドウィンも推したいが、なんだかんだ言って、多くの票はオーラの強いキャサリン・ゼタ・ジョーンズ(『リトル・ナイト・ミュージック』)に行くのではないか。
 この項、発表前に『EVERYDAY RAPTURE』を観て気が変わったら改訂します(笑)。

 主演男優賞『フェラ!』のサール・ナジャで何の問題もない。個人的には予想外の好演だった『プロミセス、プロミセス』のショーン・ヘイズを推しておく。
 『ラ・カージュ・オ・フォール』の 2人も獲って不思議はないが、『メンフィス』のチャド・キンボールは、やや主演者としての魅力に欠ける。

 助演女優賞は超ベテランの 2人にしてみた。
 ちなみに、『カム・フライ・アウェイ』からの候補者は、観た回が代役だったので事実上未見。

 助演男優賞はクセの強い役者が並んだ。
 『フィニアンの虹』で哀愁漂うコメディ演技を見せたクリストファ・フィッツジェラルドに獲らせたい。が、『ラグタイム』で、主演女優賞候補ノールと共に、その弟役で物語を下支えしたボビー・ステッガートが評価されそう。

 演出賞『フェラ!』『ラグタイム』で、ひとつよろしくお願いしたい。
 と言うか、おわかりのように、今回は基本この 2作を推してます(笑)。

 振付賞『フェラ!』『プロミセス、プロミセス』で。どちらもダンサーたちの献身的な動きを存分に生かした、実にキレのいいダンスを見せてくれている。
 残る 2作も、もちろん悪くないし、ことに、『カム・フライ・アウェイ』のトワイラ・サープは、ここで獲らないと面目が保てないので、その辺への配慮があるかもしれないが……。

 楽曲賞『メンフィス』しかあるまい。
 プレイが獲ったらゴメンなさい、だ。

 脚本賞は、ひとまず『フェラ!』でまとめておく。
 ここも、発表前に『EVERYDAY RAPTURE』を観て気が変わったら改訂します(笑)。

 編曲賞『フェラ!』『メンフィス』で。

 装置賞『アメリカン・イディオット』が獲るとすれば、ここ。が、『ラグタイム』の鉄骨櫓も美しかった。

 衣装賞『フェラ!』『ラグタイム』で。

 照明賞は、装置と込みで『アメリカン・イディオット』の可能性あり。が、ここも対抗に『ラグタイム』

 音響賞は、豪放な『フェラ!』と繊細な『リトル・ナイト・ミュージック』で。

 正直、個人的に脚本の不備を感じて評価を低くしている『メンフィス』が実際の投票者にどう受け取られているのかがよくわからないので、それが最大の不安材料。……って、何の不安だ(笑)。あと、すでに終わっている『ラグタイム』関係の候補をことごとく受賞予想で推したが、普通に考えたら、上演中の作品に回す可能性も高い。今回は大ハズしかぁ?
 しかし、こうしてまとめて眺めてみると、オリジナル楽曲作品が少ないという大きな問題はあったものの、思ったほど悪いシーズンではなかったのかも、という気もする。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 13日(日)夜の予定です。

(5/10/2010)


 トニー賞の結果はこちら


Copyright ©2010 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next


[HOME]