04-05年トニー賞予想

 昨年同様、今年も現地時間 5月 10日の朝に発表されたトニー賞ノミネーション。それに基いて、恒例のミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を発表します。
 過去 7シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年99-00年00-01年01-02年02-03年03-04年

 このトニー賞受賞予想は、ことさら“海外ミュージカル・ファン”というわけではない僕の、お気楽な遊びにすぎません。それを何年も続けている理由は、ついでに僕の観劇記を読んでいただこうという虫のいい策略です――という文句が、観劇記をまるでアップしていない今年はひときわ通じない(笑)。
 ま、アップされるまでの間は、ここここで、簡単な印象批評を読んどいてください。

 ここで、毎年の決まり文句。
 トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも観劇作品選びの基準にはならないことも、心に留めておいてください。

 審査員の投票予想に、僕の投票にを付けました。例年通り、タイトル、人名は原語表記です。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル。の観劇記は未アップ)。


  • 作品賞
     『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『LA CAGE AUX FOLLES』
     『PACIFIC OVERTURES』
     『SWEET CHARITY』
  • 主演女優賞
     Christina Applegate 『SWEET CHARITY』
     Victoria Clark 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Erin Dilly 『CHITTY CHITTY BANG BANG』
     Sutton Foster 『LITTLE WOMEN』
     Sherie Rene Scott 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
  • 主演男優賞
     Hank Azaria 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Gary Beach 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Norbert Leo Butz 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Tim Curry 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     John Lithgow 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
  • 助演女優賞
     Joanna Gleason 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Celia Keenan-Bolger 『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
     Jan Maxwell 『CHITTY CHITTY BANG BANG』
     Kelli O'Hara 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Sara Ramirez 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
  • 助演男優賞
     Dan Fogler 『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
     Marc Kudisch 『CHITTY CHITTY BANG BANG』
     Michael McGrath 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Matthew Morrison 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Christopher Sieber 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
  • 演出賞
     James Lapine 『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
     Mike Nichols 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Jack O'brien 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Bartlett Sher 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
  • 振付賞
     Wayne Cilento 『SWEET CHARITY』
     Jerry Mitchell 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Jerry Mitchell 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Casey Nicholaw 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
  • 楽曲賞
     David Yazbek 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Adam Guettel 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     John Du Prez and Eric Idle 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     William Finn 『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
  • 脚本賞
     Jeffrey Lane 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Craig Lucas 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Eric Idle 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Rachel Sheinkin 『THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』
  • 編曲賞
     Larry Hochman 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Ted Sperling, Adam Guettel and Bruce Coughlin 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Jonathan Tunick 『PACIFIC OVERTURES』
     Harold Wheeler 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
  • 装置デザイン賞
     Tim Hatley 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Rumi Matsui 『PACIFIC OVERTURES』
     Anthony Ward 『CHITTY CHITTY BANG BANG』
     Michael Yeargan 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
  • 衣装デザイン賞
     Tim Hatley 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』
     Junko Koshino 『PACIFIC OVERTURES』
     William Ivey Long 『LA CAGE AUX FOLLES』
     Catherine Zuber 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
  • 照明デザイン賞
     Christopher Akerlind 『THE LIGHT IN THE PIAZZA』
     Mark Henderson 『CHITTY CHITTY BANG BANG』
     Kenneth Posner 『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』
     Hugh Vanstone 『MONTY PYTHON'S SPAMALOT』

 作品賞は、僕の中では、野心的で完成度も高い『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』で決まり(以下、候補になった全ての分野で、この作品に投票)。次点が、冒険的な『第25回パットナム郡スペリング競技会』
 リヴァイヴァルも含め、『ヘアスプレイ HAIRSPRAY』『アヴェニューQ AVENUE Q』クラスの“ど真ん中”本命がいない今シーズンは、“地味”ではあっても、上記 2作品を中心に考えざるをえない。そんなわけで、審査員とは意見が分かれる年になりそうだ。と、まずは言い訳(笑)。
 作品賞の審査員票が『モンティ・パイソンのスパマロット』に行くかも、と予想するのは、カルト的人気を得てチケットが売れまくっているから。
 『だまされてリビエラ』(『DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS』のこと)は、役者のがんばりは見事だが、作品としては“そこそこ”。

