ミュージカル・サイトの心得(2)

 誤ったミュージカル情報を無責任に流布させないための「ミュージカル・サイトの心得」。
 前回は、結果的に他人のサイト攻撃になって後味が悪かったので、今回は、サイト名は挙げずに、誤りの訂正だけを行ないます。

 以下の記述の赤字部分は、さるミュージカル・サイトにこの夏集中して書かれた、ブロードウェイに関するいくつかの記事の中にあったもので、誤りです。その下に、正しい情報を書いておきましたので、もし赤字部分の記述を目にすることがあっても、鵜呑みにしないでください。

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 ●まずは、作品情報

 「クレイジー・フォー・ユー」という作品がありました。かつて、エセル=マーマン主演で大ヒットした作品をリメーク再演したものです。ブロードウェイでは再演作品も多いと聞きますが、「クレイジー」は短命に終わっています。マーマンだから当たったわけで、再演では当たらなかったということです。
 この「クレイジー」は劇団四季が輸入しましたが、四季でもあまり人気がありませんでした。ナンバーは良いのですが、ストーリーに問題があったと聞いています。同様に「エビータ」も輸入されましたが、ブロードウェイでは消えています。背景が難しかったとも聞きます。

 ▲決定的な間違いは、『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』が短命に終わった、という部分。上演回数 1622回、約 4年に及ぶロングランは、確かに『キャッツ CATS』に比べりゃ短いが(笑)、 [マーマンだから当たったわけで] と書いて筆者が比べている元ネタ作品『ガール・クレイジー GIRL CRAZY』の 272回よりは、はるかに長い。
 さらに細かいことを言えば、『クレイジー・フォー・ユー』『ガール・クレイジー』の再演ではないし、エセル・マーマンは『ガール・クレイジー』の“主演”ではない。
 『エヴィータ EVITA』に関しては、 [消えています] という表現をどう解釈するかだが、文脈から考えて、「当たらなかった」という意味だととるのが妥当だろう。とすれば、これも間違い。ブロードウェイ版『エヴィータ』の上演回数は 1567回。
 なお、 [ストーリーに問題が〜] や [背景が難しかった〜] については、情報の出所をぜひ知りたい。

 (『コンタクト CONTACT』について)
 リンカーンセンター内の劇場で、 3カ月公演のスケジュールがズルズル延長中です。このままロングラン化?

 ▲[3カ月公演のスケジュール] というのは、オフでやっていた限定公演のことか。現在のヴィヴィアン・ボーモント劇場に移ってからは、初めからロングランの予定。

 ●続いて、ブロードウェイのオンとオフの区別

 通常、「オン・ブロードウェイ」と呼ばれているのは、このブロードウェイに on (接)している劇場で上演された作品を指します。(中略)
 ブロードウェイから外れた立地で小規模な劇場を持つのが「オフ・ブロードウェイ作品」です。もう 40年も続いている「ファンタスティック」など例外もありますが、多くは長くて 2カ月程度で消えていくそうです。

 ▲オン、オフの区別は、こんなに曖昧ではない。大平和登著「ブロードウェイの魅力」(丸善ライブラリー)によれば、「オン」とは、演劇職能ユニオンが規定する特定地域(三十四丁目から五十七丁目に至る東は六番街から西は八番街までの間)に存在する客席数三百席(訂正)以上の劇場を指し、これに、例外的にリンカーン・センターのヴィヴィアン・ボーモント劇場などが加わる。
 逆に、この地域にあっても、客席数が三百席(訂正)に満たず、かつ百席以上の場合は「オフ」。
 オフ作品の [多くは長くて 2カ月程度で消えていく] という主張の根拠はどこにあるのだろう。 2カ月程度っていう数字が平均値とは、とても思えないのだが。

 ●大切な、チケット情報

 電話やファクシミリを使えば、劇場から直接チケットを予約できますが、いくつか難点があります。まず、チケットは当日窓口受け付けなので、開演ギリギリだとキャンセル扱いになることがあります。(中略)
 当日券は、シアター=ディストリクトの「tkts」でも購入できます。目安ですが、 25〜 50%引きになります。開演直前に行くと、もっと安値で売ってくれることもあります。しかし、人気作品のチケットは早くから行列に並ぶ必要があります。また、良い席は最後まで劇場が握っていたり、劇場がスペシャル価格で当日券を放出することもあるので、要注意です。

 ▲この項は信じると実害あり。
 まず、いわゆる「オン」の劇場では、電話やファクスで直接予約をすることは出来ない。また、テレチャージやチケットマスターで予約したチケットが、 [開演ギリギリだとキャンセル扱いになること] などない(あったら、それはトラブルだ)。
 tkts のチケットが電光掲示板の表示価格より安くなることも、 [開演直前] だろうがなんだろうが金輪際ない。そして、 [人気作品のチケット] はハナから tkts には出ない。
 [良い席は最後まで劇場が握っていたり] というのは意味不明。ハウスシートのキャンセルが出るということか。だとしたら、これは tkts とは関係なく、キャンセル待ちの列に並ぶしかない。
 [劇場がスペシャル価格で当日券を放出する] というのがラッシュ・チケットのことだとしたら、これは [要注意] ではなく、あらかじめアナウンスされているので、これまた劇場に並ぶことになる。

 イブニングの開演時間は、平日 20時です。土・日曜日は 19時になる劇場が多いです。(中略)
 「tkts」でのイブニング・チケット取り扱いは、(中略)日曜日は 12時からなので注意が必要です。

 ▲ 19時開演の土曜の夜公演は、 2000年 10月の時点で、オンの劇場に関してはゼロ。全て 20時開演。
 tkts の日曜のオープン時間は、午前 11時(昼・夜全公演取り扱い)。

 ●最後に、劇場内情報

 (劇場内で売っているグッズについて)
 支払いは、クレジットカードも使えます。

 ▲使えない劇場もあるので、要注意。

 例外的にフィナーレの撮影を許可することもあるようですが、それもフラッシュ禁止とのことです。

 ▲もちろん、例外なく撮影禁止。

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 なお、前回の繰り返しになりますが、信頼出来るミュージカル情報ネットワークを僕らの手で作り上げるべく、ミュージカル・サイトの記述に当たっては、以下のことに留意しましょう。

 1). 自分の見聞したことと、そうでないことをはっきりさせる。
 2). 自分の見聞したことでないことは、情報の出所を明記する(誰の発言か、参考文献は何か)。
 3). 確信のないことは裏をとるように努め、それでもわからないことは書かないか、もし書く時は、確信がないことを明記する。

 以上。

(10/9/2000)

 (訂正)
 (誤)三百席→(正)五百席
 現在はこうなっているそうです。ニューヨークで演劇の勉強をなさっている小嶋さんからご指摘をいただきました。

(11/12/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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