99-00年トニー賞予想

 ニューヨークにいる間に発表になった今シーズンのトニー賞ノミネーション。例によって、ミュージカル関連の受賞予想と僕の投票を書きます。日本一的中率の高い(笑)トニー賞予想です(過去 2シーズンの予想結果はこちら→97-98年98-99年)。
 ただ、今回はけっこうむずかしい。理由は 3つ。

 1). 演技者に対する賞の候補枠が 1人増えたこと(当たる確率が 5%ダウン)。
 2). 質的に充実していた『(ジェイムズ・ジョイスの)ザ・デッド』『マリー・クリスティーン』の公演が終了していること。
 トニー賞はブロードウェイを全米に知らしめる数少ない機会なので、授賞にも宣伝効果を加味しようという側面がある。その意味では、終わってしまった作品の関係者には目をつぶってもらおうと考えるのは当然のこと。その辺をどう読むか……。
 3). 7個のノミネーションを得ている『コンタクト』のスタイルが変則的なこと(各賞のところで詳述)。

 ――とは言え、毎年言ってますが、トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々には“話のタネ”に過ぎません。ですから、僕のもっともらしい解説も、鼻毛でも抜きながら(笑)気楽に読み流してください。
 受賞予想に、僕の投票にを付けました。

 作品別ノミネーション数は次の通り(▲はリヴァイヴァル。の観劇記は未アップ)。全作品の観劇記をトニー賞発表までにアップの予定です。


  • 作品賞
     『CONTACT』
     『James Joyce's THE DEAD』
     『SWING!』
     『THE WILD PARTY』
  • リヴァイヴァル作品賞
     『KISS ME, KATE』
     『THE MUSIC MAN』
     『JESUS CHRIST SUPERSTAR』
     『TANGO ARGENTINO』
  • 主演女優賞
     Toni Collette 『THE WILD PARTY』
     Heather Headley 『AIDA』
     Rebecca Luker 『THE MUSIC MAN』
     Audra McDonald 『MARIE CHRISTINE』
     Marin Mazzie 『KISS ME, KATE』
  • 主演男優賞
     Craig Bierko 『THE MUSIC MAN』
     Brian Stokes Mitchell 『KISS ME, KATE』
     George Hearn 『PUTTING IT TOGETHER』
     Mandy Patinkin 『THE WILD PARTY』
     Christopher Walken 『James Joyce's THE DEAD』
  • 助演女優賞
     Laura Benanti 『SWING!』
     Ann Hampton Callaway 『SWING!』
     Eartha Kitt 『THE WILD PARTY』
     Deborah Yates 『CONTACT』
     Karen Ziemba 『CONTACT』
  • 助演男優賞
     Michael Berresse 『KISS ME, KATE』
     Boyd Gaines 『CONTACT』
     Michael Mulheren 『KISS ME, KATE』
     Stephen Spinella 『James Joyce's THE DEAD』
     Lee Wilkof 『KISS ME, KATE』
  • 演出賞
     Michael Blakemore 『KISS ME, KATE』
     Lynne Taylor Corbett 『SWING!』
     Susan Stroman 『THE MUSIC MAN』
     Susan Stroman 『CONTACT』
  • 振付賞
     Kathleen Marshall 『KISS ME, KATE』
     Susan Stroman 『CONTACT』
     Susan Stroman 『THE MUSIC MAN』
     Lynne Taylor-Corbett 『SWING!』
  • 楽曲賞
     Elton John & Tim Rice 『AIDA』
     Shaun Davey & Richard Nelson 『James Joyce's THE DEAD』
     Michael John LaChiusa 『MARIE CHRISTINE』
     Michael John LaChiusa 『THE WILD PARTY』
  • 脚本賞
     John Weidman 『CONTACT』
     Richard Nelson 『James Joyce's THE DEAD』
     Michael John LaChuisa 『MARIE CHRISTINE』
     Michael John LaChuisa & George C. Wolfe 『THE WILD PARTY』
  • 編曲賞
     Doug Besterman 『THE MUSIC MAN』
     Don Sebesky 『KISS ME, KATE』
     Jonathan Tunick 『MARIE CHRISTINE』
     Harold Wheeler 『SWING!』
  • 装置デザイン賞
     Bob Crowley 『AIDA』
     Thomas Lynch 『THE MUSIC MAN』
     Robin Wagner 『KISS ME, KATE』
     Tony Walton 『UNCLE VANYA』(play)
  • 衣装デザイン賞
     Bob Crowley 『AIDA』
     Constance Hoffman 『THE GREEN BIRD』(play)
     William Ivey Long 『THE MUSIC MAN』
     Martin Pakledinaz 『KISS ME, KATE』
  • 照明デザイン賞
     Jules Fisher & Peggy Eisenhauer 『MARIE CHRISTINE』
     Jules Fisher & Peggy Eisenhauer 『THE WILD PARTY』
     Peter Kaczorowski 『KISS ME, KATE』
     Natasha Katz 『AIDA』
 作品賞は、各方面で絶賛された『コンタクト』で決まりだろう。質的には、『コンタクト』同様オフの限定公演からオンでのロングランに移った『ザ・デッド』の方を高く評価するが、終わっちゃってるし、地味な作品だったから(さらに言えば、ノミネーションから外れた『マリー・クリスティーン』が僕の今シーズンのベスト)。
 ただ、劇場演奏家の組合からクレームがついたように、音楽はすべて既成の録音音源で役者も歌わない『コンタクト』をミュージカルのカテゴリーに加えるのはおかしい、という考え方も一方にはある。もっとも、演奏家組合のクレームの真意は自分たちの仕事を無視したことに対する抗議にあるはずで、逆に言えば、そうした圧力を与えておきたくなるほど、『コンタクト』受賞の可能性が高いということではないだろうか。とにかく、『コンタクト』には、弱点を補って余りあるアイディアと熱気があった。万が一(あくまで万が一)ひっくり返るとしたら、『ワイルド・パーティ』か。
 これ以降の賞の予想は、『コンタクト』が作品賞を受賞することが前提になっているので、ここが覆ったらハズれまくる可能性大(笑)。