 今シーズンのリヴァイヴァル作品賞は、登場した全作品を挙げても候補作が上限の 4本に到らなかった。しかも、いずれも決め手を欠く。となると、昨年の『アサシンズ』の例もあるし、スティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim 人気で『太平洋序曲』が獲らないとも限らないが、期間限定だったし、非営利を標榜するラウンダバウトが 2年連続受賞することへの反発もありそう。もっとも、僕としては、日本語版とは別物と考えるブロードウェイ版が受賞すると、日本語版に対する評価が混乱するので、獲らないでくれた方がいいのだが。
 残る 2本では、古臭さの根源だった主演男優の 1人を交代させた『ラ・カージュ・オ・フォール』(交代後未見)が、強く残るフォッシー Bob Fosse 色がマイナスに評価されるかもしれない『スウィート・チャリティ』を凌ぐ可能性はある。

 主演女優賞は、クリスティーナ・アップルゲイトが未見。
 ベストはヴィクトリア・クラークだが、受賞した『モダン・ミリー THOROUGHLY MODERN MILLIE』の時よりハマったサットン・フォスターも強力。『スウィート・チャリティ』がシャーロット・ダンボワーズ Charlotte d'Amboise を候補にしていたら推したいところだ。

 今シーズンは主演男優賞が混戦。と言いつつ、最終的には、同じ舞台で火花を散らすジョン・リスゴーとノーバート・レオ・バッツの一騎打ちになるのではないか。
 ゲイリー・ビーチは、相手役のダニエル・デイヴィス Daniel Davis に柔軟性がなくて、残念ながら 100%の力を出せていなかった(相手役交代後、変わっただろうか)。『モンティ・パイソンのスパマロット』からは、ここで 2人、助演で 2人、男優賞の候補に挙がっているが、さて、どうなるか。

 助演女優賞は、ガツンと強烈な印象を残すサラ・ラミレズで決まりかも。
 僕は、非常にむずかしい役を見事にこなした『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』のケリー・オハラに 1票。

 助演男優賞は、奇演・怪演の多い『モンティ・パイソンのスパマロット』にあって達者な“受け”役を 1人担った感のある、マイケル・マッグラスが獲ってもおかしくない。怪演する役者が多いことでは『第25回パットナム郡スペリング競技会』も引けをとらないし、みな優れているが、作品構成の新奇さゆえに、助演女優賞同様、役者は受賞には到らない気がする。
 僕は、ケリー・オハラの相手役、マシュー・モリソンを推す。

 演出は、 92年の『ファルセトーズ FALSETTOS』で今回と同じ楽曲作者ウィリアム・フィンと組んだジェイムズ・ラパンの、その『ファルセトーズ』をさらに融通無碍にした感のあるオフ・ブロードウェイ的手腕が、きちんと評価されるかどうかが分かれ目になるだろう。
 ともあれ、バートレット・シェールの流麗な演出に 1票。

 振付は、アクロバティックな『ラ・カージュ・オ・フォール』か。師でもあるフォッシーに果敢に挑戦したウェイン・シレントを僕は推す。

 楽曲では、前作『フル・モンティ THE FULL MONTY』同様あくまで大衆路線で勝負するデイヴィッド・ヤズベクの再挑戦が評価されるかも。豊かさではアダム・ゲテールに、鋭さではウィリアム・フィンに及ばないが。

 脚本は、唯一のオリジナル脚本にして、舞台ならではの面白さを徹底して追求した『第25回パットナム郡スペリング競技会』に行くか。
 苦いがロマンティックでユーモラスでもある『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』の、英語とイタリア語を混ぜ合わせるアイディアは素晴らしい。

 編曲は、ソンダイムの英語詞を華麗に響かせた『太平洋序曲』が獲る可能性はあると思う。その辺に、日本語版『太平洋序曲』に対するアメリカ側の理解のなさが表れているのだが。

 装置衣装照明は今シーズンからプレイとミュージカルとが別々になった 。
 いずれの賞も、統一された美しい世界を描き出した『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』で決まりだと僕は思うが、審査員の票は、見た目が派手な『モンティ・パイソンのスパマロット』に流れるかも。
 『太平洋序曲』が獲るなら装置であってほしい。衣装は、僕の考えでは必ずしも成功していない。
 『チキ・チキ・バン・バン』は、装置照明共に野暮ったい。

 トニー賞の発表は現地時間の 6月 5日(日)夜です。

(5/13/2005)


 トニー賞の結果はこちら

Copyright ©2005 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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