05-06年トニー賞予想

 現地時間 5月 16日の朝に発表されたトニー賞ノミネーション。それに基いて、今年もミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 8シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年04-05年

 このトニー賞受賞予想を何年も続けている理由は、ついでに僕の観劇記を読んでいただこうという虫のいい策略ですが、観劇記がなかなかアップされない今日この頃(笑)。アップされるまでの間は、ここここここここで、簡単な印象批評を読んどいてください。

 ここで、毎年の決まり文句。
 トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことも、心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル)。

 なお、ノミネーションされなかったのは、『LENNON』, 『IN MY LIFE』, 『RING OF FIRE』, 『HOT FEET』の 4本。


  • 作品賞
     『THE COLOR PURPLE』
     『THE DROWSY CHAPERONE』
     『JERSEY BOYS』
     『THE WEDDING SINGER』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『THE PAJAMA GAME』
     『SWEENEY TODD』
     『THE THREEPENNY OPERA』
  • 主演女優賞
     Sutton Foster 『THE DROWSY CHAPERONE』
     La Chanze 『THE COLOR PURPLE』
     Patti LuPone 『SWEENEY TODD』
     Kelli O'Hara 『THE PAJAMA GAME』
     Chita Rivera 『Chita Rivera/THE DANCERS' LIFE』
  • 主演男優賞
     Michael Cerveris 『SWEENEY TODD』
     Harry Connick, Jr. 『THE PAJAMA GAME』
     Stephen Lynch 『THE WEDDING SINGER』
     Bob Martin 『THE DROWSY CHAPERONE』
     John Lloyd Young 『JERSEY BOYS』
  • 助演女優賞
     Carolee Carmello 『LESTAT』
     Felicia P. Fields 『THE COLOR PURPLE』
     Megan Lawrence 『THE PAJAMA GAME』
     Beth Leavel 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Elisabeth Withers-Mendes 『THE COLOR PURPLE』
  • 助演男優賞
     Danny Burstein 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Jim Dale 『THE THREEPENNY OPERA』
     Brandon Victor Dixon 『THE COLOR PURPLE』
     Manoel Felciano 『SWEENEY TODD』
     Christian Hoff 『JERSEY BOYS』
  • 演出賞
     John Doyle 『SWEENEY TODD』
     Kathleen Marshall 『THE PAJAMA GAME』
     Des McAnuff 『JERSEY BOYS』
     Casey Nicholaw 『THE DROWSY CHAPERONE』
  • 振付賞
     Rob Ashford 『THE WEDDING SINGER』
     Donald Byrd 『THE COLOR PURPLE』
     Kathleen Marshall 『THE PAJAMA GAME』
     Casey Nicholaw 『THE DROWSY CHAPERONE』
  • 楽曲賞
     Brenda Russell, Allee Willis and Stephen Bray 『THE COLOR PURPLE』
     Lisa Lambert and Greg Morrison 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Matthew Sklar(Music), Chad Beguelin(Lyrics) 『THE WEDDING SINGER』
     Andrew Lloyd Webber(Music), David Zippel(Lyrics) 『THE WOMAN IN WHITE』
  • 脚本賞
     Chad Beguelin and Tim Herlihy 『THE WEDDING SINGER』
     Marshall Brickman and Rick Elice 『JERSEY BOYS』
     Bob Martin and Don McKellar 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Marsha Norman 『THE COLOR PURPLE』
  • 編曲賞
     Larry Blank 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Dick Lieb and Danny Troob 『THE PAJAMA GAME』
     Steve Orich 『JERSEY BOYS』
     Sarah Travis 『SWEENEY TODD』
  • ミュージカル装置デザイン賞
     John Lee Beatty 『THE COLOR PURPLE』
     David Gallo 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Derek McLane 『THE PAJAMA GAME』
     Klara Zieglerova 『JERSEY BOYS』
  • ミュージカル衣装デザイン賞
     Gregg Barnes 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Susan Hilferty 『LESTAT』
     Martin Pakledinaz 『THE PAJAMA GAME』
     Paul Tazewell 『THE COLOR PURPLE』
  • ミュージカル照明デザイン賞
     Ken Billington and Brian Monahan 『THE DROWSY CHAPERONE』
     Howell Binkley 『JERSEY BOYS』
     Natasha Katz 『TARZAN』
     Brian MacDevitt 『THE COLOR PURPLE』

