06-07年トニー賞予想

 現地時間 5月 15日の朝に発表されたトニー賞ノミネーション。それに基いて、今年もミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します(04-05年のシーズンから、装置、衣装、照明の各賞は、プレイとミュージカルで別々になっています)。
 過去 9シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年05-06年

 このトニー賞受賞予想を何年も続けている理由は、ついでに僕の観劇記を読んでいただこうという虫のいい策略ですが、観劇記はおいそれとはアップされませんので(笑)。アップされるまでの間は、ここここここで、簡単な印象批評を読んどいてください。

 さて、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことも、心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 なお、ノミネーションされなかったのは、『THE PIRATE QUEEN』と、未見で終わった『THE TIMES-THEY ARE CHANGIN'』、の 2本。


  • 作品賞
     『CURTAINS』
     『GREY GARDENS』
     『MARY POPPINS』
     『SPRING AWAKENING』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『THE APPLE TREE』
     『A CHORUS LINE』
     『COMPANY』
     『110 IN THE SHADE』
  • 主演女優賞
     Laura Bell Bundy 『LEGALLY BLONDE』
     Christine Ebersole 『GREY GARDENS』
     Audra McDonald 『110 IN THE SHADE』
     Debra Monk 『CURTAINS』
     Donna Murphy 『LOVEMUSIK』
  • 主演男優賞
     Michael Cerveris 『LOVEMUSIK』
     Raul Esparza 『COMPANY』
     Jonathan Groff 『SPRING AWAKENING』
     Gavin Lee 『MARY POPPINS』
     David Hyde Pierce 『CURTAINS』
  • 助演女優賞
     Charlotte d'Amboise 『A CHORUS LINE』
     Rebecca Luker 『MARY POPPINS』
     Orfeh 『LEGALLY BLONDE』
     Mary Louise Wilson 『GREY GARDENS』
     Karen Ziemba 『CURTAINS』
  • 助演男優賞
     Brooks Ashmanskas 『Martin Short/FAME BECOMES ME』
     Christian Borle 『LEGALLY BLONDE』
     John Cullum 『110 IN THE SHADE』
     John Gallagher, Jr. 『SPRING AWAKENING』
     David Pittu 『LOVEMUSIK』
  • 演出賞
     John Doyle 『COMPANY』
     Scott Ellis 『CURTAINS』
     Michael Greif 『GREY GARDENS』
     Michael Mayer 『SPRING AWAKENING』
  • 振付賞
     Rob Ashford 『CURTAINS』
     Matthew Bourne and Stephen Mear 『MARY POPPINS』
     Bill T. Jones 『SPRING AWAKENING』
     Jerry Mitchell 『LEGALLY BLONDE』
  • 楽曲賞
     John Kander(Music), Fred Ebb, John Kander & Rupert Holmes(Lyrics) 『CURTAINS』
     Scott Frankel(Music), Michael Korie(Lyrics) 『GREY GARDENS』
     Laurence O'Keefe and Nell Benjamin 『LEGALLY BLONDE』
     Duncan Sheik(Music), Steven Sater(Lyrics) 『SPRING AWAKENING』
  • 脚本賞
     Rupert Holmes & Peter Stone 『CURTAINS』
     Doug Wright 『GREY GARDENS』
     Heather Hach 『LEGALLY BLONDE』
     Steven Sater 『SPRING AWAKENING』
  • 編曲賞
     Bruce Coughlin 『GREY GARDENS』
     Duncan Sheik 『SPRING AWAKENING』
     Jonathan Tunick 『LOVEMUSIK』
     Jonathan Tunick 『110 IN THE SHADE』
  • 装置デザイン賞
     Bob Crowley 『MARY POPPINS』
     Christine Jones 『SPRING AWAKENING』
     Anna Louizos 『HIGH FIDELITY』
     Allen Moyer 『GREY GARDENS』
  • 衣装デザイン賞
     Gregg Barnes 『LEGALLY BLONDE』
     Bob Crowley 『MARY POPPINS』
     Susan Hilferty 『SPRING AWAKENING』
     William Ivey Long 『GREY GARDENS』
  • 照明デザイン賞
     Kevin Adams 『SPRING AWAKENING』
     Christopher Akerlind 『110 IN THE SHADE』
     Howard Harrison 『MARY POPPINS』
     Peter Kaczorowski 『GREY GARDENS』