 『マリー・クリスティーン』がノミネートされなかった理由には、おそらく、限定公演ですでに上演されていないことの他に、『コンタクト』と同じリンカーン・センターのプロデュース作品だということがあると思われる。

 リヴァイヴァル作品賞『キス・ミー・ケイト』『ザ・ミュージック・マン』の一騎打ち。出来はどっこいどっこい。僕の好みは『ザ・ミュージック・マン』だが、作品賞を『コンタクト』が獲るとすると、演出・振付(スーザン・ストロマン Susan Stroman)がダブることもあって、こちらは『キス・ミー・ケイト』に行く可能性が高い。役者の印象も派手だし。
 『ジーザス・クライスト・スーパースター』は論外。数合わせのノミネーションとしか思えない。

 演技者の候補枠が 1人増えたのは、 TV中継の時の注目度を考えてのことか。

 主演女優賞は、ヘザー・ヘドリー、オードラ・マクドナルド、マリン・マッズィーの争い。 3人ともよかったが、一昨年『ラグタイム RAGTIME』で獲ってもおかしくなかった助演女優賞を伏兵ナターシャ・リチャードスン Natasha Richardson(『キャバレー CABARET』にさらわれた、マッズィーが獲る可能性が高いか。ヘドリーは脚本のせいで深みを出しきれない役だったのが惜しい。
 しかし、様々な意味で難易度の高い役を見事に演じて野心的な舞台を引っ張ったマクドナルドに、僕は素直に 1票。