 本来ならオフ・ブロードウェイ作品の規模とアイディアである『ドロウジー・シャペロン』が最多ノミネーションというあたりに、全体の“小粒感”が見てとれる今シーズンのブロードウェイ・ミュージカル。僕の中でも、昨年の『ライト・インザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』『第25回パットナム郡スペリング競技会 THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』に匹敵する決定的作品はない。
 したがって、作品賞は、候補 4作のどれに行ってもいいようなもんだが、おそらく、『ドロウジー・シャペロン』が審査員の舞台に対するマニアックな愛情をくすぐって票を集めるのではないか。
 マニアックと言えば、『ジャージー・ボーイズ』『ウェディング・シンガー』も別の意味でマニアック。よく出来てはいるが、小ぢんまりした印象はぬぐえない。
 僕は、アフリカン・アメリカン版“女の一生”を、音楽的魅力を存分に生かしながら大衆小説的にいきいきとまとめてみせた『カラー・パープル』に 1票。

 昨シーズンに続き、リヴァイヴァル作品賞候補は 3本。内 2本は、ラウンダバウト製作。
 僕は、古臭さを感じさせない楽しい舞台に仕上げた『パジャマ・ゲーム』に 1票だが、アメリカ舞台人のイギリスの演出家に対するコンプレックスとラウンダバウトに対する反発とから、『スウィーニー・トッド』が獲る可能性はある。

 主演女優賞は激戦。昨年逃したサットン・フォスターが最有力か(昨年の方がよかったが)。昨年は助演女優賞候補だったケリー・オハラ、この賞の常連パティ・ルポンも、それぞれ多才ぶりを発揮して驚く。
 が、昨年のオフの充実作『デッサ・ローズ DESSA ROSE』での役柄を精神的に引き継いで、オンで唯一無二の輝きを見せたラ・シャンズに、僕は 1票。

 主演男優賞は、激戦と言うより混戦。一昨年の助演男優賞覇者マイケル・サーヴェリス、今回は脚本賞の候補にもなっているボブ・マーティンといった役者然とした人たちと、本職は音楽畑でこれがブロードウェイ・デビューのハリー・コニック・ジュニアやスティーヴン・リンチたち、それに、ピンポイントのなりきり役者としてブロードウェイにやって来た感のあるジョン・ロイド・ヤング。さて、どう評価するか。
 “演技派”ということで言えばサーヴェリス、あるいはマーティンということになるのだろうが、熱演で舞台を引っぱる残りの 3人も観逃せない。ヒュー・ジャックマン Hugh Jackman の例もあるのでコニック・ジュニアの線もあると思うが、僕は、さりげないコミカルさがよかったリンチを推す。獲らないだろうけど。

 女優は助演女優賞も激戦。
 苦しい舞台の中で 1人気を吐くキャロリー・カーメロを推したいが、『カラー・パープル』の中盤を支えるエリザベス・ウィザーズ・メンデスの評価は高いだろう。『ユーリンタウン URINTOWN』組のミーガン・ローレンス、『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』組のベス・リーヴェルも、儲け役として期待通りの見せ場を作る。

 助演男優賞は、主演のアラン・カミング Alan Cumming を食った感のあるジム・デイルで決まりか。僕の 1票は、事実上の主役だと思うクリスチャン・ホフに。

 演出賞は、リヴァイヴァル作品賞のところでも書いたが、アメリカ演劇人のイギリス・コンプレックスからジョン・ボイルに行く可能性はある。僕は『ドロウジー・シャペロン』のアイディアに 1票。
 しかし、ここで候補にならない『三文オペラ』って、全否定と同様か。

 振付賞のポイントは、フォッシーの出世作に挑んだキャスリーン・マーシャルがどう評価されるかだが、昨年のウェイン・シレント同様、やはり不利か。
 ドナルド・バードのエネルギッシュな正攻法が感動も呼ぶし、最もわかりやすいが、ここは、あえて『ウェディング・シンガー』のシャレっけに 1票。

 楽曲賞では、審査員はノスタルジーに駆られて『ドロウジー・シャペロン』に入れそうな気がするが、『ドロウジー・シャペロン』『ウェディング・シンガー』の楽曲の作風は、ある種のパロディだろう。ここでは、振付賞と逆に、『カラー・パープル』の真っ向勝負に 1票投じたい。

 脚本賞は、スケールは小さいもののアイディアの詰まった『ドロウジー・シャペロン』に行くか。
 僕がうまいと思ったのは、退屈になってもおかしくない伝記ものを、細かいギャグの積み重ねと語り手の変化で面白く見せた『ジャージー・ボーイズ』。残る 2作も、もちろん悪くないが。

 編曲賞は、役者の楽器演奏という奇手を見事に生かした『スウィーニー・トッド』か。
 僕は、懐かしさは残しつつ古臭さを払拭した『パジャマ・ゲーム』を支持。

 装置賞衣装賞照明賞はご覧の通り。
 この 3賞は候補作選びの基準が見えにくい。装置と照明は本来、併せて評価されるべきものだと思うのだが。そういう意味も含めて、『ドロウジー・シャペロン』の比重を重くした。なにしろ、手が込んでいるから。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 11日(日)夜です。

(5/18/2006)


 トニー賞の結果はこちら

Copyright ©2006 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next


[HOME]