08-09年トニー賞予想

 現地時間 5月 5日の朝に発表されたトニー賞ノミネーションに基いて、ミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 11シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年06-07年07-08年

 このトニー賞受賞予想は、ついでに僕の観劇記を読んでいただこうという策略ですが、このところ個別の観劇記はめったにアップされませんので(笑)、アップされるまでの間は、ここここここここここで、簡単な印象批評を読んどいてください。

 さて、毎度のお題目ですが、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことを心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 このシーズンに登場してノミネーションに名前の挙がらなかった作品は、『13』『THE STORY OF MY LIFE』『A TALE OF TWO CITIES』の 3作です。


  • 作品賞
     『BILLY ELLIOT』
     『NEXT TO NORMAL』
     『ROCK OF AGES』
     『SHREK The Musical』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『GUYS AND DOLLS』
     『HAIR』
     『PAL JOEY』
     『WEST SIDE STORY』
  • 主演女優賞
     Stockard Channing 『PAL JOEY』
     Sutton Foster 『SHREK The Musical』
     Allison Janney 『9 to 5』
     Alice Ripley 『NEXT TO NORMAL』
     Josefina Scaglione 『WEST SIDE STORY』
  • 主演男優賞
     David Alvarez, Trent Kowalik, and Kiril Kulish 『BILLY ELLIOT』
     Gavin Creel 『HAIR』
     Brian d’Arcy James 『SHREK The Musical』
     Constantine Maroulis 『ROCK OF AGES』
     J. Robert Spencer 『NEXT TO NORMAL』
  • 助演女優賞
     Jennifer Damiano 『NEXT TO NORMAL』
     Haydn Gwynne 『BILLY ELLIOT』
     Karen Olivo 『WEST SIDE STORY』
     Martha Plimpton 『PAL JOEY』
     Carole Shelley 『BILLY ELLIOT』
  • 助演男優賞
     David Bologna 『BILLY ELLIOT』
     Gregory Jbara 『BILLY ELLIOT』
     Marc Kudisch 『9 to 5』
     Christopher Sieber 『SHREK The Musical』
     Will Swenson 『HAIR』
  • 演出賞
     Stephen Daldry 『BILLY ELLIOT』
     Michael Greif 『NEXT TO NORMAL』
     Kristin Hanggi 『ROCK OF AGES』
     Diane Paulus 『HAIR』
  • 振付賞
     Karole Armitage 『HAIR』
     Andy Blankenbuehler 『9 to 5』
     Peter Darling 『BILLY ELLIOT』
     Randy Skinner 『Irving Berlin's WHITE CHRISTMAS』
  • 楽曲賞
     Elton John(Music), Lee Hall(Lyrics) 『BILLY ELLIOT』
     Tom Kitt(Music), Brian Yorkey(Lyrics) 『NEXT TO NORMAL』
     Dolly Parton(Music & Lyrics) 『9 to 5』
     Jeanine Tesori(Music), David Lindsay-Abaire(Lyrics) 『SHREK The Musical』
  • 脚本賞
     Lee Hall 『BILLY ELLIOT』
     Brian Yorkey 『NEXT TO NORMAL』
     David Lindsay-Abaire 『SHREK The Musical』
     Hunter Bell 『[title of show]』
  • 編曲賞
     Larry Blank 『Irving Berlin's WHITE CHRISTMAS』
     Martin Koch 『BILLY ELLIOT』
     Michael Starobin and Tom Kitt 『NEXT TO NORMAL』
     Danny Troob and John Clancy 『SHREK The Musical』
  • 装置デザイン賞
     Robert Brill 『GUYS AND DOLLS』
     Ian MacNeil 『BILLY ELLIOT』
     Scott Pask 『PAL JOEY』
     Mark Wendland 『NEXT TO NORMAL』
  • 衣装デザイン賞
     Gregory Gale 『ROCK OF AGES』
     Nicky Gillibrand 『BILLY ELLIOT』
     Tim Hatley 『SHREK The Musical』
     Michael McDonald 『HAIR』
  • 照明デザイン賞
     Kevin Adams 『HAIR』
     Kevin Adams 『NEXT TO NORMAL』
     Howell Binkley 『WEST SIDE STORY』
     Rick Fisher 『BILLY ELLIOT』
  • 音響デザイン賞
     Acme Sound Partners 『HAIR』
     Paul Arditti 『BILLY ELLIOT』
     Peter Hylenski 『ROCK OF AGES』
     Brian Ronan 『NEXT TO NORMAL』

 昨年 11月の時点で予測した通り、『ビリー・エリオット BILLY ELLIOT』が、少なくとも数の上では最有力となった今回のノミネーション。締め切り間際に駆け込んだ力作『正常の隣 NEXT TO NORMAL』がそれに次いでいるのは喜ばしい限りだが、一方で、どの分野でも候補にならなかった 3作が、いずれもオリジナルの楽曲と脚本でまっすぐブロードウェイに挑んできたミュージカルだったことを思うと、複雑な気持ちにはなる。
 それにしても、『ロック・オブ・エイジズ ROCK OF AGES』が作品賞も含めて 5部門で候補に挙がるとは。でもって、リヴァイヴァルで『ウエスト・サイド物語 WEST SIDE STORY』より『ヘアー HAIR』の方が高評価な印象(例えば演出や振付)だったり。どうも表面的な目新しさに惑わされる見識の浅い関係者が増えているとしか思えないのだが……。