 主演男優賞は、役柄の印象の強さプラス前作『ラグタイム』以来の個人的アピール度の高さもあって、ブライアン・ストーク・ミッチェルが一歩リード。対抗馬はジョージ・ハーンとマンディ・パティンキンだが、危うい均衡の上に成り立った作品を懐の深い歌と演技で支えたパティンキンを、僕はミッチェル以上に評価。
 大穴で、大スター、クリストファ・ウォーケンもあり得るか。

 助演女優賞がむずかしいのは、『コンタクト』『スウィング!』が主演女優を立てずに来たから。おかげで、本来なら主演扱いでもおかしくないカレン・ジエンバとアン・ハンプトン・キャラウェイが候補に入った。そうなると、この 2人のどちらかに決まる可能性が高い。
 キャラウェイは、ジエンバびいきの僕から見ても素晴らしいのだが、作品の強さもあってジエンバがついに受賞か。この 2人が主演に回っていればローラ・ベナンティだったかも。

 助演男優賞にも、『コンタクト』の主演格、ボイド・ゲインズがノミネートされた。やはり彼が有力か。個人的には、今回の彼には不満があるのだが。
 『キス・ミー・ケイト』の 3人のうち、マイケル・ベイレイーズを、代役が立ったために僕は観ていない。シャープなダンサーである彼は素晴らしかったんじゃないかと思うが、残念。そんなこんなで僕は、地味な作品に笑いとドラマを与えたスティーヴン・スピネラに 1票。

 演出は、昨シーズン、振付と一緒に『スワン・レイク』なんかに行っちゃったから(明らかにアメリカ人のイギリスに対するコンプレックスのせい)、その反動で今回はオーソドックスな作品に行く。というのは深読みしすぎ? そんなわけで本命の『コンタクト』はなし。その代わりに『ミュージック・マン』でストロマンに渡す、という筋書きはどうでしょう。亡夫マイク・オクレントへの追悼の意味も込めて。やっぱ深読みか?
 僕の中では、候補にならなかったグラシエラ・ダニエル Graciela Daniel(『マリー・クリスティーン』)で決まりなんだけど。彼女はどうも、ブロードウェイ世界では、少し異端扱いされてるようだ。

 振付は文句なしで『コンタクト』

 楽曲は、『アイーダ』を除く 3作がいずれも充実。とりあえず、マイケル・ジョン・ラチウザ作のどちらかに。
 頼むから新しがって『アイーダ』に入れないでほしい。エルトン・ジョンは好きだが、ティム・ライスと組んだ仕事は必ずしも彼のよさが発揮されていない。

 脚本は、これまた変則スタイルのせいで判断がむずかしいが、全くのオリジナルだし、面白さから言っても、『コンタクト』がそのまま獲って不思議はない。僕は、名作小説をユニークなミュージカル舞台に仕上げた『ザ・デッド』の野心を買うが、残る 2作も野心的な点では負けてはいないから……むずかしい(笑)。

 編曲『スウィング!』が獲るとしたら、ここか。『ザ・ミュージック・マン』も舞台上での楽器の使い方が面白かったが。ただ、僕にとっては『マリー・クリスティーン』の奥深さがたまらない。

 装置は、『ワーニャ叔父さん』の出来がわからないが、『ライオン・キング THE LION KING』のジュリー・テイモア Julie Taymor がユニークなアイディアを展開した『グリーン・バード』(装置/クリスティン・ジョーンズ Christine Jones、マスク&パペット/ジュリー・テイモア)が候補にならなかったからには、『アイーダ』だろう。

 衣装は、装置で候補にならなかった、その『グリーン・バード』に。ライヴァルがいるとすれば『アイーダ』か。

 照明は、ダブルで候補になっているフィッシャー&アイゼンハワーのどちらかに行くのではないか。で、選考委員が選ぶのは上演中の『ワイルド・パーティ』


 なお、トニー賞の発表は現地時間の 6月 4日夜。日本では翌日の朝になります。

(5/14/2000)


 トニー賞の結果はこちら

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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