 今シーズンのトニー賞ミュージカル部門は、桜花賞 1、 2着馬の回避したオークス状態。決定的な本命がいないだけに予想がむずかしい。言い方を変えれば、昨年同様、全体に“小粒”ってことだ。いや、“小粒”感は昨年以上か。
 とにかく、鍵となるのが、『グレイ・ガーデンズ GREY GARDENS』『春のめざめ SPRING AWAKENING』という、やや規模の小さい、どちらかと言えば“オフ的感触”の作品だというところが、いつもと違う。前者は実際にオフの劇場(プレイライツ・ホライズンズ Playwrights Horizons)から移行してきたのだが、後者も、地方の劇場(アトランティック・シアター・カンパニー Atlantic Theater Company)で作られたもので(注)、製作者の最終的な構想はともあれ、例えば、ハナからブロードウェイで“当てる”ことを目標にロンドンで試演する『メリー・ポピンズ MARY POPPINS』のような作品とは、いささか趣を異にする。もちろん近年は、そうした作品が賞レースの目玉にならない年はないと言っていいほどだが、それでも、トニー賞のノミネーション数上位 2作品が共にそうだ、というのも珍しい。
 もっとも、出来から言って、この 2作が賞の中心になるのは、よくわかるのではあるが。

 作品賞については、いきなり疑問。なぜ、『メリー・ポピンズ』
 残りの 3本は、いずれも、楽曲賞、脚本賞、演出賞の候補になっているが、『メリー・ポピンズ』は、そのいずれにもノミネートされていない。まあ、楽曲は、元が映画のものだから候補にならないとしても(もっとも、同じディズニーの『ライオン・キング THE LION KING』は、映画の楽曲プラス舞台用新曲という同様の条件で候補になったが)、脚本でも演出でも候補にならないまま、作品賞候補になるって、どうよ。ここは素直に、楽曲賞、脚本賞の候補にもなっている『キューティ・ブロンド LEGALLY BLONDE』を挙げとけばいいんじゃないの。と、ノミネーションにまで口出ししてるとキリがないか。
 受賞は『メリー・ポピンズ』以外の 3作からだと思うが、『カーテンズ CURTAINS』は古臭いと見られるのだろうなあ。『春のめざめ』は、何をいまさらな話が納得出来ないのだが、あざとい演出を新しがって、こちらを選ぶ投票者がけっこういるだろうことは想像がつく。
 僕は、渋すぎるのは承知で、完成度から言えば今シーズンはやはりこれ、の『グレイ・ガーデンズ』に 1票。

 リヴァイヴァル作品賞には、久々に候補作が 4本並んだ。
 内 2本(『アップル・トゥリー THE APPLE TREE』『日陰でも 110度 110 IN THE SHADE』)は、ラウンダバウト製作。共に、主演女優の魅力を軸に、地味めの作品をそれなりの仕上がりで再演してくれたのはうれしいが、今日性には乏しい。その点、ブロードウェイで 2度目のリヴァイヴァルとなる『カンパニー COMPANY』は、ラウンダバウトの手がけた 95年の限定公演以上に、人々の孤立感を鮮やかに描いて生々しい。出演者が楽器を演奏するのも、同じ演出家の昨シーズン作『スウィーニー・トッド SWEENEY TODD』より、はるかに必然性が感じられる。これが最有力。『コーラスライン A CHORUS LINE』は、初めて観て今の時代のものではないなと感じたが、このノミネーションの少なさから言って、業界的にも評価は高くなさそうな気配。

