07-08年トニー賞予想

 現地時間 5月 13日の朝に発表されたトニー賞ノミネーション。それに基いて、今年もミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します(今シーズンから音響賞が加わりました)。
 過去 10シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年06-07年

 このトニー賞受賞予想を何年も続けている理由は、ついでに僕の観劇記を読んでいただこうという虫のいい策略ですが、観劇記はおいそれとはアップされませんので、アップされるまでの間は、ここここここここここここで、簡単な印象批評を読んどいてください。

 さて、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことも、心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 今回は、ノミネーションされなかった作品はなし。未見に終わった『GLORY DAYS』は 1日で閉まったため受賞対象になりませんでした。


  • 作品賞
     『CRY-BABY』
     『IN THE HEIGHTS』
     『PASSING STRANGE』
     『XANADU』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『GREASE』
     『GYPSY』
     『SOUTH PACIFIC』
     『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
  • 主演女優賞
     Kerry Butler 『XANADU』
     Patti LuPone 『GYPSY』
     Kelli O'Hara 『SOUTH PACIFIC』
     Faith Prince 『A CATERE AFFAIR』
     Jenna Russell 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
  • 主演男優賞
     Daniel Evans 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Lin-Manuel Miranda 『IN THE HEIGHTS』
     Stew 『PASSING STRANGE』
     Paulo Szot 『SOUTH PACIFIC』
     Tom Wopat 『A CATERE AFFAIR』
  • 助演女優賞
     de'Adre Aziza 『PASSING STRANGE』
     Laura Benanti 『GYPSY』
     Andrea Martin 『YOUNG FRANKENSTEIN』
     Olga Merediz 『IN THE HEIGHTS』
     Loretta Ables Sayre 『SOUTH PACIFIC』
  • 助演男優賞
     Daniel Breaker 『PASSING STRANGE』
     Danny Burstein 『SOUTH PACIFIC』
     Robin De Jesus 『IN THE HEIGHTS』
     Christopher Fitzgerald 『YOUNG FRANKENSTEIN』
     Boyd Gaines 『GYPSY』
  • 演出賞
     Sam Buntrock 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Thomas Kail 『IN THE HEIGHTS』
     Arthur Laurents 『GYPSY』
     Bartlett Sher 『SOUTH PACIFIC』
  • 振付賞
     Rob Ashford 『CRY-BABY』
     Andy Blankenbuehler 『IN THE HEIGHTS』
     Christopher Gattelli 『SOUTH PACIFIC』
     Dan Knechtges 『XANADU』
  • 楽曲賞
     David Javerbaum & Adam Schlesinger(Music & Lyrics) 『CRY-BABY』
     Lin-Manuel Miranda(Music & Lyrics) 『IN THE HEIGHTS』
     Alan Menken(Music), Howard Ashman and Glenn Slater(Lyrics) 『THE LITTLE MERMAID』
     Stew and Heidi Rodewald(Music), Stew(Lyrics) 『PASSING STRANGE』
  • 脚本賞
     Mark O'Donnell and Thomas Meehan 『CRY-BABY』
     Quiara Alegria Hudes 『IN THE HEIGHTS』
     Stew 『PASSING STRANGE』
     Douglas Carter Beane 『XANADU』
  • 編曲賞
     Jason Carr 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Alex Lacamoire & Bill Sherman 『IN THE HEIGHTS』
     Stew & Heidi Rodewald 『PASSING STRANGE』
     Jonathan Tunick 『A CATERE AFFAIR』
  • 装置デザイン賞
     David Farley and Timothy Bird & The Knifedge Creative Network 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Anna Louizos 『IN THE HEIGHTS』
     Robin Wagner 『YOUNG FRANKENSTEIN』
     Michael Yeargan 『SOUTH PACIFIC』
  • 衣装デザイン賞
     David Farley 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Martin Pakledinaz 『GYPSY』
     Paul Tazewell 『IN THE HEIGHTS』
     Catherine Zuber 『SOUTH PACIFIC』
  • 照明デザイン賞
     Ken Billington 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Howell Binkley 『IN THE HEIGHTS』
     Donald Holder 『SOUTH PACIFIC』
     Natasha Katz 『THE LITTLE MERMAID』
  • 音響デザイン賞
     Acme Sound Partners 『IN THE HEIGHTS』
     Sebastian Frost 『SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE』
     Scott Lehrer 『SOUTH PACIFIC』
     Dan Moses Schreier 『GYPSY』

 昨年に続き、今回も、オフからの移行作品がノミネーションの主力となった。『イン・ザ・ハイツ IN THE HEIGHTS』『パッシング・ストレンジ PASSING STRANGE』の 2作だ。ノミネーション数の順位で、この 2作の間に挟まっている 3作は、いずれもリヴァイヴァルだから、新作のノミネーション数では、事実上、この 2作が上位ということになる。
 [近年は、そうした作品が賞レースの目玉にならない年はないと言っていいほどだが、それでも、トニー賞のノミネーション数上位 2作品が共にそうだ、というのも珍しい] と書いたのが昨年のこと。 2年続けば“珍しい”ことも珍しくなくなる。いよいよ“ブロードウェイ・ミュージカル”斜陽化に拍車がかかってきたか。

 作品賞は、『イン・ザ・ハイツ』で決まりとしたい。範疇に入らないリヴァイヴァルを除けば、主演女優以外の全てのところで対象になっているのは、周りが弱いとはいえ、この作品の充実ぶりを示す 1つの指標だ。
 あえて対抗馬を挙げれば、『パッシング・ストレンジ』。規模はかなり小さいが、独自の語り口と躍動的な楽曲を備えていて、ラフに見えながら完成度は高い。
 『ザナドゥ』は好きなのだが、同名映画のパロディという、閉じられた世界での冗談のような作品なので、好事家に愛されればいいと思う。『クライ・ベイビー』は、あまりうまくいっていないように見えた。むしろ、『ケイタード・アフェア』『ヤング・フランケンシュタイン』の方がいいのでは?