 作品賞『ビリー・エリオット』でよろしいのでは。
 『正常の隣』『シュレック SHREK The Musical』も、それぞれいい作品だが、懐の深さで『ビリー・エリオット』に及ばない。こうしたローカル色の強い作品にこそ、ロンドン・ミュージカルの最良の部分がある。

 リヴァイヴァル作品賞は今年もちょうど 4本。
 個人的には『ウエスト・サイド物語』。で、『パル・ジョーイ PAL JOEY』が次点なのだが、ノミネーションの流れを見ていると、どうやら『ヘアー』が有力。うーん。
 『パル・ジョーイ』は、正式オープン前に主演男優がケガで降板というアクシデントがあったせいもあるが、実は業界内でラウンダバウト劇場が敬遠されていたりもするのでは。去年も『日曜日にジョージと公演で SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』が 9部門で候補になりながら受賞 0だったし。ま、邪推ですが(笑)。
 『ガイズ・アンド・ドールズ』は楽しいが、受賞しなくてもいいでしょ。

 主演女優賞は例年のごとく激戦。
 出来そうで出来ないコメディエンヌとして新境地を開拓してきているサットン・フォスターを推したいところだが、ここは、久々にブロードウェイに登場のアリス・リプリーを贔屓(大熱演)。審査員は、大女優然としたストッカード・チャニングかアリソン・ジャネイを推しそう。もっとも、ジャネイはあまり歌が得意ではないようだが。
 『ウエスト・サイド物語』のマリア役は誰が演じても賞を獲りにくいと思うのだが、どうだろう。

 主演男優賞『ビリー・エリオット』の少年たちが獲るだろう。唯一対抗しうるのがブライアン・ダーシー・ジェイムズか。着ぐるみでの大活躍を買う。
 残りの 3人も熱演だが、主演男優と呼ぶには物足りない。

 助演女優賞『ビリー・エリオット』か。ロンドン版オリジナル・キャストだったハイドゥン・グウィンが素晴らしい。
 対抗は『イン・ザ・ハイツ IN THE HEIGHTS』からやって来たスペイン語のアニタ、カレン・オリーヴォ。うらぶれたショウ・ガールを味わい深く演じたマーサ・プリンプトンも捨てがたい。

 助演男優賞はむずかしい。『ビリー・エリオット』の父親役が最有力だと思うが、『シュレック』の王子役、『ヘアー』の狂言回し的存在も強力な個性で目立っていた。ビリー・エリオットの親友マイケル少年役もいい味だが、片割れ(ダブル・キャストの一方)だけが候補ってのは、どうなんだろう。
 僕は、こういう間抜けなマッチョをやらせたら天下一品のマーク・カディッシュに 1票。

 演出賞の候補に『ロック・オブ・エイジズ』が入っているのは、あの強引な演出なくしては成り立たないという意味か。
 順当に行けば『ビリー・エリオット』だが、『正常の隣』も実に巧み。『ヘアー』も、まあ、よくまとめたと言うべきか。

 振付賞『ウエスト・サイド物語』が挙がっていないのは、オリジナルを踏襲しているからか。
 ここも『ビリー・エリオット』だと思うが、『イン・ザ・ハイツ』直系の『9時から5時まで』のアイディアも悪くない。『ホワイト・クリスマス Irving Berlin's WHITE CHRISTMAS』の伝統芸は好きだが、ここで賞をあげなくてもいい。対照的に、型があってないような融通無碍な感じの『ヘアー』の振付も好きだけど、まあ、賞はいいでしょう。

 楽曲賞も勢いで『ビリー・エリオット』が獲っちゃうのかな。僕は挑戦的な『正常の隣』を推すが。
 他の 2作も、オーソドックスだが悪くない。

 脚本賞も本命『ビリー・エリオット』で、対抗が『正常の隣』『シュレック』も、うまく舞台に移し替えてある。
 『[タイトル・オブ・ショウ] [title of show]』は、ここで候補になってよかった。おめでとう。

 編曲賞。ここは『ヘアー』は入ってないんだなあ。
 『シュレック』が獲るとすれば、このあたりか。そろそろお気づきでしょうが、後半は、候補になっていれば僕の票は『正常の隣』に入れてます(笑)。

 装置賞『パル・ジョーイ』が獲るとすれば、ここだろう。『正常の隣』は斬新かつ巧妙。
 『ビリー・エリオット』はやや荒いか。そこがいいのだが。『ガイズ・アンド・ドールズ』は映像使いがうるさい。

 衣装賞は、とりあえず楽しい『ヘアー』にしておく。『シュレック』の着ぐるみ他も衣装の内? だよね。

 照明賞の候補には『パル・ジョーイ』が入るかと思っていたが……。
 停電になる『ヘアー』が第 1候補。僕は、もちろん『正常の隣』に 1票。

 音響賞も、まとめて『ヘアー』を第 1候補に(笑)。でもって、個人的には『正常の隣』に。

 『ビリー・エリオット』がどこまで獲るのか。数多く候補になったものの、『ビリー・エリオット』とカブってるので、いったい『正常の隣』は獲る賞があるのか。『ロック・オブ・エイジズ』には賞が行くのか(行かないでくれ!)。といったあたりが興味のポイントでしょうか(笑)。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 7日(日)夜です。

(5/7/2009)


 トニー賞の結果はこちら


Copyright ©2009 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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