 今シーズンの主演女優賞『グレイ・ガーデンズ』のクリスティーン・エバーソールで決まりだろう。他の 4人もいいが、今回のエバーソールには一段階違うオーラがある。
 僕のバンディへの 1票は、『キューティ・ブロンド』が作品賞候補にならなかったことへの同情票(笑)。

 主演男優賞はラウル・エスパルザか。なにより『カンパニー』は、主演男優が出づっぱりなので最も主演男優然とする作品だから。あるいは、作品の勢いでジョナサン・グロフということもあるかも。昨年の例もあるし。
 演技派マイケル・サーヴェリス(常連!)、体技派ギャヴィン・リーにもチャンスがないではないが、僕は、楽しくも話のややこしい『カーテンズ』を熱演で狂言回し的に引っぱったピアースに 1票。

 助演女優賞『グレイ・ガーデンズ』のメアリー・ルイーズ・ウィルソンか。
 個人的には、もちろん、久々に踊りまくったカレン・ジエンバを推す。シャーロット・ダンボワーズも熱演だが、ダンサー勝負だと贔屓目でジエンバの勝ち(笑)。オーフェはゲスト出演の印象。レベッカ・ルーカーは僕には精彩を欠いているように見えた。

 曲者が揃った助演男優賞だが、ここは、心に傷を負った若者という設定のわかりやすさでジョン・ギャラガー・ジュニアか。僕は、主演のマーティン・ショート Martin Short を食う場面すらあった芸達者、ブルックス・アシュマンスカスに 1票。

 演出賞は、昨年とは逆にジョン・ボイルを推す。が、 2年連続はむずかしいか。
 『グレイ・ガーデンズ』でなければ『春のめざめ』『カーテンズ』はないだろう。

 『キューティ・ブロンド』が獲るとしたら振付賞なのだが、実は、マシュー・ボーンがいるし、投票者たちの英国コンプレックスから『メリー・ポピンズ』に行く可能性も高い。
 個人的には、ぜひとも『カーテンズ』に受賞してほしいのだが……。

 楽曲賞『グレイ・ガーデンズ』『春のめざめ』の一騎打ちだろう。フレッド・エブ追悼で『カーテンズ』……とは考えにくい。

 脚本賞も、順当に考えれば『グレイ・ガーデンズ』。あのドキュメンタリー映画から、この舞台を作ったアイディアは見事。
 もちろん、ある意味、唯一のオリジナルとも言える『カーテンズ』が獲ってもいいとも思うが……。

 編曲賞なら連続受賞もあり、か。役者の楽器演奏を、昨年受賞の『スウィーニー・トッド』以上の必然性の中で生かした『カンパニー』が最有力。……とかって思ってたら、候補になってないじゃん。
 候補の中から選べば、ここもまた『グレイ・ガーデンズ』『春のめざめ』、ということか。クルト・ヴァイル作品の蘇生を目指した『ラヴミュージック』は、それほど成果が上がっているようには思えなかった。

 装置賞衣装賞照明賞の 3賞は、僕の中では総合評価で『グレイ・ガーデンズ』で決まり。
 一応、金のかかった大掛かりな装置の『メリー・ポピンズ』と、全体に薄暗い中で物語が進行する『春のめざめ』の照明を投票者の推挙予想に挙げておいたが、実際には、唯一ここで候補になった『ハイ・フィデリティ HIGH FIDELITY』のレコード・ショップ他の装置が、実に面白かった。でも、まあ、装置だけが受賞ってのは考えにくいですから。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 10日(日)夜です。

 あ、最後に、今年のオークスは残念ながら外しました(笑)。

(5/26/2007)

 ※(注) アトランティック・シアター・カンパニーは、れっきとしたニューヨークのオフ・ブロードウェイの劇場でした。失礼しました!

(6/15/2007)


 トニー賞の結果はこちら

Copyright ©2007 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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