 リヴァイヴァル作品賞は今年もめでたくフルゲートの 4本。
 『日曜日にジョージと公演で』はラウンダバウト劇場が近年製作し続けているソンダイム Stephen Sondheim 作品のリヴァイヴァルだが、今回はロンドンのプロダクションの引っ越し公演。精緻なプロジェクションを駆使した舞台の見た目の斬新さで、注目度は一番だろう。だが、構成の弱さを補いきれなかった分、第 2幕では過剰な効果に思えた。『南太平洋』も、『ライト・イン・ザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』のスタッフの手がけた美しい装置が目を惹く。作りも丁寧だ。が、作品の内包する古さは否めない。
 ここは、ミュージカル人間の魂に響いて古びることのない『ジプシー』の、かっちりした作りに 1票。
 『グリース』? そんな評価は求めてないでしょ。たぶん。

 主演女優賞には、一昨年候補になり共に賞を逸したパティ・ルポンとケリー・オハラが再び並んだ。作品中での主演女優の存在の大きさからして、今年はこの 2人のどちらかで決まるのではないか。受賞確実と(個人的には)思われた 00-01年シーズン以来 7年ぶりに登場のフェイス・プリンスは、オリジナル作品でのノミネーションは初。もちろん受賞に値する演技だが、作品が地味なだけに難しそう。ジェンナ(イエンナ?)・ラッセルも優れているが、印象としては助演女優。
 僕は、まず獲らないと思われるケリー・バトラーのオトボケ演技に 1票。

 主演男優賞は、 1人で舞台を動かし続けるダニエル・エヴァンズで決まりか。あるいは、『南太平洋』でオペラ的歌唱を聴かせるパウロ・ショットということもありうる。ステューは獲ってもおかしくない活躍だが、主演男優という感じではない。トム・ウォパットも、主演女優部門のラッセルと同じで助演の印象。
 実は、リン=マニュエル・ミランダもあまり主演然としていない。が、舞台と客席とを結びつけているのが彼であることは間違いない。その才気と柔軟な演技に 1票。

 助演女優賞は、そろそろローラ・ベナンティに獲らせてあげたい気もするが、どうだろう。難役を見事にこなしていたが。とはいえ、いつも彼女にしか出来ない演技で今回も素晴らしかったアンドレア・マーティンも強力そう。
 僕は、作品の肝となる老女を、派手ではなく、しかし印象深く演じたオルガ・メレディズを推す。

 主演な感じのダニエル・ブレイカーとボイド・ゲインズが回ってきたので、よりわかりにくくなった助演男優賞だが、ダニー・バースタイン、クリストファ・フィッツジェラルドという、クセの強い 2人の争いか。
 愛すべき現代の街育ちの青年を等身大で演じたロビン・デ・ジーザスに、僕は 1票。

 個人的には今回のアーサー・ローレンツ演出にとても興味があるのだが、演出賞は、作品賞と同じ理由で『日曜日にジョージと公演で』に行きそうな気がする。ぜひ、『イン・ザ・ハイツ』であってほしいのだが。

 『クライ・ベイビー』が獲るとしたら振付賞しかない。が、他も弱くはない。『南太平洋』はがんばりが見え過ぎた感もあったが、脱力系の『ザナドゥ』は拍手もの。
 しかしながら、ダンスが舞台世界に融合しているという意味では『イン・ザ・ハイツ』が最も優れている。

 楽曲賞『イン・ザ・ハイツ』。これまた対抗は『パッシング・ストレンジ』。他の 2作ではありえない。

 脚本賞も同様。あえて言えば、『ザナドゥ』。その諧謔趣味を評価するかどうかだが、元が映画だしな。好きだけど(笑)。

 編曲賞。ここは正直わからないので、楽曲賞と同じにしておいた(笑)。何がわからないかと言うと、投票者の趣味(笑)。『日曜日にジョージと公演で』の評価が高そうな気もするが。

 装置賞衣装賞照明賞の 3賞は、『日曜日にジョージと公演で』『南太平洋』の争いだろう。どちらも視覚的に優れた舞台だったから。
 僕は『イン・ザ・ハイツ』の作りこまれた街角に 1票。

 音響賞もわかりません。そんな賞が出来るなんて知らなかったし(笑)。楽曲賞と同じにしようと思ったけど、『パッシング・ストレンジ』がないので、とりあえず『日曜日にジョージと公演で』に星を打ちました。

 すでにお気づきだと思いますが、候補のあるところは僕の投票は全て『イン・ザ・ハイツ』です(笑)。例えば昨シーズンの『春のめざめ SPRING AWAKENING』等とは違って、奇を衒わない、地に足の着いた、しかも新しさのあるミュージカル。ぜひ、ご覧あれ。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 15日(日)夜です。

(5/19/2008)


 トニー賞の結果はこちら

Copyright ©2008 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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